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一.勃興
再会 ― 後編 ―
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「いやぁ、やっぱりそうだ。全身から溢れ出る威厳を遠目にも感じたッスよっ」
と言って男は、久しぶりの再会を喜んだ。
多烏浦での一件以来、無沙汰になっていたが、兄貴分の命を救った虎臥は、この男にとっても命の恩人と言ってよいのだろう。初めて山中で会った時とはまるで別人のようだ。
「息災のようじゃの。気配を消せておらぬとは、わらわもまだまだのようじゃ。名は何じゃったかの? 獣の区別はつくが、人の顔と名前はとんと頭に入ってこぬ」
こともなげにそれを訊けてしまえる虎臥を羨ましく思う。問われた男の方も、まったく気にしている様子がない。
「もう早いもんで半年も前のことッスからねぇ。仕方ねぇッスよ」
男は多烏で皆に呼ばれていたように、ケン次郎と呼んでくれと言って笑っている。本当に、初めて山中で遭遇した時とは大違いだ。
改めて互いに名を名乗ったあと、牛太は新之助を紹介した。前回は折り合わなかったが、多烏は商いの伝手を求めていた。京での商いに繋がる新之助は打って付けだろう。
「ところで皆さん、今日は仕入れッスか?」
「ええ、絹を求めに。それで市を回っていたら、西からの大船が入るらしいことを聞いたので様子を見に来たのですが、どうやらまだのようで」
牛太が経緯を話すと、ケン次郎は満面の笑みで答えた。
「なんだぁ、そういうことでしたか。そいつぁ、ウチの船ッスよ」
「ウチってのは、多烏の?」
「そうッス。多烏の大船『徳勝』ッス」
と、ケン次郎は誇らしげだ。
廻船でつかわれた船は浦の共有資産ではなく、個々人の所有で、大小の違いはあるだろうが、刀祢だけが所有していたわけでなく、浦の百姓のなかにも船代をもつ者もあったようだ。船名には、徳勝、王増、フクマサリなど『勝』『増』『福』のような好字をあてたり、さきに述べた百姓仮名の大夫、権守のような官職名をあてたりしていた。験担ぎなのだろうが、百姓層に於いても、そうした文字の意味を理解し、縁起を気にしていたということで興味深い。
西からの戻り船を多烏ではなく、本荘の西津に入れるということは、京への輸送の便を考えてのことだろう。それはつまり、京で売りたい品を積んできているということだ。偶然とは重なるもので、京にいるはずの新之助とここで偶然再開し、多烏の二人とも再開した。そしていま、宝船が浦に入ろうとしている。
「それでお二人もこちらへ来ていたんですか。まだ見えませんが、間もなく船は入るのでしょうか?」
「だといいんですがねぇ。今日はほら、風が凪いでるでしょう? もしかするとまだ数日掛かるかもしれねぇッスね」
重なった偶然から商機の追い風を感じていた牛太だったが、肝心の船を進める風は吹いていなかったようだ。
(そうそうすべてが上手く運ぶものではないか)
「自然が相手では仕方ないでしょう。なに、あと数日とわかっているなら気持ちは楽ですよ。新之助もまだ数日はこっちに留まるのだろう?」
「そのつもりだ。大船の荷を確かめないまま帰るわけにはいかねぇさ」
「そいつぁ有難ぇッス。きっと良い品を積んで帰ってきますからっ」
ケン次郎は自信を持って答えた。
「姫様はどうします? 先に戻りますか? 姫様?」
さきほどから無言の鶴姫にケン次郎が問うと、三度目の問いで漸く我に返ったようにケン次郎を見返した。ケン次郎や兄貴分の弥太郎大夫とは違い、無駄口をきくような人ではなかったが、他人の話を聞き漏らすようなこともしない人だったはずだ。
「どうかされましたか?」
以前と違う様子が牛太も気になり、鶴姫に訊ねてみてるが、返ってくる答えはどうにも歯切れが悪い。
