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一.勃興
したたかな弱者 ― 前編 ―
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牛太と新之助が西津へ戻ると、船首に旗をたなびかせた一隻の大船が入っていた。もしやあれは多烏の大船だろうかと眺めていると、
「えらい急いで戻ってきたッスねぇ」
と背後から声がしたので振り向くと、
「商人の嗅覚ッスか?」
と言って、ケン次郎が和やかに迎えてくれた。
「ケン次郎殿か。あそこに見えているのは、多烏の船でしょうか?」
と牛太が問うと、
「今まさに着いたとこッスよ。あれが多烏の大船『徳勝』ッス」
船名には皆こぞって好字を用いるが、この船もまた、期待を負った良い名を与えられてた。
こうした廻船は日本海沿岸を東へ西へ、いくつもの国を股にかけていた。国と言っても、いま徳勝が入った西津港は若狭国であるが、すこし東へいって、現在の福井県の敦賀港に入れば、そこは敦賀国である。いまはどちらも福井県だ。
津々浦々という四文字熟語のとおり大小たくさんの港があり、それらの港を自由に通過する特権を保証された船は、それを知らしめる船旗を掲げていたらしい。そこには権力のうしろだてが必要で、得宗領多烏浦の所属であるこの大船の船首には、得宗の家紋、三鱗の旗印が高らかにあがってたに違いない。
「こっからが大仕事ッス。一刻も早く積荷を見たいでしょうが、荷揚げにはまだ時がかかります。もう一日くらい多烏でゆっくりしてきてもらったら丁度って感じだったんッスがねぇ」
無事に着けばそれでよしということではないようだ。船が傾かぬように綺麗に積んできたのだろうから、降ろすのもまた一苦労なのだろう。
しかし今の牛太らには、かえって都合がよかったのかもしれない。
「それならむしろ好都合です。我らも急ぎ、行かねばならないところがあったので」
と、牛太が返すと、
「そりゃあいい。そんならお戻りになるころには、目ぼしい品はまとめておきますんで。唐物の目利きは期待してるッスよっ」
と、事情を知らないケン次郎は、単に予定が綺麗にはまったことを喜んだ。
牛太は伝えるべきか迷ったが、目が合った新之助が黙って頷くのを見て、多烏の状況をケン次郎に話すことにした。
※※※
「そうッスか。いや、本当にありがてぇッス」
ケン次郎と別れてからあったことを、順を追って事細かに話した。
すべてを聞き終えたあと、ケン次郎は感謝を口にした。
「ケン次郎殿も急ぎ、多烏へ向かった方がよろしいのではないでしょうか?」
と牛太が言うと、
「いいや、俺はここに残るッスよ。船も着きましたしね」
と、ケン次郎は浦へ戻らないことを伝えた。
「俺は喧嘩ごとはからっきしッスから、戻ったって大して役には立たねぇッスよ。前に見たでしょう? お虎様にいとも簡単に捻り上げられて」
ケン次郎は以前にもそうしたように、器用に自分の右手で左手を捻り上げてみせた。
数で劣る多烏だ。ひとりでも仲間が多いに越したことはないが、実際のところケン次郎ひとり増えたところで、大勢に影響するとも思えない。それはおそらくケン次郎も承知のことだろう。明るく振る舞っているがどことなく陰を感じるのは、こちらの勘繰りのせいだけではないはずだ。しかしそれを指摘するのも野暮な気もして、牛太も話の調子を合わせた。
「あれは特別でしょう。トラに掛かれば、大抵の者は同じ目に遭いますよ」
「そうそう、ありゃあ熊とおんなじだ。人と一緒にしちゃあいけねぇ」
天敵の虎臥をこき下ろす機会とあって、示し合わせたわけでもないのに新之助も嬉々として話に乗ってくる。おかげで一段と場が和んだので、説得するような空気にならないように気を遣いながら、多烏へ戻ってはどうかと伝えてみることにした。
