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♯1 新たな門出
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作業場ではいくつもの機械音と蝉の声がやかましく交錯している。
「よし、一旦休憩にするか」
社長の一声で従業員たちが手を止める。
俺は大きく伸びをした。腕の関節がポキポキと鳴る。疲れが取れるようで心地よい。
「飯島くん。ご苦労さん」
社長がにこにこしながら俺に声をかけてくれる。
軽く会釈する。
社長は若い俺が入社したことに喜んでくれているようだった。
すでに喜寿を迎えているというのに元気に働いている。
俺が働いているのはネジの製造をメインとする工業会社だ。従業員の数が15人ほどと少ないが、人柄の良い社長に信頼を寄せている者が多い。俺もその中の一人だ。
「よお。疲れたか飯島」
専務の岩本さんが大きな声で俺に話しかける。
口は悪いが、とても優しい人だ。
「はい。検品作業ってもっと楽だと思ってました」
汗を拭きながら俺は答える。
検品作業とは生産されたネジの中の不良品を見つけ、取り除く作業だ。同じ作業を何時間も繰り返すため、神経をすり減らすことになる。
「俺も新人の頃は検品ばかりやらされたよ。まああと一ヶ月もすりゃ機械みてぇに速く見分けれるようになるさ」
そうですかと笑顔で返し、作業場の外へ出る。
俺はつくづくこの職場を選んで良かったと思っている。
入社してまだ一月も経っていないにも関わらずみんな本当に親切だ。誰もが俺を息子のように気にかけてくれる。
作業場の近くの自販機で缶コーヒーを買い、一気に飲み干した。単純作業でぼーっとしていた頭が冴え渡る。
雲一つない空を見上げ、自身の新たな門出を改めて噛み締めた。
この会社に、あの人たちに一生ついていこう。
そう決意した。
しかし、この日常は長くは続かなかった。
「よし、一旦休憩にするか」
社長の一声で従業員たちが手を止める。
俺は大きく伸びをした。腕の関節がポキポキと鳴る。疲れが取れるようで心地よい。
「飯島くん。ご苦労さん」
社長がにこにこしながら俺に声をかけてくれる。
軽く会釈する。
社長は若い俺が入社したことに喜んでくれているようだった。
すでに喜寿を迎えているというのに元気に働いている。
俺が働いているのはネジの製造をメインとする工業会社だ。従業員の数が15人ほどと少ないが、人柄の良い社長に信頼を寄せている者が多い。俺もその中の一人だ。
「よお。疲れたか飯島」
専務の岩本さんが大きな声で俺に話しかける。
口は悪いが、とても優しい人だ。
「はい。検品作業ってもっと楽だと思ってました」
汗を拭きながら俺は答える。
検品作業とは生産されたネジの中の不良品を見つけ、取り除く作業だ。同じ作業を何時間も繰り返すため、神経をすり減らすことになる。
「俺も新人の頃は検品ばかりやらされたよ。まああと一ヶ月もすりゃ機械みてぇに速く見分けれるようになるさ」
そうですかと笑顔で返し、作業場の外へ出る。
俺はつくづくこの職場を選んで良かったと思っている。
入社してまだ一月も経っていないにも関わらずみんな本当に親切だ。誰もが俺を息子のように気にかけてくれる。
作業場の近くの自販機で缶コーヒーを買い、一気に飲み干した。単純作業でぼーっとしていた頭が冴え渡る。
雲一つない空を見上げ、自身の新たな門出を改めて噛み締めた。
この会社に、あの人たちに一生ついていこう。
そう決意した。
しかし、この日常は長くは続かなかった。
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