「ケン次郎、我は先に戻ることにする。あとのことは任せる」
と、鶴姫はケン次郎に言ったが、考えた末の答えも、確信を持っているようには感じられない。
「以前会うた時もそうじゃったが、鶴姫様は一人で悩みを抱え過ぎる人のようじゃ」
なにか憂いがあるのは確かで、牛太にも当然それがわかった。だがそこに踏み込んでよいものか判断がつかず、相手の出方を窺っていたのだが、虎臥はお構いなしに切り込んでいく。
「富も悩みも、皆で分けた方が幸せになれると父上も母上も申しておった。話したところで我らになんとかできることではないかもしれぬが、場合によっては、あっという間に解決できてしまうことかもしれぬ。今日ここで我らが再び会うたのも、偶然ではないかもしれぬしの」
駆け引きなしに、一息に相手の懐深く飛び込んでいく。
牛太には虎臥のそういうところがすこし強引にも思えたが、鶴姫はそれによって案外すんなりと次第を語ってくれた。
「間もなく『徳勝』が着く。それがあってケン次郎には来てもらっていますが、我は別件でここへ来ています」
「別件というと?」
「西津荘給主のところへ、嘆願に参りました」
「春に来てもらった時に揉めてたのが、あれからずっと続いてるんスよ」
と、鶴姫の弁をケン次郎が補足した。
給主のもとへ嘆願に来るのだ、よい話でないことくらい察しがつく。
(あの件、まだ引きずっていたのか)
「それも日を追うごとに悪化している。多烏で網を立てれば汲部が網を断ち切り、汲部が網を立てれば、今度はそれを多烏の者が断ち切る」
あの日、弥太郎から始まった網切り合戦が続いているという。
あれからずっととなれば、刀祢の娘である鶴姫の心労は並々ならないものだろう。この女の性質を思えば、汲部の狼藉よりも、それに応戦しようとする多烏の者を統制できないでいる自身に対して憤りを感じているということもあるだろう。
「そんな状況では漁撈も捗らないでしょう」
と牛太が言うと、鶴姫はため息とともに頷いた。
「このままこの状態が続けば、疲弊した浦は、やがて廃れていくでしょう。そしてそれは汲部とて同じこと。この状況が続くことを望んでいないのは我らだけではないはずですが、もはや双方、自らの意志では止められない状態になっています」
(当事者であるが故に、か)
もはや利害ではなく、意地と意地のぶつかり合いなのだろう。
「それで給主のところへ嘆願に?」
「互いになにか起きれば、特に考えもせず反撃に出てしまう。当事者であるが故に、自らで事体を終息させることが困難な状況になっている。網地は永仁の和与によって既に決着済み。このことを改めてお上から下知があれば、それで直ちに決着するということはなくとも、現状の引くに引けない状況は変えられると考えています」
一時しのぎではあるだろうが、双方に引き際を与えるという点では有効だろう。傍から見れば、誰が見ても双方に不利益しかないことは分かる。そしてここへきて当事者もそれに気付いているのだろう。しかし当事者であるが故に、自ら矛を収めることができないでいる。ならば外に助けを求めようとするのは正しい判断だ。多くの者を率いる立場にある者なら尚更。
「給主はなんと?」
「突き返されているわけではない。が、だからと言って目を通して貰っているのかまでは分かりません」
と、鶴姫は顔を曇らせた。
できることが、根気よく待つことだけしかないというのは、なんとももどかしい。悪化の一途を辿っている浦のことを思えば、鶴姫の心中が穏やかでないのも当然だろう。
「先に多烏へ戻ると申しておったが、姫様は戻ってどうするのじゃ?」
「どうする、と問われるとな――」
虎臥の問いに自嘲気味に答える鶴姫の表情は、暗に無策であることをほのめかしていた。
「わらわも共に参ろう」
――!?