「お伝えした通り、正面から衝突るのを避け、話し合いによる解決を図ることが多烏の総意。正面切っての喧嘩事ではありません。ケン次郎殿は山に詳しい。陸からの奇襲作戦にケン次郎殿がいれば、皆も心強いでしょう」
虎臥がいくら山歩きに慣れているからと言っても、あの辺りの山を熟知しているわけではない。虎臥の提案した奇襲作戦には、多烏の山を熟知している者が必要だ。ケン次郎が適任であることは間違いないと思うし、それは多烏の山守を自負するケン次郎本人にとっても同じはずだと牛太は思ったが、ケン次郎の答えはかわらなかった。
「姫様の考えに俺は大賛成ッスよ」
と言って鶴姫の考えに賛同し、だからこそ自分は浦へは戻らず、ここに残って荷捌きをするのだと言った。
「海の産物は足が早ぇッスからね。全部銭で納められるんならそっちの方がありがてぇ。しかも公事も全部ってことになれば人を割かれることもなくなるわけだから、商いに専念できる。俺らは海から浦を築いた、海の民ッスからね。海の傍で暮らして、海で稼げるなら、それが一番ッスよ」
ケン次郎は体を海に向けた。徳勝を見ているようだった。
「ケン次郎殿はここへ残って船を助ける。その方が多烏の利になると?」
牛太がケン次郎の背中に訊くと、
「腕が立たない分、口が立つ。銭勘定も得意な方ッスからね。今は浦に戻って喧嘩の助けに入るより、船で戻ってきた仲間の助けに入った方がよっぽど役に立つ。姫様もきっとそう思ってるッスよ」
と言い「それに――」と言って、こちらを向くと、
「俺に戻ってくるよう伝えを頼まれたわけじゃないッスよね?」
と、屈託のない顔で問われ、牛太は返す言葉に詰まった。
「ほらね」
そう言って、ケン次郎は笑った。
多烏を発つ際、鶴姫からケン次郎に宛てて、直ちに戻るようにと言付けを頼まれたわけではなかった。
浦で守備にあたるのは一人ではないが、徳勝の到着に合わせて今ここにいるのはケン次郎ただ一人だ。つまりこの役割を担うことができるのは、ケン次郎ただ一人ということだ。
「そこまで腹が決まってんならいいじゃねぇか。力任せの喧嘩が得意なのは向こうに置いてきたから心配いらねぇさ。俺らの喧嘩は、ここで勝負だ」
と、新之助がこめかみのあたりを指さして言った。
たしかにそうだ。腕力勝負だけが戦ではない。牛太がこれから向かう先は、腕力で勝敗が決する戦ではない。
「わかりました。廻船の商いを上手くまわすところまでが鶴姫様の策ですから、ケン次郎殿が申す通り、ここへ残って船を助けるのは、鶴姫様の意に適うことになるでしょう」
それぞれがすべきことをすればよいのだ。鶴姫がケン次郎に宛てて何も言わなかったのは、もとより信頼があったからに違いない。
「我らはこれから給主のところへ向かいます」
永仁の和与に従うよう、下知を賜るのだ。
「唐物があったら留め置いといてくれ。どこへ持っていきゃあ高く売れるか、俺の眼に掛かれば一発だからよっ」
と、新之助が景気よく言うと、
「まかしといて下さい。ここが俺の戦場ッスから」
ケン次郎が胸を叩いて答えた。
※※※
角を落として丹念に削り上げた竹の先に巻貝を刺し、糸できつく巻いて固定する。
貝には頭と尻に、幾つか小さな孔を開けた。
あとは矢筈の側に羽根を巻くのみだ。
「こんなものかのぉ」
完成形を想像しながら手探りで作った矢だが、淡い桃色の表面と内側の七色が美しい、放つのが惜しくなる出来栄えに、虎臥は満足した。
「器用なものだ。矢も自ら作るのですね」
虎臥の仮住まいの館に、鶴姫が様子を見にやってきた。
「急場しのぎじゃ。良い物を作ろうと思えば時が掛かり過ぎる」
牛太が弓と矢を持ってきてくれたが、やなぐいに収めている矢の本数では心許ないと思い、虎臥は空いた時間で矢を拵えていた。
「変わった形をしていますね。これでも飛ぶのですか?」
先端に巻貝が刺さっている奇妙な矢を見て、鶴姫が問う。
