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この世界に呼ばれた訳
第十話 帰還
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10日目ともなると、だいぶんと慣れてきた。
夢で見ていた魔法も使えそうな気がしてきた。
それには触媒が弱い。
触媒とは。
今使っている杖の事だった。
長野と上島が持っていった杖はここの魔法師がよく
使う一般的なものだ。
だが、賢者が使う物は別格だった。
夢の中で無双していた時は、狩った魔物の魔石から作
った特注品なのだ。
前代賢者と一緒に倒したので、弟子の自分がもらった。
「そろそろ、いい頃合いかな……」
雑学には興味はない。
なぜなら、もうすでに知っているからだった。
賢者の称号を得る時に膨大な知識を習得したのだ。
魔法は訓練しなければならなかったが、ある程度使え
るようになればあとは応用だけだった。
そんな頃、再び騒がしくなって来た。
「どうしたのですか?」
「先ほど選抜隊が帰って来たんです」
「それって長野達が?」
「ただ……帰って来れたのは3名だけとか……」
「……」
11名がダンジョンの中に向かった。
そして帰って来たのが3名………。
これが何を意味しているのか、誰もが言わないが理解
はしているつもりだった。
鎧もボロボロになりながら帰ってきた3人とは長野を
じめとする上島と江口だった。
「おいおい、こんなところでお勉強か?」
「いまだに雑魚過ぎてダンジョンにもはいれねーっ
てか?」
ちょうど騎士に連れられて雑学を学んでいる部屋の前
を通りかかったらしい。
見慣れぬ剣を携えている事から一応クリアはしたらし
かった。
「おい、あれ!」
「おっ、弘前がいるじゃねーか?」
「おい、弘前!こいよ……そんなつまんねー勉強より
も俺達と身体動かそうぜ?」
「……」
長野の言葉に、クラスのみんなの視線が弘前へと向か
った。
虐められていた時と一緒だった。
誰も助けようとは思わない。
ただ、早くどっかいってくれと願うようでもあった。
「はぁ~、仕方ない…」
「弘前くん。やめなよ、危ないよ?」
前と違ったのは、ここにはそれを止める神崎がいない
事だった。
隣に座っていた日比野が小声で言って来たが、にっこ
りと笑い返したのだった。
「もう前までの僕じゃないよ。」
そういうと、長野の後をついていった。
城の中庭に来ると、上田が自信満々に振り返った。
「おい、今回は守ってくれる神崎はいねーぞ?」
「俺にも殴らせろよ?竜がやったらすぐに死んじまう
だろ?」
「仕方ねーな。一発だけだぞ?」
「おう!」
江口が拳を鳴らすと、構えに入った。
「そう言えば聞きたかったんだが……星の雫は手に入
ったのか?」
「おい、偉そうに言ってんじゃねーよ?弘前のくせに
生意気だぞ?」
上島が目の前にルビーを出すとわざとらしく見せびら
かしたのだった。
「なるほど、一応手に入れたようだね……だったらそ
れを渡して貰おうか?クズには必要ない物だろう?」
不敵に笑うとアイテムボックスから豪華な杖を取り出
したのだった。
「おい、何豪華な杖持っちゃってるんだよ?こっちに
寄越せよ!」
「力ずくで取ってみなよ?」
「クソ雑魚がぁ~」
一気に距離を詰めると江口がストレートを顔に向けて
放つ。
完全にとらえたと思った。
グニィッとして手ごたえがない。
まるで水のようなぶよんっとしたものを殴ったような
感覚がしたのだ。
「あぁん?」
「おい、何手加減してんだよ?」
「ちげーし…?」
思いっきり殴ったはずの江口の拳は、倒すことは愚か
ダメージすら入っていなかった。
「向こうの世界では散々暴れていたくせに、ここでは
この程度なのか?」
煽るように言う弘前に、上田が攻撃を加える。
一気に真っ二つして、血が吹き出すのを想像していた。
が、そうはならなかった。
切ったはずの場所は、全くダメージが入っていないの
だ。
「おい、どいてろ?」
長野が前に出ると一気に燃やし尽くす勢いで魔法が打
たれた。
身体ごと一気に燃え盛ると溶けるように身体が溶け出
したのだった。
「おい、こいつ……」
「本体じゃないんじゃないか?」
「マジかよ……あれ?さっきの石は!?」
長野が気づいたのはさっきまであったはずの宝石が無
くなっている事だった。
「そうそう、君達には感謝を言わないとね、ご苦労さ
ま。だけど、星の雫のカケラは見つからなかった…
