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この世界に呼ばれた訳

第十二話 賢者に戻る時

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弘前は城の一室に隠れていた。

あのままこの城を出ても構わなかった。
が、長野達の行動を見張る為にも、しばらくはここに
いる事にしたのだった。

それでも、今まで通りに姿を晒すわけにもいかず、深
くローブをかぶると賢者として城の中を行き来した。

日比野が探しているようだったが、ほかっておく事に
した。

弘前の事を知っていると知られれば、日比野にも危険
が及ぶ可能性があったからだ。

あいつらは躊躇いなく魔法を使って来た。
多分弘前でなかったら死んでいただろう。

あのまま葬ってもよかったが、それでは面白くない。

この後、弘前を誘き寄せる為に、他のダンジョンに
も行く事だろう。

「僕の代わりに見つけてくれるんだ……単純でバカ
 な奴………」

実に御し易い。
星の雫とは、願いの叶う石とされている。
それはどんな願いも叶えるという幻の石だった。

12色に光り輝き、国をも左右するほどの力を持つと
されていた。

各国がこぞって捜索をしている。
カケラを集めて揃えれば全ての富と権力、全てを手
に入れて、全てを滅ぼす事もできる最大の切り札と
も言われていた。

『絶対にあんなものを人の手に渡してはならんぞ……
 康介、わかったな?お前ならわかるじゃろう?あん
 なものが人の世にあってはならん……絶対にな……』

先代の賢者が唯一残した言葉だった。

「こんな物誰かの手に渡っていい物じゃない……僕が
 全てを集めてしまおう……それがいい。全ては僕の
 前にひれ伏すんだ、誰も逆らえないように……」

不適な笑みを浮かべると城内を堂々と笑いながら歩い
ていく。

誰ともすれ違わない。

この時間は訓練やらで、みんな忙しいのだった。

「神崎もいればよかったのに………僕だけのおもちゃ
 だったのに…。あんな奴らに勝手にさせるなんて…」

忌々しいと言わんばかりに唇を噛んだ。

あの日、一緒に連れて来たはずだった。
なのに、実際は召喚されたリストには載っていなかっ
た。

一体どうしてこうなったのか?

向こうの世界で唯一仲がよかったというのに。
この世界なら、解放してあげられる。

あんな不良達に好き勝手殴らせる事もない。

日々傷だらけになっていくのを見ているのが心苦しか
った。

「ここでなら僕は最強の賢者なんだ……誰も逆らえな
 い、そういう存在なんだ……」

どの国に行っても優遇される。
そう言う存在なのだ。

なのに、唯一欲しかったものが手に入らなかったのだ
った。
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