「蟇目矢といっての。矢を放つと、ここに開けた穴からこっちの穴に風が抜けて、竹笛のような音がするんじゃ。ピィーっとな」
と言って虎臥は、口笛を吹きながら手にした矢を右から左へ、放たれた矢の軌跡を想像して、弧を描くように動かしてみせた。
まっすぐに飛ぶかは甚だ怪しいが、的を狙うためのものではないのでこの際そこは問題ではない。重要なのは、想像していた通りに音が出てくれるかどうかだった。
「祭礼で見たことがある。このようになっていたのですね」
説明を聞いた鶴姫が、虎臥の手にしている矢が何であるかわかったらしい。
虎臥もそれ思い出して作り始めたものだった。
「物は見たことがあったのじゃが、わらわも己で作るのは初めてじゃ。狩りに使うのに音がしてしまっては、獲物が逃げてしまうからの」
右手に巻貝で作った蟇目矢を持ち、鹿に見立てた左手で、逃げていく仕草をしてみせる。
と、それもそうだと納得して、鶴姫がくつくつと笑った。
このうえなく平穏な空間だった。
蟇目矢の鏑に貝殻を使うことを思い立ち、巻貝を探して浜辺を歩いている時も感じたが、戦支度の最中とは思えないほど、浦には穏やかな時間が流れていた。
「お虎様っ、山の方、教えられた通り仕掛け終わりましたっ」
とそこへ、山に罠を仕掛けてくるよう頼んでいた浦の子供ら戻ってきた。
駆けてきたのだろう、皆息を切らせている。
「おお、ご苦労じゃった。どうじゃ? 上手くできたかの」
「初めは上手くいかんかったけど、いくつも作っとるうちに慣れました。あれは今回だけでなくて、今後も役に立つと思います」
よほど楽しめているのだろう。そう答える子供らの全身からは、いきいきとした空気が溢れている。
「それは良かった。さて、一段落ついたなら少し休んでおいた方がよい。向こうの出方次第じゃが、いつ動いてくるか分からぬからの」
と虎臥が言うと、
「はいっ!」
と元気よく返事をして、また駆けていった。
休めと言ってもこの調子だ。
「もうすっかり馴染んでいるようですね」
虎臥と浦の子供らのやりとりを見ていた鶴姫が、穏やかな声で言った。
「あのくらいの年頃は誰の言うことでも疑わぬ。歳を重ねるごとに疑うことを覚えるものじゃ」
子供たちに偽って罠を仕掛けさせに行かせたわけではない。下の子らはわからないが、上の子らは意味を理解している。とはいえ、戦を知らない子供らには実感がわかないだろうし、かくいう虎臥も経験のないことだった。戦支度も子供らにとっては遊びと同じだろう。その気持ちは、さほど歳の変わらない虎臥にもわかる。戦支度だけ愉しんで、実際に戦が起きないでくれれば一番なのだが。と、虎臥は思った。
「皆の準備は進んでおるかの?」
「ええ。海の方は父上が指揮を執っています。弥太郎大夫は陸の奇襲組には入れず、父上の下で船頭に就いてもらいました。粗暴に見えるでしょうが、浦を想う気持ちは人一倍強い。あの調子ですが人望もあります。なにより舟の扱いには最も長けていますから」
先頭に立つだけで皆の士気を高揚させる。暴走さえしなければ船頭に適任だ。暴走させないように手綱を握らせるなら、この浦の中では、刀祢である鶴姫の父しかいないだろう。
「適任じゃな。闇雲に刀を振り回されても困るからの。奇襲組も適任を集めてもらえたじゃろうか? あまり血の気の多いのは向かぬ。戦に赴くわけではないでの」
奇襲組などと言っているが、戦う気など初めから無い。
陽動作戦で汲部方の動きを攪乱することが目的だ。あまり臆病では困るが、血気に任せて突っ込む者より、逃げ足の速い者の方がよい。
「ケン次郎大夫と同様、山守の者を中心に身軽な者を集めました。あとは頼まれていた通り馬を用立てましたが、馬で行かれるのですか?」
鶴姫はよい人選をしてくれたようだ。