そう言う事にしておこうか!」
「おい、出てこいよ!」
弘前の声だけが響き、その場から消えていった。
夢で見ていた魔法も使えそうな気がしてきた。
それには触媒が弱い。
触媒とは。
今使っている杖の事だった。
長野と上島が持っていった杖はここの魔法師がよく
使う一般的なものだ。
だが、賢者が使う物は別格だった。
夢の中で無双していた時は、狩った魔物の魔石から作
った特注品なのだ。
前代賢者と一緒に倒したので、弟子の自分がもらった。
「そろそろ、いい頃合いかな……」
雑学には興味はない。
なぜなら、もうすでに知っているからだった。
賢者の称号を得る時に膨大な知識を習得したのだ。
魔法は訓練しなければならなかったが、ある程度使え
るようになればあとは応用だけだった。
そんな頃、再び騒がしくなって来た。
「どうしたのですか?」
「先ほど選抜隊が帰って来たんです」
「それって長野達が?」
「ただ……帰って来れたのは3名だけとか……」
「……」
11名がダンジョンの中に向かった。
そして帰って来たのが3名………。
これが何を意味しているのか、誰もが言わないが理解
はしているつもりだった。
鎧もボロボロになりながら帰ってきた3人とは長野を
じめとする上島と江口だった。
「おいおい、こんなところでお勉強か?」
「いまだに雑魚過ぎてダンジョンにもはいれねーっ
てか?」
ちょうど騎士に連れられて雑学を学んでいる部屋の前
を通りかかったらしい。
見慣れぬ剣を携えている事から一応クリアはしたらし
かった。
「おい、あれ!」
「おっ、弘前がいるじゃねーか?」
「おい、弘前!こいよ……そんなつまんねー勉強より
も俺達と身体動かそうぜ?」
「……」
長野の言葉に、クラスのみんなの視線が弘前へと向か
った。
虐められていた時と一緒だった。
誰も助けようとは思わない。
ただ、早くどっかいってくれと願うようでもあった。
「はぁ~、仕方ない…」
「弘前くん。やめなよ、危ないよ?」
前と違ったのは、ここにはそれを止める神崎がいない
事だった。
隣に座っていた日比野が小声で言って来たが、にっこ
りと笑い返したのだった。
「もう前までの僕じゃないよ。」
そういうと、長野の後をついていった。
城の中庭に来ると、上田が自信満々に振り返った。
「おい、今回は守ってくれる神崎はいねーぞ?」
「俺にも殴らせろよ?竜がやったらすぐに死んじまう
だろ?」
「仕方ねーな。一発だけだぞ?」
「おう!」
江口が拳を鳴らすと、構えに入った。
「そう言えば聞きたかったんだが……星の雫は手に入
ったのか?」
「おい、偉そうに言ってんじゃねーよ?弘前のくせに
生意気だぞ?」
上島が目の前にルビーを出すとわざとらしく見せびら
かしたのだった。
「なるほど、一応手に入れたようだね……だったらそ
れを渡して貰おうか?クズには必要ない物だろう?」
不敵に笑うとアイテムボックスから豪華な杖を取り出
したのだった。
「おい、何豪華な杖持っちゃってるんだよ?こっちに
寄越せよ!」
「力ずくで取ってみなよ?」
「クソ雑魚がぁ~」
一気に距離を詰めると江口がストレートを顔に向けて
放つ。
完全にとらえたと思った。
グニィッとして手ごたえがない。
まるで水のようなぶよんっとしたものを殴ったような
感覚がしたのだ。
「あぁん?」
「おい、何手加減してんだよ?」
「ちげーし…?」
思いっきり殴ったはずの江口の拳は、倒すことは愚か
ダメージすら入っていなかった。
「向こうの世界では散々暴れていたくせに、ここでは
この程度なのか?」
煽るように言う弘前に、上田が攻撃を加える。
一気に真っ二つして、血が吹き出すのを想像していた。
が、そうはならなかった。
切ったはずの場所は、全くダメージが入っていないの
だ。
「おい、どいてろ?」
長野が前に出ると一気に燃やし尽くす勢いで魔法が打
たれた。
身体ごと一気に燃え盛ると溶けるように身体が溶け出
したのだった。
「おい、こいつ……」
「本体じゃないんじゃないか?」
「マジかよ……あれ?さっきの石は!?」
長野が気づいたのはさっきまであったはずの宝石が無
くなっている事だった。
「そうそう、君達には感謝を言わないとね、ご苦労さ
ま。だけど、星の雫のカケラは見つからなかった…
そう言う事にしておこうか!」
「おい、出てこいよ!」
弘前の声だけが響き、その場から消えていった。
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