「そういうわけにはいきません」
突然の虎臥の申し出に、慌てて鶴姫が断りをいれる。
「なにを言い出すんだ。それこそトラが行って『どうする』だ」
とうぜん牛太も止めに入る。
「ケン次はここへ残るのであろう? ならば護衛が必要じゃろう?」
「我はそなたらのように山を越えて帰るわけではありません。船で帰るのです。心配は有難いですが、護衛は無用です」
鶴姫の言うとおりだ。そもそもケン次郎は護衛として来ているわけではないだろうに。
「ならば多烏に行って、ケン次の代わりに姫様を補佐しよう」
「そのようなことをさせるわけにはいきません。本当に、気持ちだけでよい」
迷惑とは思っていないだろう。とはいえ承諾できる申し出ではない。今度はなにを思ってこんなことを言い出したのか分からないが、暴走する虎臥を止めなければ、鶴姫に迷惑をかけることになってしまう。牛太はなんとしても虎臥を押しとどめなければならないと思った。
「補佐ってお前、何をするつもりだ? まさか弓で応戦する気ではないだろうな?」
「半分当たっておる。矢は射る。じゃが別に、戦に加勢しに行くわけではない。戦にならぬよう、加勢に行こうというのじゃ」
(またわけの分からぬことを……)
「当てぬように射てば問題ないとかいうことか? あの時とは既に状況が違う。トラが当てぬように射っても、なにかの間違いで当たってしまったらどうする? 問題は更に大きくなって収拾がつかなくなるのだぞ?」
あくまで最悪の事態だが、想定の範囲だ。
そうなってしまってからでは遅い。止めるなら今しかない。
「細心の注意をはらう。互いに近付くから衝突するのであろう? 近付けぬようにしておけば、遣り合おうにも遣り合えぬじゃろう」
ああ言えばこう言う。どうすれば大人しく言うことを聞いてくれるのかと、牛太は頭を悩ませた。
「そんな簡単な話ではないだろう……」
牛太が次の言葉を考えていると、事の成り行きを静観していた新之助が話に割って入ってきた。物の例えではなく、話し合っていた三人の輪の中心に割って入り、鶴姫の方に向き直った。
「話は聞かせてもらいました。気苦労、察するに余ります」
動きも口調も、普段の新之助のものではない。
芝居がかっているというか芝居そのもので、ただただ怪しい。
「ど、どうした? 新之助?」
「さっき食っておった物の中に、毒キノコでも入っておったのではないか?」
牛太と虎臥の言葉に対し、新之助はこちらを見ることもなく、軽く片手を上げて、訝しむふたりを制すると、鶴姫ただ一人に向けて話しを続ける。
「浦の行く末だけでなく、浦の民の一人ひとりにまで気遣いが及んでいる。権力のある立場にありながら、その職権を振りかざすことをしないお人柄にも感服致しました」
「いえ、権力など我には――」
「そのように謙遜されるところにも、鶴姫様の聡明さを感じます」
唐突に始まった新之助劇場をここまで観ていて察すること。要は新之助は鶴姫に気があるということだろう。残念ながら、鶴姫にその気があるようには見えないが。
「西津へは給主に嘆願に来られた、ということでしたが、それならば私も力になれるかもしれません」
「それは誠ですか?」
「お、おい新之助。安請け合いするものではないぞ」
鶴姫の気を引こうと、できもしないことを口にしているとしか思えない。状況が違えばただの笑えない冗談だが、いまの状況では笑えないだけでなく不謹慎だ。
「西津荘の給主といえばたしか、工藤右衛門入道杲暁様であったと記憶しています。杲暁様は若狭国守護代であり、得宗公文所奉行人の筆頭でもあります。私は京で商いをしますが、主人は六波羅の奉行人。実は今ここにいるのも、京で起きた不可解な騒動について検めるよう、密命を受けて参った次第」
新之助はまるで口上を述べるが如く、己の知識と立場をさらさらと語った。新之助劇場のはじまりである。
「なんと、そのような大役を」
と、鶴姫も上々の反応をみせた。あるいはそんな大層な者とは思っていなかったので、本当に、心から驚いたのかもしれない。