「馬で行くわけではない。ただ山際につけておけば、逃げを打つ時に役に立つかと思っての。必要になるかどうかは分からぬが、念のためじゃ」
何の気なしに言った言葉であったが、暗に危険の伴う策であることを仄めかしていると捉えたのだろう。例のごとく鶴姫の顔に影がかるのをみて、余計なことを言ってしまったなと思った。
「重ね重ね、危うい役目を押し付けてしまい、申し訳なく思う」
と、鶴姫の『申し訳ない病』が始まってしまった。
「またそのように顔を曇らせる。鶴姫様がそのような顔をしておったら、皆も不安に思うじゃろう。せっかくの器量も半減じゃ」
浦の者たちの前では毅然として表情を変えることのない鶴姫だったが、虎臥と二人でいるときはむしろ顔に出過ぎると言ってよいほどに表情に出ている。外部の者で、心を許せる者の前だからこそだろうか。そうであれば、それをあまり指摘するのも不憫な気がした。
「ご尊父のような仏頂面でなくともよいとは思うが、心配事がある度に浮かぬ顔をしておっては不運を呼び込む。憂いを帯びた美人の横顔に惹かれるのは、魑魅魍魎と頭の悪い男だけじゃ。どちらも、ろくなものではない。頭の悪い男はわらわが追い払ってやれるが、魑魅魍魎となればどうにもならぬかもしれぬからの」
虎臥は自分なりに慰めの言葉を並べてみたが、しんみりするのは好かないので、こんな言い方しかできない。
「頭の悪い男とは?」
「鶴姫様の脳裏にいま浮かんだ男じゃ」
と虎臥が返すと、鶴姫も誰のことを指しているか察したようで、
「あの方はよい人ですよ」
と、穏やかな表情が戻り、口許をほころばせた。
「調子のよい男ではあるの。じゃが、浅はかじゃ」
鶴姫はくつくつと笑った。
※※※
――ヘックショイッ!
「どうした? 風邪か?」
盛大にくしゃみをする新之助。
「いいや、そんなんじゃねぇが、なんだか急に鼻がむず痒くなってな」
と言って、鼻の下をすっと拭った。
「もう秋の風が舞っているから、きっとそのせいだろう」
と、牛太が言うと、
「そんなことより、こっからが思案だぜ」
と言って新之助は、道端の石に腰を下ろした。
「給主のもとへ向かうのではないのか?」
道を外れた新之助にむかって、牛太は道に立ったまま訊いた。なんの策も無かったが、急がなければならないことだけは事実。まずは給主のいる税所今富名へ急ごうとしていたが、
「百姓二人、ノコノコ出向いたところで門前払いがオチ。お目通りがかなわなけりゃあその先の話も続かねぇ」
と新之助が言うので、なにか策があるのかと思い、牛太も新之助のとなりに腰を下ろした。
「それもそうだな。どうする? また手土産でも用意するか?」
幸いなことに西津にいる。大概のものはここの市庭で手にいれることができる。
「下司に目通るのとは違うからなぁ。それ相応の物でなければ、かえって不評を買うことになりかねん」
貢ぎ物を受けておいて文句を言うなど理不尽と思うが、今は失敗が許されない。しかし何を持っていけばよいか、皆目見当がつかなかった。
「それでな、ちょっと思いついたことがあってな。太良荘へ行ってみようと思う」
と、なにを閃いたらしい新之助が、太良荘へ向かうと言い出した。
牛太の顔に、行ってなにがあるのかという疑問が浮かんだのをみてとると、
「太良荘は随分と遣り合ってるらしいな」
と付け加えた。
諍いはどこにでもあるものだが、訴訟にまで発展するとなれば話題になる。若狭の内では、太良荘の百姓らが、年貢米の免除を勝ち取ったというような話も聞こえていた。
「六波羅には日々、訴訟が持ち込まれる。あそこにいて訴訟の中身を聞いてっと、世の中の大勢が透けて見えてくる」
少々大袈裟な言い回しに牛太は、新之助劇場が開演したのだろうかと思いながら話を聞いた。
「あそこは名主らが巧く立ち回ってるようだ。中でも伊勢房、伊賀房という者がなかなかの曲者で、この者らが中心となって動いているらしい。領家と地頭の間で諍いがあるとみるや、のらりくらりで漁夫の利を得ている。その道に詳しい者があるなら、考えるより行って訊くのが早ぇ。百姓身分でお上と遣り合う術をよ」
