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一.勃興
虎の嫁入り ― 前編 ―
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(京をみてきたあとではすこし物足りなく感じるな)
牛太は市の賑わいを横目に、そんなふうに思った。
税所今富名にある小浜津は、陸と海の要衝にある。
西に若狭湾を望み、東には南川が流れていて、若狭湾へとそそぐ南川の源流は、遠く、丹波や近江との国境にある。
山々から湧いてでた幾筋もの沢が、名田の谷でひとつの大きな流れになり、谷をでたさきのわずかにある遠敷郡の平野部を思いのままに流れ、やがて海へとつながる。
郷境に位置する小浜には、市日でないにもかかわらず、日用品をもとめる人で賑わっていた。
鎌倉に幕府が興ってからすでに百年以上経つが、京が日本最大の人口を収容する大消費地であり続けていることにかわりはなかった。たったいま京から戻った足そのままでここにいる牛太の目には、見せ棚がならぶ京の賑わいがまだ色鮮やかに残っていた。見劣りを感じてしまうのはしかたがないことだろう。
とはいえこの時代の若狭国の小浜や越前国の敦賀は、大陸交易での表玄関だ。ありとあらゆる珍奇がここから陸に揚がり、上方へと運ばれていった。その盛況ぶりは大層なものであったにちがいない。
人の集まるところにはしぜんと銭も集まる。
この辺りには借上で財を成した人も多く、小百姓ながら、僧として熊野の上分物を運用して財を成した石見房もそのひとりで、こうした人たちを有徳人といった。
牛太はこの石見房という有徳人のもとへ向かっていた。
「瓜生の次郎大夫です。あがってもよろしいでしょうか?」
通りから一本小路に入ったところ。石見房の館のまえで来訪を告げた。
うし曳きの牛太。仮名を次郎大夫と称していた。
「おぉ、次郎か。どうした?」
館のうちから次郎をみとめると、あるじの石見房が声をかえした。
それを入室の許しと受け止め、牛太は一歩、なかへと踏み入った。
「京へ行く用事があったので、頼まれていた品を仕入れて参りました」
と、告げたが、石見房は合点のいかない顔をしている。
「抹茶を仕入れて参りました」
と、傍らによってそう告げると、漸く合点がいったようで、
「おぉっ、そうかそうか、忘れとったわい」
と言って膝を打った。
機会があればという話で受けた依頼で、それももう随分と前のことになる。すぐに思い至らないのもしかたがないことだが、仮に忘れていたとしても、この品をみせれば、石見房なら飛びつくにちがいないと牛太は確信していた。
「しかも、驚かないで下さい――」
囲炉裏端に座ったままこちらに向きなった石見房の前に、牛太は懐から取りだした、茶の入った竹筒を置いた。
「――栂尾茶です」
思考が停止してしまったのか、石見房の顔が面にすり替わったかのごとく、笑顔を貼りつけたまま動かなくなった。
「なっ!? まことかっ!」
と、時が動きだすのと同時に、石見房は驚嘆の声をあげた。
(驚くなと前置きをしてもこれには驚くだろう)
石見房の上々の反応に、牛太の胸のうちに、高揚がひろがっていくのを感じた。
「どうやって手に入れた?」
と、食い入るように石見房が問う。
「京に昔馴染みがあって、そいつは安賀荘の出ですが、いまは領家の労役で京にとどまっているそうで」
高揚感からついつい早口になってしまいそうになるのを堪え、牛太はつとめて冷静に、事の次第を話し始めた。
「安賀か。それで昔馴染みか」
平地のすくない若狭では、そのわずかな耕作可能地にひしめくようにして荘園があった。
小浜津に接する南川の東には、河口で並走しながら若狭湾にそそぐ北川が流れている。その北川を辿って内陸へすすんで行くと、海からもっとも遠い山裾に、牛太の住む瓜生荘があり、その手前が安賀荘だった。「――それで昔馴染みか」と、石見房が納得したのは、この地理に由来する。
「ふむ。で、そやつから茶を入手したのか?」
牛太は「左様で」と答えてわずかに頭をさげたが、気持ちが昂っているとはいえ、商いごとに聡い石見房は、それですぐに「ああ、そうか」とはならなかった。
「どうしてそれが栂尾茶だとわかる? 領家の労役で上京しおるような者が、どうやって茶を手にできる?」
と、鋭く切り返してきた。
「わたしも同じ疑問をもちました。売茶が出まわっている話を耳にしてはいましたが、京の市庭でも、取引されているのを見たことがありませんでしたから」
牛太の言葉に、当然だといわんばかりに石見房は頷いた。
「神人か、供御人か、いずれにしても、寺社か朝廷につながりのある者たちの間でのみ取引されておるのだろう」
表には出てこない流通網。そうした裏の流通であることを考えれば、そこで暗躍しているのは神人か供御人で間違いないだろう。
