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新しい日々
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「スカーレット、準備はできたか」
「ええ」
エドガーに答えて、笑顔で差し出された腕に手を絡める。今のエドガーはスカーレットの婚約者である。
元々、スカーレットが王家に嫁いだ際にはエドガーがフーリエ公爵家の養子になり公爵位を継ぐことになっていた。しかし、スカーレットの婚約は不確実だったため、エドガーは婚約者を持つこともなく中途半端な位置に浮くことになった。それでもエドガーはそれを不満に思うでもなく、スカーレットを支え続けてくれたのだ。
当然、婚約が解消されたからには新たな婚約者にはエドガーが選ばれた。その方が順当に公爵家の血を繋げるからだ。
「こんな日々がくるなんて、夢のようよ」
「そうか?俺にとっては嬉しい現実だな。だって、寝ても覚めても、君は俺の隣にいる」
「……そうね。私も嬉しいわ」
きっとスミソニアンと婚約したままだったら味わえなかった幸せだ。
スミソニアンはスカーレットとの婚約が解消された後、パーティーで言われた通りに廃太子となった。辛うじて王族としての籍は残っているが、貴族からの王家への敬意を損なった罪は大きい。また、色々と執務でも問題があったようで、今は方々から非難されて引きこもっているようだ。王はいずれ王族から籍を抜き、地方の小領主にすることを考えていたが、それも難しくなっているようだ。
レティは大した罪は犯していない。壇上で高位貴族を見下ろしたことと、婚約者のいる高位貴族男性に言い寄って精神的苦痛を味わわせたことで訴えられているが、それほど酷い罰にはならないだろう。だが、ポトリフ男爵はレティの引き取りを拒否し、それはもはや自分の娘ではないと切り捨てた。また、レティはゲームのことを現実のように尋問官に話し続け、精神がおかしな人間として専門の病院への入院が検討されている。ゲームのことを知っているスカーレットから見ても、レティの挙動はおかしいので、それも納得の判断だ。
スカーレットは来年結婚式を挙げる。婚約期間は短いが、エドガーは長く公爵の仕事を学んでいたので問題ないと判断されたのだ。
スカーレットがスミソニアンに寄り添おうと努力したことは、そのほとんどが無駄になった。だが、その過程で得た知識はスカーレットの財産である。
「公爵領に行ったら何をしようかしら」
「まずはどういう産業を育てるか見て回ってから検討しよう」
「ええ、そうね」
笑顔で言葉を交わす。互いに意見を言い合える関係を心から嬉しく思う。そして愛する領地に自分がこれまで得た知識人脈をそそいで発展させると誓った。エドガーと2人でこれからの人生を楽しく幸せに歩んでいくのだ。
end.
「ええ」
エドガーに答えて、笑顔で差し出された腕に手を絡める。今のエドガーはスカーレットの婚約者である。
元々、スカーレットが王家に嫁いだ際にはエドガーがフーリエ公爵家の養子になり公爵位を継ぐことになっていた。しかし、スカーレットの婚約は不確実だったため、エドガーは婚約者を持つこともなく中途半端な位置に浮くことになった。それでもエドガーはそれを不満に思うでもなく、スカーレットを支え続けてくれたのだ。
当然、婚約が解消されたからには新たな婚約者にはエドガーが選ばれた。その方が順当に公爵家の血を繋げるからだ。
「こんな日々がくるなんて、夢のようよ」
「そうか?俺にとっては嬉しい現実だな。だって、寝ても覚めても、君は俺の隣にいる」
「……そうね。私も嬉しいわ」
きっとスミソニアンと婚約したままだったら味わえなかった幸せだ。
スミソニアンはスカーレットとの婚約が解消された後、パーティーで言われた通りに廃太子となった。辛うじて王族としての籍は残っているが、貴族からの王家への敬意を損なった罪は大きい。また、色々と執務でも問題があったようで、今は方々から非難されて引きこもっているようだ。王はいずれ王族から籍を抜き、地方の小領主にすることを考えていたが、それも難しくなっているようだ。
レティは大した罪は犯していない。壇上で高位貴族を見下ろしたことと、婚約者のいる高位貴族男性に言い寄って精神的苦痛を味わわせたことで訴えられているが、それほど酷い罰にはならないだろう。だが、ポトリフ男爵はレティの引き取りを拒否し、それはもはや自分の娘ではないと切り捨てた。また、レティはゲームのことを現実のように尋問官に話し続け、精神がおかしな人間として専門の病院への入院が検討されている。ゲームのことを知っているスカーレットから見ても、レティの挙動はおかしいので、それも納得の判断だ。
スカーレットは来年結婚式を挙げる。婚約期間は短いが、エドガーは長く公爵の仕事を学んでいたので問題ないと判断されたのだ。
スカーレットがスミソニアンに寄り添おうと努力したことは、そのほとんどが無駄になった。だが、その過程で得た知識はスカーレットの財産である。
「公爵領に行ったら何をしようかしら」
「まずはどういう産業を育てるか見て回ってから検討しよう」
「ええ、そうね」
笑顔で言葉を交わす。互いに意見を言い合える関係を心から嬉しく思う。そして愛する領地に自分がこれまで得た知識人脈をそそいで発展させると誓った。エドガーと2人でこれからの人生を楽しく幸せに歩んでいくのだ。
end.
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ありがとうございました。
感想嬉しいです!
ありがとうございました😊
あ、名前のスミソニアンから博物館ですね!一瞬誰?!てなりました🤣
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王子の教育はちゃんとしようとしてたと思うんです。でも、スカーレットへの劣等感から捻くれた王子は教育を放棄して矯正不可でした。
……という感じですかね。