「えらい急いで戻ってきたッスねぇ」
と背後から声がしたので振り向くと、
「商人の嗅覚ッスか?」
と言って、ケン次郎が和やかに迎えてくれた。
「ケン次郎殿か。あそこに見えているのは、多烏の船でしょうか?」
と牛太が問うと、
「今まさに着いたとこッスよ。あれが多烏の大船『徳勝』ッス」
船名には皆こぞって好字を用いるが、この船もまた、期待を負った良い名を与えられてた。
こうした廻船は日本海沿岸を東へ西へ、いくつもの国を股にかけていた。国と言っても、いま徳勝が入った西津港は若狭国であるが、すこし東へいって、現在の福井県の敦賀港に入れば、そこは敦賀国である。いまはどちらも福井県だ。
津々浦々という四文字熟語のとおり大小たくさんの港があり、それらの港を自由に通過する特権を保証された船は、それを知らしめる船旗を掲げていたらしい。そこには権力のうしろだてが必要で、得宗領多烏浦の所属であるこの大船の船首には、得宗の家紋、三鱗の旗印が高らかにあがってたに違いない。
「こっからが大仕事ッス。一刻も早く積荷を見たいでしょうが、荷揚げにはまだ時がかかります。もう一日くらい多烏でゆっくりしてきてもらったら丁度って感じだったんッスがねぇ」
無事に着けばそれでよしということではないようだ。船が傾かぬように綺麗に積んできたのだろうから、降ろすのもまた一苦労なのだろう。
しかし今の牛太らには、かえって都合がよかったのかもしれない。
「それならむしろ好都合です。我らも急ぎ、行かねばならないところがあったので」
と、牛太が返すと、
「そりゃあいい。そんならお戻りになるころには、目ぼしい品はまとめておきますんで。唐物の目利きは期待してるッスよっ」
と、事情を知らないケン次郎は、単に予定が綺麗にはまったことを喜んだ。
牛太は伝えるべきか迷ったが、目が合った新之助が黙って頷くのを見て、多烏の状況をケン次郎に話すことにした。
※※※
「そうッスか。いや、本当にありがてぇッス」
ケン次郎と別れてからあったことを、順を追って事細かに話した。
すべてを聞き終えたあと、ケン次郎は感謝を口にした。
「ケン次郎殿も急ぎ、多烏へ向かった方がよろしいのではないでしょうか?」
と牛太が言うと、
「いいや、俺はここに残るッスよ。船も着きましたしね」
と、ケン次郎は浦へ戻らないことを伝えた。
「俺は喧嘩ごとはからっきしッスから、戻ったって大して役には立たねぇッスよ。前に見たでしょう? お虎様にいとも簡単に捻り上げられて」
ケン次郎は以前にもそうしたように、器用に自分の右手で左手を捻り上げてみせた。
数で劣る多烏だ。ひとりでも仲間が多いに越したことはないが、実際のところケン次郎ひとり増えたところで、大勢に影響するとも思えない。それはおそらくケン次郎も承知のことだろう。明るく振る舞っているがどことなく陰を感じるのは、こちらの勘繰りのせいだけではないはずだ。しかしそれを指摘するのも野暮な気もして、牛太も話の調子を合わせた。
「あれは特別でしょう。トラに掛かれば、大抵の者は同じ目に遭いますよ」
「そうそう、ありゃあ熊とおんなじだ。人と一緒にしちゃあいけねぇ」
天敵の虎臥をこき下ろす機会とあって、示し合わせたわけでもないのに新之助も嬉々として話に乗ってくる。おかげで一段と場が和んだので、説得するような空気にならないように気を遣いながら、多烏へ戻ってはどうかと伝えてみることにした。
「お伝えした通り、正面から衝突るのを避け、話し合いによる解決を図ることが多烏の総意。正面切っての喧嘩事ではありません。ケン次郎殿は山に詳しい。陸からの奇襲作戦にケン次郎殿がいれば、皆も心強いでしょう」
