弱いままの冒険者〜チートスキル持ちなのに使えるのはパーティーメンバーのみ?〜

秋元智也

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この世界に呼ばれた訳

第四話 夏美の運命

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ダンジョンへと潜った選抜隊ならぬ、長野を中心
とした死に急ぎ隊は人数を減らし、第三回層へと
来ていた。

ダンジョンという割に一本道で、左右に分かれ道
はあるものの、すぐに行き止まりだった。

実質迷うことなく下の階へと降りて行けている。

迷う事なく魔物を屠っているせいで身体も始めよ
り軽い気がした。

「なんかさっきよりも身体が軽くね?」
「確かにな……レベルが上がったとかかな?」
「そうかもな……どんどん倒せばもっと強くなる
 んじゃねーか?」

長野に続いて上島が言う。

江口は少し恩恵が弱い気がする。
その理由は、倒し方にある。

まずは江口がぶっ飛ばした魔物を長野が止めを
刺すか、もしくは上島が殺していた。

そのせいで経験値のほとんどがトドメを刺した
方に流れていっているのだ。

パーティーと言う概念がないせいか加藤夏美は
なんの変化もない。

手が滑って火傷をした箇所も暫くすると綺麗に
治っていた。

「仁……さっきの傷は?」
「あぁ、さっき治ったっぽいな……やっぱりす
 げーよ!レベルが上がれば傷も治るし、どん
 どん火力も上がるぜ!」

レベルは目で見えないが、それでも回復効果で
自分では分かるらしい。

このままでは夏美だけ取り残される。

前に出ると弓を構える。
いくら引っ張ってもなかなか前にまっすぐ飛ば
ない。
多分力が足りないせいだろう。

持ってくる武器を間違えたのかもしれない。

これでは一匹も殺せない。

いつか置いていかれる。
そういう焦りが、余計な行動を誘発する。

魔物の前ですっ転ぶと尻餅をついた。

「おい、夏美何やってんだ!さっさと影に隠れ
 てろ!」
「護りならが戦う余裕なんてねーぞ?」
「いいのかよ?長野~お前の女だろ?」

長野の言葉に上田も賛同したが、江口は自分の
女なら後ろに下がらせて守ればいいと主張した。

自分の手柄を横取りするなという意味もあるのだ。

「別にこの世界なら女は腐るほどいるんじゃね?
 ここを出たら街にでも遊びに行こうぜ?」

上島はいつも長野を見て羨ましいがっていたから
ここぞとばかりに街娘に期待を馳せる。

「俺らもモテモテだったりしてな?」

ちょっと期待していう江口に上島もそれに乗っか
る。

「俺らもとうとう童貞卒業か!」
「いいね!」
「おい、お前らしっかり倒せよ!」

長野が文句を言うように叫ぶ。

夏美はただ見ていることしかできなかった。
後ろからポタリッ。ポタリッと水が落ちる。
それに気づき振り返った時には遅かった。

口を塞がれ引きずられるように奥へ奥へと連れて
いかれる。

「んんんっーーーー!!」

叫ぼうにも、声が出せない。
手足をばたつかせたが、誰も気づかない。
荷物を置いたまま夏美だけが忽然と消えたのだっ
た。

背中とお尻を引きずられ続けると、服もボロボロ
になっていく。

少し深く掘られた竪穴に落とされた。
その衝撃でさっきまで気絶していたのだと気づい
た。

そこには腹ボテの女性が何人も転がっていた。

「何よ……ここ……」

無気力にただ手足を投げ出して動こうとしない女性
に近づくと脈を見る。

また生きている。
だが、ここは一体どこなのだろう。

周りを見ても登れる場所はない。
服は破けて下着しか着ていなかった。

「全く、どうなってるのよ…仁ーー!聞こえる?」

返事すらない。
すると穴の上から覗き込む影が見えた。

「ちょっと、そこにいるんでしょ?助けてよ?仁
 ったら!」
「やめなさい……もう助けは……こないわ」

奥の女性が声を出すと、夏美はすぐに駆け寄った。

「ちょっとここはどこなの?」
「……知らないのね……ここは奴らの苗床よ……」
「はぁ?ちょっと苗床って………奴らって誰よ……」
「ほら、来たわ……奴らよ……」

それだけ言うと気が狂ったように笑い出した。
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