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この世界に呼ばれた訳

第十一話 大人への階段

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王様への謁見を前に、ダンジョン報酬を奪われた
など、口が裂けても言えなかった。

豪勢なレッドカーペットの上を歩くと一段と豪華
な椅子に座っている男性がいた。

騎士達に囲まれるように中央に鎮座している。
その横には最初に会った女性が立っていた。

「アルスラ帝国、国王アルラータ王と、第一皇女
 ゼニス様です。この度、迷宮探索にて手柄を立
 てたと言うが、そのアイテムをここへ」

長野は迷ったが、身につけている剣を出した。
江口も自分の指にハマった指輪を出す。

「それだけか?」
「……はい。これだけ……です。」
「そうか…星の雫はなかったのか……」

残念がる王様に、言いたいが言えなかった。
自分達の失態で奪われたなど言いたくもなかった。

あんな雑魚だと思っていた奴にまんまと取られた
挙句逃げられたなど、言えない。

仕返しは自分の手で、そう誓うと殺意を滾らせた
のだった。

「それはそなた達が使うがいい。下がって良い」
「下りなさい」

言われたままに、装備して帰っていく。

訓練場にも、食堂にも弘前の姿はなかった。

本当にこの城からいなくなったのかもしれない。

「クソっ、あの雑魚どこにいきやがったんだ!」
「それより、他のダンジョンへ行けばまた来るん
 じゃねーか?」

苛立つ上島と江口に長野が提案した。

「あいつは星の雫を探してんだろ?あれってカケラ
 って事は、まだ足りねーんだよ。だから先に俺達
 が集めれば…」
「また現れるって事か?」
「そう言う事だ!」
「なるほどな……」
「やってやろうぜ!」
「だなっ」

二人が賛同すると、まずは街に出る事にした。

城を出て、金貨をもらってから街にいく。
一番初めに行くところがここ、娼館が並ぶ通りだ
った。

綺麗な女性が手招きする場所で、いい匂いが充満
していた。
人間の女性から獣人の女性まで幅広く取り扱って
いた。

「おい、これ見ろよ!おっぱいでけ~~~」

「お兄さぁ~ん、一晩買っていってよ?サービス
 するからさぁ~」

獣耳をピクピクさせながら薄い布をチラチラと広
げて見せて来た。

見えそうで見えない、その仕草に江口は食いつく
ように見いっていた。

「俺、この子でいいや……」
「お兄さん、入口はそっちよ?」
「おう、待っててな……」

完全に鼻の下を伸ばしながら入っていく。

「おい、江口のやつ食べられるんじゃないか?」
「あいつも今日大人になるんだな……なら俺も…」

そう言うと上島も別の店に入っていった。

長野は獣人を見て嫌な記憶がよぎった。
彼女だった夏美の事だった。

あのままダンジョンの中に置いて来たが、今頃どう
なっているのか?

獣のように交わっていたのを見て、どうしても助け
る気にはなれなかった。

初めに思ったのは汚いという思いだった。
俺もあの魔物のように夏美を抱いていたのか?

違うと思いたかった。
結局は男は誰しも獣なのだ。
その日、人間の女を買うと一晩だけの相手としてダ
ンジョンで見た夏美の光景を消すべく、乱暴に抱い
たのだった。

朝になれば娼館から追い出された。

そこで再び3人がお互いに有意義な時間を使った事
を再確認したのだった。

「俺は昨日大人になったぜ…もうすっからかんよ」
「俺も、すげーな、あればマジすげーよ!」
「おい、いくぞ」
「おぉ。朝までヤっちまったぜ」
「俺も、体力が有り余ってる気がするぜ」

江口と上島の言葉を聞きながら長野は夏美の幻影を
振り払うのが精一杯だった。

感じる余裕など、なかったのだった。
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