虎臥がいくら山歩きに慣れているからと言っても、あの辺りの山を熟知しているわけではない。虎臥の提案した奇襲作戦には、多烏の山を熟知している者が必要だ。ケン次郎が適任であることは間違いないと思うし、それは多烏の山守を自負するケン次郎本人にとっても同じはずだと牛太は思ったが、ケン次郎の答えはかわらなかった。
「姫様の考えに俺は大賛成ッスよ」
と言って鶴姫の考えに賛同し、だからこそ自分は浦へは戻らず、ここに残って荷捌きをするのだと言った。
「海の産物は足が早ぇッスからね。全部銭で納められるんならそっちの方がありがてぇ。しかも公事も全部ってことになれば人を割かれることもなくなるわけだから、商いに専念できる。俺らは海から浦を築いた、海の民ッスからね。海の傍で暮らして、海で稼げるなら、それが一番ッスよ」
ケン次郎は体を海に向けた。徳勝を見ているようだった。
「ケン次郎殿はここへ残って船を助ける。その方が多烏の利になると?」
牛太がケン次郎の背中に訊くと、
「腕が立たない分、口が立つ。銭勘定も得意な方ッスからね。今は浦に戻って喧嘩の助けに入るより、船で戻ってきた仲間の助けに入った方がよっぽど役に立つ。姫様もきっとそう思ってるッスよ」
と言い「それに――」と言って、こちらを向くと、
「俺に戻ってくるよう伝えを頼まれたわけじゃないッスよね?」
と、屈託のない顔で問われ、牛太は返す言葉に詰まった。
「ほらね」
そう言って、ケン次郎は笑った。
多烏を発つ際、鶴姫からケン次郎に宛てて、直ちに戻るようにと言付けを頼まれたわけではなかった。
浦で守備にあたるのは一人ではないが、徳勝の到着に合わせて今ここにいるのはケン次郎ただ一人だ。つまりこの役割を担うことができるのは、ケン次郎ただ一人ということだ。
「そこまで腹が決まってんならいいじゃねぇか。力任せの喧嘩が得意なのは向こうに置いてきたから心配いらねぇさ。俺らの喧嘩は、ここで勝負だ」
と、新之助がこめかみのあたりを指さして言った。
たしかにそうだ。腕力勝負だけが戦ではない。牛太がこれから向かう先は、腕力で勝敗が決する戦ではない。
「わかりました。廻船の商いを上手くまわすところまでが鶴姫様の策ですから、ケン次郎殿が申す通り、ここへ残って船を助けるのは、鶴姫様の意に適うことになるでしょう」
それぞれがすべきことをすればよいのだ。鶴姫がケン次郎に宛てて何も言わなかったのは、もとより信頼があったからに違いない。
「我らはこれから給主のところへ向かいます」
永仁の和与に従うよう、下知を賜るのだ。
「唐物があったら留め置いといてくれ。どこへ持っていきゃあ高く売れるか、俺の眼に掛かれば一発だからよっ」
と、新之助が景気よく言うと、
「まかしといて下さい。ここが俺の戦場ッスから」
ケン次郎が胸を叩いて答えた。
※※※
角を落として丹念に削り上げた竹の先に巻貝を刺し、糸できつく巻いて固定する。
貝には頭と尻に、幾つか小さな孔を開けた。
あとは矢筈の側に羽根を巻くのみだ。
「こんなものかのぉ」
完成形を想像しながら手探りで作った矢だが、淡い桃色の表面と内側の七色が美しい、放つのが惜しくなる出来栄えに、虎臥は満足した。
「器用なものだ。矢も自ら作るのですね」
虎臥の仮住まいの館に、鶴姫が様子を見にやってきた。
「急場しのぎじゃ。良い物を作ろうと思えば時が掛かり過ぎる」
牛太が弓と矢を持ってきてくれたが、やなぐいに収めている矢の本数では心許ないと思い、虎臥は空いた時間で矢を拵えていた。
「変わった形をしていますね。これでも飛ぶのですか?」
先端に巻貝が刺さっている奇妙な矢を見て、鶴姫が問う。
「蟇目矢といっての。矢を放つと、ここに開けた穴からこっちの穴に風が抜けて、竹笛のような音がするんじゃ。ピィーっとな」
と言って虎臥は、口笛を吹きながら手にした矢を右から左へ、放たれた矢の軌跡を想像して、弧を描くように動かしてみせた。