朝廷や幕府を凌駕するほどの強大なちからをもっていた寺社に隷属する神人は、その組織の末端にあるとはいえ、個人を縛るさまざまなわずらいから免れることができた点では、特権階級であった。
そしてその神人が、特権を利用して、寺社の利益のために動いているのは公然のことだった。朝廷に属した供御人も同じとみてよい。
「それで、そいつはどうやってこれを手に入れた?」
石見房はつづきを促した。
「領家方の雑用をしていると申しておりました。それが六波羅の奉行人だそうで、茶会や贈答品などで、とかく茶が入用になるということで。使いで方々の寺社に出入りしているという話でした」
六波羅探題は京に置かれたは幕府の出先機関で、鎌倉から遠い、西国統治の要であった。六波羅の奉行人の多くが、西国各地に所領を持ち、それは若狭でも例外ではなかった。
「なるほど。それでその出入りしている寺社から、茶を仕入れているというわけか」
合点がいったのか、石見房は頷いたが、事実はすこし異なる。
「いや、仕入れているというかまぁ、コレですね」
そう言って、牛太が指で鉤爪をつくって見せると、
「ほっ、六波羅の奉行人の荷から荷抜きするか。そりゃあ豪胆だ」
と、石見房は膝を打って愉快そうに笑った。
「上手くやっているから心配はないと申しておりましたが、露見するとすれば取引からだろうとも。流すさきにいくつかあてはあるらしいのですが、同郷の昔馴染みに流せるのなら、その方が安心だと」
京へ行ったのはこの商いのためではなかった。もちろん「機会があれば――」と、石見房との口約束があったので、茶の仕入れもあたまの片隅に置いてはいたが、あてがあったわけではない。
首尾よく当初の商いがかたづき、京の市を物見していたところで偶然再会し、さきの話へとつながった。
「そういうことであれば、品は信用してもよさそうじゃな」
たしかに出どころは明確だ。ゆえに品としては信用できる。
「となれば、これをこのさきも定期的に入手できるということだな?」
石見房のあたまの中は、すでに今後のことへと知恵をめぐらせているようだった。
「そういうことです。こちらに居るよりも楽に稼げると、労役と称して、銭が貯まるまでしばらくは京に留まるつもりだと申しておりましたから」
お上を利用してちゃっかり儲けようというのだから逞しい。
「よろしいっ! 買おう。いくらになる?」
石見房は、タンッと膝を打った。
「ありがとうございます。それでは駄賃も含めて、五〇〇文ほど頂ければ」
牛太も、合の手を入れるように、決めていた値を呼んだ。
「五百か……」
石見房は腕を組み、目を閉じると、小さく唸った。
よい調子できていたが、ここでピタリと流れが止まってしまった。
なにやら思案をはじめた石見房を前に、牛太は次の言葉を辛抱強く待った。
(さすがにとんとん拍子ではいかないか)
ここで、この時代に流通していた貨幣について補足しておくと、宋(中国)から輸入された一文銭のみで、その貨幣価値は、米や塩など、同時代の記録に値が記してあるものを現代の価格に換算してみると、当時の一文は現代の45円くらいになるらしい。
つまり五〇〇文は、45×500=22,500円ということになる。
鎌倉時代も後期にはいるとすでに国産の茶が流通してはいるが、現在のように手ごろな価格で気軽にたのしめる飲みものではなく、寺社を中心に、効果・効能を目的に飲むか、新興勢力として成り上がってきた武士らが嗜みに飲むといったもので、からだにいい嗜好品という位置づけだったのではないかと推測する。現代に置き換えて考えると、チョコレートやコーヒーがイメージに近い気がする。健康促進効果が期待できる嗜好品。産地やブランドによってかなり高価なものがある点でも似ているのではないかと思う。
茶産地のなかでも栂尾産は別格とされている。
この超ブランド品につけられた22,500円を妥当とするか否かというのが、いま二人のあいだに無言の駆け引きをさせていた。
(こちらからの言葉を待っているのだろうが、ここは根競べだ)
牛太は身じろぎひとつせず、無言で待っていた。
間がもたなくなってさきに声を発した方が負けと心得、じっと待つ。無言の重圧に耐える時間は、とても長く感じられた。
「今後のことを考えれば、もうすこし下げることができるのではないか?」
と、さきに口を開いたのは石見房の方だった。
「そもそも駄賃というが、この竹筒一本運ぶのに、米や塩を運ぶのと同じように駄賃を取るというのは納得がいかん」
と、理屈を語りだしたが、こうなれば勝負になる。
「たしかに。目方で考えれば、懐におさまる竹筒一本で、牛車に山と積んだ米塩と同じように駄賃をとるというのは納得がいかないでしょう。しかし距離で考えるとどうでしょう? 京からここまで歩けば、荷があろうが無かろうが腹も減るし喉も乾きます」