「無暗矢鱈に他言することでは無いので黙っていましたが、信用できる方々とお見受けしました。さきほどの嘆願の件、私も杲暁様に直接お目通りがかなう立場ではありませんが、それとなくお耳に入れることは可能です。そこでどうでしょう? 私も役目を負って若狭を訪れましたが、恥ずかしながらまだなにも掴めておりません。鶴姫様は浦の事情に明るい。ここは一つ、協力して互いの難題に立ち向かうというのは如何でしょうか?」
気を引きたいがための大言壮語と思って聞いていたが、まったくの偽りということもなさそうだ。密命を負って、というのは誇張が過ぎる気もするが、さきほど市庭で再会した際に聞いた内容と一致する。一連の話も筋が通っていて異論を挟む余地はない。
「そういうことでしたら、喜んで協力致しましょう」
と、なにより鶴姫がこの申し出を快諾した。新之助の下心の存在を無視すれば、この取引を否定する理由も見当たらない。
「それは心強い。では私も多烏へお供させて下さい。多烏で起きている騒動も、もしかすると私が探っている件に関係しているかもしれません」
「そ、それは構いませんが、多烏に来てしまっては、嘆願はどうなるでしょう?」
「心配には及びません。西津へは、大船の荷揚げに合わせて戻るようにします。西からの戻りということでしたから、唐物も多く積んでいることでしょう。世間の唐物への関心は高く、とりわけお上は熱心です。多烏の船に良い品があれば、給主への口添えの好機にもなるでしょう」
よくもまあ次から次へと言葉が出てくるものだ。
詭弁と断じることができないこの説得力はどこから出てくるのか。
「そこまでお考えでしたか。失礼なことを訊いてしまって申し訳ありません」
「浦のことを案ずるが故でしょう。私は気にしておりませんので、鶴姫様もどうかお気になさらず」
牛太の胸に釈然としない気持ちが残るのは新之助との付き合いが長いせいであって、異を唱えるような話ではない。鶴姫が承知しているのだから尚更だ。
「決まりのようじゃな。大船が着くまで、皆で多烏へ行こう」
静観していた虎臥が話をまとめにかかったが、そこは牛太がすかさず止めに入る。
「まぁ待て、鶴姫様はトラの護衛の件までは許しておらんだろ」
鶴姫が承知したのは新之助の提案であって、トラの護衛の話ではない。
「それは船で一人で帰るからじゃろ? 新之助も共に行くとなれば、護衛が必要になるじゃろうが」
「ハッハッハッ、おかしなことを申すなお虎。これまで数多の修羅場を潜り抜けてきた。そなたの助けなど無用だ」
暗に、新之助から鶴姫を護るためという虎臥に対し、新之助はそう笑い飛ばしたが、虎臥も笑ってそれを更に斬り返す。
「そなたこそ勘違いするでない。わらわは鶴姫様の護衛で参るのだ。新之助の身にどのような厄災が降り注ごうとも、わらわの知ったことではない」
まったくどうしようもない二人だが、成り行きを考えれば、共に多烏へ向かった方がよいかもしれないと、牛太は思った。
「ではご迷惑でなければ、皆でお供しても構わないでしょうか? 船を待つだけで他に予定もありません。まだ荷を見ていませんが、商いをさせてもらうことは間違いないでしょうから、刀祢に改めてご挨拶に伺うにもよい機会でしょう」
浦の状況を思えば、虎臥を連れて多烏へ行くのはあまり気がすすまないが、新之助がいることで、商いの話については絵空事ではない。『出直せ』と刀祢に言われたが、あれっきりになっていた。その意味では、よい機会を得たことになるのだろう。
「迷惑などあるはずもない。浦の恩人ですから。刀祢もきっとお喜びになる」
これには鶴姫も快諾だった。
「そういうことじゃ。観念せい、新之助」
虎臥は腕組みをして、勝ち誇った笑みを湛えて新之助を見下ろしている。対する新之助も笑顔は崩さずに保ってはいるが、その頬は引きつっていた。
「弓を取りに村へ戻りたいのじゃが、鶴姫様はすぐに発たれるじゃろうか?」
「戦に出向くわけではないのだから弓などいらんだろ」
今日は絹を仕入れて村へ戻るだけの予定だったので、幸いなことに、虎臥も弓を携えてはこなかった。持っていれば射ちたくもなるだろうが、無いものは射てないので、間違いの起こりようもない。
「念のためじゃ。用心するに越したことはないじゃろ? 市庭で良いものが見つかればよいが、大抵は、わらわには軽過ぎる」