まっすぐに飛ぶかは甚だ怪しいが、的を狙うためのものではないのでこの際そこは問題ではない。重要なのは、想像していた通りに音が出てくれるかどうかだった。
「祭礼で見たことがある。このようになっていたのですね」
説明を聞いた鶴姫が、虎臥の手にしている矢が何であるかわかったらしい。
虎臥もそれ思い出して作り始めたものだった。
「物は見たことがあったのじゃが、わらわも己で作るのは初めてじゃ。狩りに使うのに音がしてしまっては、獲物が逃げてしまうからの」
右手に巻貝で作った蟇目矢を持ち、鹿に見立てた左手で、逃げていく仕草をしてみせる。
と、それもそうだと納得して、鶴姫がくつくつと笑った。
このうえなく平穏な空間だった。
蟇目矢の鏑に貝殻を使うことを思い立ち、巻貝を探して浜辺を歩いている時も感じたが、戦支度の最中とは思えないほど、浦には穏やかな時間が流れていた。
「お虎様っ、山の方、教えられた通り仕掛け終わりましたっ」
とそこへ、山に罠を仕掛けてくるよう頼んでいた浦の子供ら戻ってきた。
駆けてきたのだろう、皆息を切らせている。
「おお、ご苦労じゃった。どうじゃ? 上手くできたかの」
「初めは上手くいかんかったけど、いくつも作っとるうちに慣れました。あれは今回だけでなくて、今後も役に立つと思います」
よほど楽しめているのだろう。そう答える子供らの全身からは、いきいきとした空気が溢れている。
「それは良かった。さて、一段落ついたなら少し休んでおいた方がよい。向こうの出方次第じゃが、いつ動いてくるか分からぬからの」
と虎臥が言うと、
「はいっ!」
と元気よく返事をして、また駆けていった。
休めと言ってもこの調子だ。
「もうすっかり馴染んでいるようですね」
虎臥と浦の子供らのやりとりを見ていた鶴姫が、穏やかな声で言った。
「あのくらいの年頃は誰の言うことでも疑わぬ。歳を重ねるごとに疑うことを覚えるものじゃ」
子供たちに偽って罠を仕掛けさせに行かせたわけではない。下の子らはわからないが、上の子らは意味を理解している。とはいえ、戦を知らない子供らには実感がわかないだろうし、かくいう虎臥も経験のないことだった。戦支度も子供らにとっては遊びと同じだろう。その気持ちは、さほど歳の変わらない虎臥にもわかる。戦支度だけ愉しんで、実際に戦が起きないでくれれば一番なのだが。と、虎臥は思った。
「皆の準備は進んでおるかの?」
「ええ。海の方は父上が指揮を執っています。弥太郎大夫は陸の奇襲組には入れず、父上の下で船頭に就いてもらいました。粗暴に見えるでしょうが、浦を想う気持ちは人一倍強い。あの調子ですが人望もあります。なにより舟の扱いには最も長けていますから」
先頭に立つだけで皆の士気を高揚させる。暴走さえしなければ船頭に適任だ。暴走させないように手綱を握らせるなら、この浦の中では、刀祢である鶴姫の父しかいないだろう。
「適任じゃな。闇雲に刀を振り回されても困るからの。奇襲組も適任を集めてもらえたじゃろうか? あまり血の気の多いのは向かぬ。戦に赴くわけではないでの」
奇襲組などと言っているが、戦う気など初めから無い。
陽動作戦で汲部方の動きを攪乱することが目的だ。あまり臆病では困るが、血気に任せて突っ込む者より、逃げ足の速い者の方がよい。
「ケン次郎大夫と同様、山守の者を中心に身軽な者を集めました。あとは頼まれていた通り馬を用立てましたが、馬で行かれるのですか?」
鶴姫はよい人選をしてくれたようだ。
「馬で行くわけではない。ただ山際につけておけば、逃げを打つ時に役に立つかと思っての。必要になるかどうかは分からぬが、念のためじゃ」
何の気なしに言った言葉であったが、暗に危険の伴う策であることを仄めかしていると捉えたのだろう。例のごとく鶴姫の顔に影がかるのをみて、余計なことを言ってしまったなと思った。