商いは、相手を問答の場に立たせたところで漸く始まる。それができなければ、そのさきの話は無い。
「ふむ、一理あるな」
(まずは一問、退けたか)
「では抹茶の値の根拠はなんだ? 栂尾茶といえば、たしかに滅多に手にはいる品ではない。だがさきほどの話では、お前の昔馴染みの某が、使いに出たさきで荷抜きして得たものであろう。となれば、仕入れ値はかかっておらぬことになる。いくら希少な品を危険を冒して手にいれたとはいえ、元手のかかっておらぬものに五〇〇文の値を付けるのは、些か業が深いのではないか?」
「たしかに。銭を払って荷を抜いたとは聞いておりませんから、あれが茶を仕入れるのに銭はかかっていないでしょう。しかしわたしは、やつに銭を払って茶を仕入れています。石見房様が取引する相手は銭を払って茶を仕入れたわたしであって、荷抜きで茶を手に入れたその者ではありません。仕入れ値に取り分を上乗せした値で売る。それは商いとして当然ではないでしょうか?」
「ほほっ、そうくるか」
石見房の口許が僅かにほころんだ。
「では最後に、商人の倫理について問う。この茶は荷抜きによって手にいれた盗品であることは明白。お前も常時は荷受けを生業としているわけだが、こうして当たり前のように荷抜きが行われているとなると信用ができぬゆえ、今後は荷を託すかどうか考え直す必要があるかもしれん。商いは信用で成り立っておる。盗品であることが明白である品を売ることについて、どう申し開きするか?」
(痛いところを突いてくる……)
「たしかに……。至極真っ当な論理です。まだまだ商人の真似事をしているに過ぎませんが、これを正当化してしまっては、今後、商いはできなくなるでしょう。信用を欠いてしまいますから。うちは田畑をもちません。このさきも商いで身を立てて行かなければなりませんから、その問いに対して、申し開きすることはできません」
ここは非を認めるしかない。その場しのぎの適当な言葉で繕えば、すべてを失うことになりかねない。
「至極真っ当な答えで安心した」
的確に痛いところを突いてくるあたり、さすがに小百姓から成り上がっただけのことはある。しかしこの問については、石見房もひとつ過ちを犯している。
「いえ、申し開きのしようがありませんから。ひとつこちらからも問いたいのですが、よろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「さきほど石見房様はこの茶を『買う』と申しました。では、盗品であることを承知のうえで、その品を買うことについて、石見房様はどのようにお考えでしょうか?」
(怒らせてしまっただろうか)
間の空いた空気に、そんなことが頭をよぎったところで、石見房は破顔して膝を何度も打って笑った。
ひととおり笑い終わったところで、石見房が目の前の竹筒を手に取った。
「次郎はここに顔を出すようになってどれくらい経つ?」
「今年が三年目でしょうか」
「歳はいくつになった?」
「数えで十六になりました」
「そうか。次郎は根が正直で真面目だ。覚えも早いし機転も利く。ただ弁が立つ子ではなかったが、立派になったものだ」
「……。有難う御座います」
決着がついたのか、それとも次の一手への布石なのか。唐突に持ち上げられたところで、それを真に受けて喜ぶこともできず、牛太は曖昧な笑顔で礼を述べるしかなかった。
「そう訝しむな。本心を申しただけのことだ」
石見房は手にした竹筒を、親指の腹で撫でている。
「さて、次郎の問いに答えてやらねばな。ワシがどう考えているかだが――」
と、居ずまいを正して石見房は語りはじめた。
「信用を欠いては商いは成り立たん。とはいえ、すべてに於いて清廉潔白である必要もなかろう。ワシはお前の話を聞いて、盗品であることを承知のうえで『買う』と言った。この茶の出処を話すなかで、盗品であることまで話す必要はなかったはずだ。それでもお前は包み隠さず話した。信用は互いの信頼から生まれる。ワシはこの茶が本物であると信用した。そして盗品であることを隠さずに話したお前のことも信用した。この茶が清廉潔白であるか否かは、ワシにとってはあまり問題ではない」
ここですこし間をおき、石見房が牛太に問いかけた。
「ひとつ訊ねる。たとえばこれがワシでなかったら、お前は盗品であることまで伝えたか?」
「いえ、伝えなかったでしょう」
と牛太が答えると、
「では何故、ワシにはそれを話した?」
と、重ねて問う。
「さきほどお話した通り、これが露見するとすれば取引からでしょう。やつはわたしを信用していたから、盗品であることを話した。しかし、理由はそれだけではないでしょう。おそらく盗品であるという事実の共有を図ったのだと思います。盗品であると承知のうえで取引したとなれば、それは明らかに同罪です。となればわたしはこのことをおいそれと他言することは無いでしょう。仮に話すとすれば、その相手は限られます。その時わたしがその相手に話す理由を、石見房様はなんと思われますでしょうか?」