念のための事態が起きてしまった時のために持っていて欲しくないのだが、虎臥にこの思いは伝わらないようだ。
「ケン次郎。どうかしましたか?」
鶴姫が市の方から戻ってきたケン次郎に声をかけた。
いつの間にか場を離れて、市庭の方へ行っていたようだ。
「へえ、市の方が騒がしいんで、ちっと物見してきたんスが、なんか揉めてるようで」
「諍いは自前で足りていますから、他所の諍いに首を突っ込むことは慎んで下さい」
ケン次郎への言葉は、鶴姫の本心だろう。
虎臥や新之助のように、なんの考えがあるのかは分からないが、積極的に他所の諍いに首を突っ込もうとする者の方がどうかしている。何事も起こらぬように細心の注意をはらって生きていても、望まない事態に陥ってしまうのが世の常だ。自らに降りかかった災いに対処するだけで皆、精一杯なのだ。
「もちろんッスよ。ただ見覚えのある連中だったんでつい」
とケン次郎が返すと、
「それは、まさか多烏の者ですか?」
と、問い返す鶴姫の眉間に、僅かにしわがよった。
「いやいや、そうじゃねぇッス。汲部に出入りしている連中だと思うんですがね。それで気になってあとを追ったんスよ」
と言って男は、久しぶりの再会を喜んだ。
多烏浦での一件以来、無沙汰になっていたが、兄貴分の命を救った虎臥は、この男にとっても命の恩人と言ってよいのだろう。初めて山中で会った時とはまるで別人のようだ。
「息災のようじゃの。気配を消せておらぬとは、わらわもまだまだのようじゃ。名は何じゃったかの? 獣の区別はつくが、人の顔と名前はとんと頭に入ってこぬ」
こともなげにそれを訊けてしまえる虎臥を羨ましく思う。問われた男の方も、まったく気にしている様子がない。
「もう早いもんで半年も前のことッスからねぇ。仕方ねぇッスよ」
男は多烏で皆に呼ばれていたように、ケン次郎と呼んでくれと言って笑っている。本当に、初めて山中で遭遇した時とは大違いだ。
改めて互いに名を名乗ったあと、牛太は新之助を紹介した。前回は折り合わなかったが、多烏は商いの伝手を求めていた。京での商いに繋がる新之助は打って付けだろう。
「ところで皆さん、今日は仕入れッスか?」
「ええ、絹を求めに。それで市を回っていたら、西からの大船が入るらしいことを聞いたので様子を見に来たのですが、どうやらまだのようで」
牛太が経緯を話すと、ケン次郎は満面の笑みで答えた。
「なんだぁ、そういうことでしたか。そいつぁ、ウチの船ッスよ」
「ウチってのは、多烏の?」
「そうッス。多烏の大船『徳勝』ッス」
と、ケン次郎は誇らしげだ。
廻船でつかわれた船は浦の共有資産ではなく、個々人の所有で、大小の違いはあるだろうが、刀祢だけが所有していたわけでなく、浦の百姓のなかにも船代をもつ者もあったようだ。船名には、徳勝、王増、フクマサリなど『勝』『増』『福』のような好字をあてたり、さきに述べた百姓仮名の大夫、権守のような官職名をあてたりしていた。験担ぎなのだろうが、百姓層に於いても、そうした文字の意味を理解し、縁起を気にしていたということで興味深い。
西からの戻り船を多烏ではなく、本荘の西津に入れるということは、京への輸送の便を考えてのことだろう。それはつまり、京で売りたい品を積んできているということだ。偶然とは重なるもので、京にいるはずの新之助とここで偶然再開し、多烏の二人とも再開した。そしていま、宝船が浦に入ろうとしている。
「それでお二人もこちらへ来ていたんですか。まだ見えませんが、間もなく船は入るのでしょうか?」
「だといいんですがねぇ。今日はほら、風が凪いでるでしょう? もしかするとまだ数日掛かるかもしれねぇッスね」
重なった偶然から商機の追い風を感じていた牛太だったが、肝心の船を進める風は吹いていなかったようだ。
(そうそうすべてが上手く運ぶものではないか)
「自然が相手では仕方ないでしょう。なに、あと数日とわかっているなら気持ちは楽ですよ。新之助もまだ数日はこっちに留まるのだろう?」
「そのつもりだ。大船の荷を確かめないまま帰るわけにはいかねぇさ」
「そいつぁ有難ぇッス。きっと良い品を積んで帰ってきますからっ」
ケン次郎は自信を持って答えた。
「姫様はどうします? 先に戻りますか? 姫様?」