「重ね重ね、危うい役目を押し付けてしまい、申し訳なく思う」
と、鶴姫の『申し訳ない病』が始まってしまった。
「またそのように顔を曇らせる。鶴姫様がそのような顔をしておったら、皆も不安に思うじゃろう。せっかくの器量も半減じゃ」
浦の者たちの前では毅然として表情を変えることのない鶴姫だったが、虎臥と二人でいるときはむしろ顔に出過ぎると言ってよいほどに表情に出ている。外部の者で、心を許せる者の前だからこそだろうか。そうであれば、それをあまり指摘するのも不憫な気がした。
「ご尊父のような仏頂面でなくともよいとは思うが、心配事がある度に浮かぬ顔をしておっては不運を呼び込む。憂いを帯びた美人の横顔に惹かれるのは、魑魅魍魎と頭の悪い男だけじゃ。どちらも、ろくなものではない。頭の悪い男はわらわが追い払ってやれるが、魑魅魍魎となればどうにもならぬかもしれぬからの」
虎臥は自分なりに慰めの言葉を並べてみたが、しんみりするのは好かないので、こんな言い方しかできない。
「頭の悪い男とは?」
「鶴姫様の脳裏にいま浮かんだ男じゃ」
と虎臥が返すと、鶴姫も誰のことを指しているか察したようで、
「あの方はよい人ですよ」
と、穏やかな表情が戻り、口許をほころばせた。
「調子のよい男ではあるの。じゃが、浅はかじゃ」
鶴姫はくつくつと笑った。
※※※
――ヘックショイッ!
「どうした? 風邪か?」
盛大にくしゃみをする新之助。
「いいや、そんなんじゃねぇが、なんだか急に鼻がむず痒くなってな」
と言って、鼻の下をすっと拭った。
「もう秋の風が舞っているから、きっとそのせいだろう」
と、牛太が言うと、
「そんなことより、こっからが思案だぜ」
と言って新之助は、道端の石に腰を下ろした。
「給主のもとへ向かうのではないのか?」
道を外れた新之助にむかって、牛太は道に立ったまま訊いた。なんの策も無かったが、急がなければならないことだけは事実。まずは給主のいる税所今富名へ急ごうとしていたが、
「百姓二人、ノコノコ出向いたところで門前払いがオチ。お目通りがかなわなけりゃあその先の話も続かねぇ」
と新之助が言うので、なにか策があるのかと思い、牛太も新之助のとなりに腰を下ろした。
「それもそうだな。どうする? また手土産でも用意するか?」
幸いなことに西津にいる。大概のものはここの市庭で手にいれることができる。
「下司に目通るのとは違うからなぁ。それ相応の物でなければ、かえって不評を買うことになりかねん」
貢ぎ物を受けておいて文句を言うなど理不尽と思うが、今は失敗が許されない。しかし何を持っていけばよいか、皆目見当がつかなかった。
「それでな、ちょっと思いついたことがあってな。太良荘へ行ってみようと思う」
と、なにを閃いたらしい新之助が、太良荘へ向かうと言い出した。
牛太の顔に、行ってなにがあるのかという疑問が浮かんだのをみてとると、
「太良荘は随分と遣り合ってるらしいな」
と付け加えた。
諍いはどこにでもあるものだが、訴訟にまで発展するとなれば話題になる。若狭の内では、太良荘の百姓らが、年貢米の免除を勝ち取ったというような話も聞こえていた。
「六波羅には日々、訴訟が持ち込まれる。あそこにいて訴訟の中身を聞いてっと、世の中の大勢が透けて見えてくる」
少々大袈裟な言い回しに牛太は、新之助劇場が開演したのだろうかと思いながら話を聞いた。
「あそこは名主らが巧く立ち回ってるようだ。中でも伊勢房、伊賀房という者がなかなかの曲者で、この者らが中心となって動いているらしい。領家と地頭の間で諍いがあるとみるや、のらりくらりで漁夫の利を得ている。その道に詳しい者があるなら、考えるより行って訊くのが早ぇ。百姓身分でお上と遣り合う術をよ」
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