上 下
5 / 137
異世界へ

第五話 仲間の犠牲

しおりを挟む
ダンジョンの中はジメジメしていて、何処からこんなに
湿気が出ているのかは不思議だった。

至るところにドロっとした物体がこびりついている。

「これって水だよな?」
「ん~~~?」

壁にくっついている水の塊を見ると、どうやって水が壁に
ひっついているのかが不思議だった。

「焼くか?」
「剥がせば剥がれるんじゃね?」

先頭を歩く長野が言うと、夏美の横にいた女子が剣を抜く
くと壁に差し込んだ。

こじるように剥がそうとすると、一気にするっと手応えが
無くなったのだった。

そして、ヌルンッと剣を飲み込むとそのまま頭からすっぽ
りと覆ったのだった。

いきなりの動きに驚き暴れるが、一向に離れない。

剣で切りつけるわけにもいかず、短剣を握ったが、女子の
顔に傷をつけてもいいものかと悩む。

「ちょっと、仁!助けてよ!」
「それは……焼けばいいのか?火力調整できないぞ?」
「いいから、早く!死んじゃうじゃん!」

夏美に言われるがままに魔法を使う。

一気に炎が身体を包むと悶えるようにして丸こげになって
しまった。

動かなくなった友人を眺めて夏美は呆然としていた。

頭部を覆ったのはスライムという魔物だった。
核を壊すか、火で焼き切るのが撃退方法だった。

このメンバーの中には回復を使える者はいない。
回復用ポーションを数本渡されはしたが、ここで使う気に
はなれなかった。

「ポーション使えば助かったかも……」
「それは無理だな……ポーションは戦闘時に使うべきだ。
 それに自分の不注意で死んだのは自業自得だろ?」
「そんな言い方……」
「嫌だったら別行動するか?」

長野の言葉に反論を唱える者はいなかった。

そのあと、先に進むにつれてすばしっこい魔物が出て来る。

きのこのような見た目のコロコロしたモノが向かって来
ていた。

「おい、戦闘準備!」
「おう!まかせろ!」

手のひらサイズの小さなきのこ。
それが飛び跳ねるようにぴょんぴょんと向かって来た。

小さなきのこという見た目から、油断していた。

槍で貫くと、いきなりプシュ~と胞子を出して来た。

「なっ……なんだよッ……これっ」

胞子を浴びた生徒は視界が真っ白になって何も見えなく
なった。
そのうちに、ペチョンぺチョンと近づく音に、恐怖を感
じたのだろう。

思いっきり武器を振り回したのだった。

横にいる仲間のことなど全く考えずに…。

その瞬間、何かを切った感触が手に伝わる。
後ろについて来ていた生徒達は自分たちの手で、仲間達
に攻撃をしていた。

先頭の3人は魔法を駆使して黙らせると、江口は思いっ
きり胞子が出る前に遠くへと蹴り飛ばした。

「こんなもんか……」
「後ろ大惨事じゃね?」
「そうだな……でも、これって俺たちのせいじゃねー
 だろ?」
「そういえばさー、あいつらがいなくなったら食糧分
 ける必要なくねーか?」
「確かにな……夏美、リュック取ってこいよ」
「えー、あたしがいくの?」

文句を言いながらも、無茶苦茶に武器を振り回している
仲間の横を素通りして荷物を回収したのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。 しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。 チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。 研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。 ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。 新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。 しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。 もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。 実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。 結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。 すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。 主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...