さきほどから無言の鶴姫にケン次郎が問うと、三度目の問いで漸く我に返ったようにケン次郎を見返した。ケン次郎や兄貴分の弥太郎大夫とは違い、無駄口をきくような人ではなかったが、他人の話を聞き漏らすようなこともしない人だったはずだ。
「どうかされましたか?」
以前と違う様子が牛太も気になり、鶴姫に訊ねてみてるが、返ってくる答えはどうにも歯切れが悪い。
「ケン次郎、我は先に戻ることにする。あとのことは任せる」
と、鶴姫はケン次郎に言ったが、考えた末の答えも、確信を持っているようには感じられない。
「以前会うた時もそうじゃったが、鶴姫様は一人で悩みを抱え過ぎる人のようじゃ」
なにか憂いがあるのは確かで、牛太にも当然それがわかった。だがそこに踏み込んでよいものか判断がつかず、相手の出方を窺っていたのだが、虎臥はお構いなしに切り込んでいく。
「富も悩みも、皆で分けた方が幸せになれると父上も母上も申しておった。話したところで我らになんとかできることではないかもしれぬが、場合によっては、あっという間に解決できてしまうことかもしれぬ。今日ここで我らが再び会うたのも、偶然ではないかもしれぬしの」
駆け引きなしに、一息に相手の懐深く飛び込んでいく。
牛太には虎臥のそういうところがすこし強引にも思えたが、鶴姫はそれによって案外すんなりと次第を語ってくれた。
「間もなく『徳勝』が着く。それがあってケン次郎には来てもらっていますが、我は別件でここへ来ています」
「別件というと?」
「西津荘給主のところへ、嘆願に参りました」
「春に来てもらった時に揉めてたのが、あれからずっと続いてるんスよ」
と、鶴姫の弁をケン次郎が補足した。
給主のもとへ嘆願に来るのだ、よい話でないことくらい察しがつく。
(あの件、まだ引きずっていたのか)
「それも日を追うごとに悪化している。多烏で網を立てれば汲部が網を断ち切り、汲部が網を立てれば、今度はそれを多烏の者が断ち切る」
あの日、弥太郎から始まった網切り合戦が続いているという。
あれからずっととなれば、刀祢の娘である鶴姫の心労は並々ならないものだろう。この女の性質を思えば、汲部の狼藉よりも、それに応戦しようとする多烏の者を統制できないでいる自身に対して憤りを感じているということもあるだろう。
「そんな状況では漁撈も捗らないでしょう」
と牛太が言うと、鶴姫はため息とともに頷いた。
「このままこの状態が続けば、疲弊した浦は、やがて廃れていくでしょう。そしてそれは汲部とて同じこと。この状況が続くことを望んでいないのは我らだけではないはずですが、もはや双方、自らの意志では止められない状態になっています」
(当事者であるが故に、か)
もはや利害ではなく、意地と意地のぶつかり合いなのだろう。
「それで給主のところへ嘆願に?」
「互いになにか起きれば、特に考えもせず反撃に出てしまう。当事者であるが故に、自らで事体を終息させることが困難な状況になっている。網地は永仁の和与によって既に決着済み。このことを改めてお上から下知があれば、それで直ちに決着するということはなくとも、現状の引くに引けない状況は変えられると考えています」
一時しのぎではあるだろうが、双方に引き際を与えるという点では有効だろう。傍から見れば、誰が見ても双方に不利益しかないことは分かる。そしてここへきて当事者もそれに気付いているのだろう。しかし当事者であるが故に、自ら矛を収めることができないでいる。ならば外に助けを求めようとするのは正しい判断だ。多くの者を率いる立場にある者なら尚更。
「給主はなんと?」
「突き返されているわけではない。が、だからと言って目を通して貰っているのかまでは分かりません」
と、鶴姫は顔を曇らせた。
できることが、根気よく待つことだけしかないというのは、なんとももどかしい。悪化の一途を辿っている浦のことを思えば、鶴姫の心中が穏やかでないのも当然だろう。
「先に多烏へ戻ると申しておったが、姫様は戻ってどうするのじゃ?」
「どうする、と問われるとな――」
虎臥の問いに自嘲気味に答える鶴姫の表情は、暗に無策であることをほのめかしていた。
「わらわも共に参ろう」
――!?
「そういうわけにはいきません」
突然の虎臥の申し出に、慌てて鶴姫が断りをいれる。
「なにを言い出すんだ。それこそトラが行って『どうする』だ」
とうぜん牛太も止めに入る。
「ケン次はここへ残るのであろう? ならば護衛が必要じゃろう?」
「我はそなたらのように山を越えて帰るわけではありません。船で帰るのです。心配は有難いですが、護衛は無用です」
鶴姫の言うとおりだ。そもそもケン次郎は護衛として来ているわけではないだろうに。
「ならば多烏に行って、ケン次の代わりに姫様を補佐しよう」
「そのようなことをさせるわけにはいきません。本当に、気持ちだけでよい」
迷惑とは思っていないだろう。とはいえ承諾できる申し出ではない。今度はなにを思ってこんなことを言い出したのか分からないが、暴走する虎臥を止めなければ、鶴姫に迷惑をかけることになってしまう。牛太はなんとしても虎臥を押しとどめなければならないと思った。
「補佐ってお前、何をするつもりだ? まさか弓で応戦する気ではないだろうな?」
「半分当たっておる。矢は射る。じゃが別に、戦に加勢しに行くわけではない。戦にならぬよう、加勢に行こうというのじゃ」
(またわけの分からぬことを……)
「当てぬように射てば問題ないとかいうことか? あの時とは既に状況が違う。トラが当てぬように射っても、なにかの間違いで当たってしまったらどうする? 問題は更に大きくなって収拾がつかなくなるのだぞ?」
あくまで最悪の事態だが、想定の範囲だ。
そうなってしまってからでは遅い。止めるなら今しかない。
「細心の注意をはらう。互いに近付くから衝突するのであろう? 近付けぬようにしておけば、遣り合おうにも遣り合えぬじゃろう」
ああ言えばこう言う。どうすれば大人しく言うことを聞いてくれるのかと、牛太は頭を悩ませた。
「そんな簡単な話ではないだろう……」
牛太が次の言葉を考えていると、事の成り行きを静観していた新之助が話に割って入ってきた。物の例えではなく、話し合っていた三人の輪の中心に割って入り、鶴姫の方に向き直った。
「話は聞かせてもらいました。気苦労、察するに余ります」
動きも口調も、普段の新之助のものではない。
芝居がかっているというか芝居そのもので、ただただ怪しい。
「ど、どうした? 新之助?」
「さっき食っておった物の中に、毒キノコでも入っておったのではないか?」
牛太と虎臥の言葉に対し、新之助はこちらを見ることもなく、軽く片手を上げて、訝しむふたりを制すると、鶴姫ただ一人に向けて話しを続ける。
「浦の行く末だけでなく、浦の民の一人ひとりにまで気遣いが及んでいる。権力のある立場にありながら、その職権を振りかざすことをしないお人柄にも感服致しました」
「いえ、権力など我には――」
「そのように謙遜されるところにも、鶴姫様の聡明さを感じます」
唐突に始まった新之助劇場をここまで観ていて察すること。要は新之助は鶴姫に気があるということだろう。残念ながら、鶴姫にその気があるようには見えないが。
「西津へは給主に嘆願に来られた、ということでしたが、それならば私も力になれるかもしれません」
「それは誠ですか?」
「お、おい新之助。安請け合いするものではないぞ」
鶴姫の気を引こうと、できもしないことを口にしているとしか思えない。状況が違えばただの笑えない冗談だが、いまの状況では笑えないだけでなく不謹慎だ。
「西津荘の給主といえばたしか、工藤右衛門入道杲暁様であったと記憶しています。杲暁様は若狭国守護代であり、得宗公文所奉行人の筆頭でもあります。私は京で商いをしますが、主人は六波羅の奉行人。実は今ここにいるのも、京で起きた不可解な騒動について検めるよう、密命を受けて参った次第」
新之助はまるで口上を述べるが如く、己の知識と立場をさらさらと語った。新之助劇場のはじまりである。
「なんと、そのような大役を」
と、鶴姫も上々の反応をみせた。あるいはそんな大層な者とは思っていなかったので、本当に、心から驚いたのかもしれない。
「無暗矢鱈に他言することでは無いので黙っていましたが、信用できる方々とお見受けしました。さきほどの嘆願の件、私も杲暁様に直接お目通りがかなう立場ではありませんが、それとなくお耳に入れることは可能です。そこでどうでしょう? 私も役目を負って若狭を訪れましたが、恥ずかしながらまだなにも掴めておりません。鶴姫様は浦の事情に明るい。ここは一つ、協力して互いの難題に立ち向かうというのは如何でしょうか?」
気を引きたいがための大言壮語と思って聞いていたが、まったくの偽りということもなさそうだ。密命を負って、というのは誇張が過ぎる気もするが、さきほど市庭で再会した際に聞いた内容と一致する。一連の話も筋が通っていて異論を挟む余地はない。
「そういうことでしたら、喜んで協力致しましょう」
と、なにより鶴姫がこの申し出を快諾した。新之助の下心の存在を無視すれば、この取引を否定する理由も見当たらない。
「それは心強い。では私も多烏へお供させて下さい。多烏で起きている騒動も、もしかすると私が探っている件に関係しているかもしれません」
「そ、それは構いませんが、多烏に来てしまっては、嘆願はどうなるでしょう?」
「心配には及びません。西津へは、大船の荷揚げに合わせて戻るようにします。西からの戻りということでしたから、唐物も多く積んでいることでしょう。世間の唐物への関心は高く、とりわけお上は熱心です。多烏の船に良い品があれば、給主への口添えの好機にもなるでしょう」
よくもまあ次から次へと言葉が出てくるものだ。
詭弁と断じることができないこの説得力はどこから出てくるのか。
「そこまでお考えでしたか。失礼なことを訊いてしまって申し訳ありません」
「浦のことを案ずるが故でしょう。私は気にしておりませんので、鶴姫様もどうかお気になさらず」
牛太の胸に釈然としない気持ちが残るのは新之助との付き合いが長いせいであって、異を唱えるような話ではない。鶴姫が承知しているのだから尚更だ。
「決まりのようじゃな。大船が着くまで、皆で多烏へ行こう」
静観していた虎臥が話をまとめにかかったが、そこは牛太がすかさず止めに入る。
「まぁ待て、鶴姫様はトラの護衛の件までは許しておらんだろ」
鶴姫が承知したのは新之助の提案であって、トラの護衛の話ではない。
「それは船で一人で帰るからじゃろ? 新之助も共に行くとなれば、護衛が必要になるじゃろうが」
「ハッハッハッ、おかしなことを申すなお虎。これまで数多の修羅場を潜り抜けてきた。そなたの助けなど無用だ」
暗に、新之助から鶴姫を護るためという虎臥に対し、新之助はそう笑い飛ばしたが、虎臥も笑ってそれを更に斬り返す。
「そなたこそ勘違いするでない。わらわは鶴姫様の護衛で参るのだ。新之助の身にどのような厄災が降り注ごうとも、わらわの知ったことではない」
まったくどうしようもない二人だが、成り行きを考えれば、共に多烏へ向かった方がよいかもしれないと、牛太は思った。
「ではご迷惑でなければ、皆でお供しても構わないでしょうか? 船を待つだけで他に予定もありません。まだ荷を見ていませんが、商いをさせてもらうことは間違いないでしょうから、刀祢に改めてご挨拶に伺うにもよい機会でしょう」
浦の状況を思えば、虎臥を連れて多烏へ行くのはあまり気がすすまないが、新之助がいることで、商いの話については絵空事ではない。『出直せ』と刀祢に言われたが、あれっきりになっていた。その意味では、よい機会を得たことになるのだろう。
「迷惑などあるはずもない。浦の恩人ですから。刀祢もきっとお喜びになる」
これには鶴姫も快諾だった。
「そういうことじゃ。観念せい、新之助」
虎臥は腕組みをして、勝ち誇った笑みを湛えて新之助を見下ろしている。対する新之助も笑顔は崩さずに保ってはいるが、その頬は引きつっていた。
「弓を取りに村へ戻りたいのじゃが、鶴姫様はすぐに発たれるじゃろうか?」
「戦に出向くわけではないのだから弓などいらんだろ」
今日は絹を仕入れて村へ戻るだけの予定だったので、幸いなことに、虎臥も弓を携えてはこなかった。持っていれば射ちたくもなるだろうが、無いものは射てないので、間違いの起こりようもない。
「念のためじゃ。用心するに越したことはないじゃろ? 市庭で良いものが見つかればよいが、大抵は、わらわには軽過ぎる」
念のための事態が起きてしまった時のために持っていて欲しくないのだが、虎臥にこの思いは伝わらないようだ。
「ケン次郎。どうかしましたか?」
鶴姫が市の方から戻ってきたケン次郎に声をかけた。
いつの間にか場を離れて、市庭の方へ行っていたようだ。
「へえ、市の方が騒がしいんで、ちっと物見してきたんスが、なんか揉めてるようで」
「諍いは自前で足りていますから、他所の諍いに首を突っ込むことは慎んで下さい」
ケン次郎への言葉は、鶴姫の本心だろう。
虎臥や新之助のように、なんの考えがあるのかは分からないが、積極的に他所の諍いに首を突っ込もうとする者の方がどうかしている。何事も起こらぬように細心の注意をはらって生きていても、望まない事態に陥ってしまうのが世の常だ。自らに降りかかった災いに対処するだけで皆、精一杯なのだ。
「もちろんッスよ。ただ見覚えのある連中だったんでつい」
とケン次郎が返すと、
「それは、まさか多烏の者ですか?」
と、問い返す鶴姫の眉間に、僅かにしわがよった。
「いやいや、そうじゃねぇッス。汲部に出入りしている連中だと思うんですがね。それで気になってあとを追ったんスよ」
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