表面上の商いの品は茶だけだが、それは目には見えない不都合な事実がまとわりついた品だった。いま、この不都合な事実とともに、この品を売ろうとしているのだ。
「一蓮托生。ワシも同罪というわけか」
「申し訳ありません」
秘密の共有が信頼関係を生む。
秘密を打ち明けるのは勇気のいることで、そもそも信用のおけない者が相手ではできないことだ。あるいは打ち明けたことによって信用を失うかもしれない。
それでも商いをするうえで、避けては通れない。
踏み込んだ話をせず、上辺だけで取り繕おうとすれば、相手も自分に対し、同じ様に応じるだろう。それでは到底、望んだ結果は得られない。
誰を相手に、何処まで踏み込むか。それを見極める勘は養ってきたつもりだ。
すでに築いた信頼関係があり、このさきも長い付き合いを望むが故のこと。共有した秘密が明るみに出たときに失う信用が大きいほど、秘密を共有する者どおしの結びつきは強くなる。決して、同罪にすることが目的ではない。
「よい」と、ひとこと声を発すると、石見房は話の向きをかえた。
「ところでそやつは上手くやっていると言っているそうだが、たとえ僅かでも、毎度々々荷抜きをされていれば、さすがに気付くのではないか?」
言葉の調子から、もはや話は次へと移ったようだった。清廉潔白であるかは問題ではないという、さきの言葉に偽りはないようだ。
「おそらく気がつかないのではないかと。茶をもらいに寺社へ赴くのは、やつひとりだと申しておりましたから。返答の書簡を持たされる時もあるそうですが、多少の読み書きはできるので、中をあらためて、数量の記載があれば手を出さないようにしているそうです」
領家方ではそいつが持って帰ってきた分がすべてであって、どれだけの量を貰ったのかまでは把握していないというようなことも言っていた。無論、本人が知らぬだけという可能性がないとはいえないが。
「ほほっ、書簡の中まで確かめるか」
石見房は、いよいよ面白いといったふうに笑った。
「あやういとみれば手を出さぬとは抜け目ない。大胆かつ慎重。単なる下男として使い走りにするには勿体ない奴だな」
褒められた行いではないはずだが、大胆かつ慎重というのは当たっているかもしれない。飄々としたなんとも捉えどころのない男であることは事実だった。
「京での暮らしはなにかと入用だと。労役のための生活費を自ら工面しているのであって、たとえ咎められたとしても、領家に叛く意図はないと突っ撥ねると豪語しているような輩です」
「それでもお前は、そやつを信用に足る者と捉えているのであろう?」
「もちろんです」
「ならばそれで十分だ。よしっ! 久しぶりに楽しませてもらった」
石見房は手にしていた竹筒を置くと、
「よろしい。五〇〇文で手を打とう」
と言って、拍手を打った。
「ありがとうございますっ!」
抑えていた感情が喜びとともに腹の底から吹き出した。
「ただし――」
次からはこうはいかんぞと、石見房は釘をさすことも忘れなかった。くわえて、今回はご祝儀だ、とも言った。
「あとその京にいるお前の昔馴染みに、銭で釣れる供僧がおらぬか探るように伝えるのだ。清廉潔白であるかどうかは問題ではないが、所詮は荷抜き。まとまった量を仕入れることはできん。ワシの飲用と思っておったが、まとまった量を得られる可能性があるとなれば、商いの道も考えたくなる性分でな」
(このさきの商いにつながると思えば安い買い物ということか)
「この件に関して必要となる銭については利子はとらん。銭が入用になったら申せ」
小商いだったはずの商いが、大商いに化けることになりそうだ。畏まって下げた頭の下で、口許が緩むのを抑えきれなかった。
牛太は市の賑わいを横目に、そんなふうに思った。
税所今富名にある小浜津は、陸と海の要衝にある。
西に若狭湾を望み、東には南川が流れていて、若狭湾へとそそぐ南川の源流は、遠く、丹波や近江との国境にある。
山々から湧いてでた幾筋もの沢が、名田の谷でひとつの大きな流れになり、谷をでたさきのわずかにある遠敷郡の平野部を思いのままに流れ、やがて海へとつながる。
郷境に位置する小浜には、市日でないにもかかわらず、日用品をもとめる人で賑わっていた。
鎌倉に幕府が興ってからすでに百年以上経つが、京が日本最大の人口を収容する大消費地であり続けていることにかわりはなかった。たったいま京から戻った足そのままでここにいる牛太の目には、見せ棚がならぶ京の賑わいがまだ色鮮やかに残っていた。見劣りを感じてしまうのはしかたがないことだろう。
とはいえこの時代の若狭国の小浜や越前国の敦賀は、大陸交易での表玄関だ。ありとあらゆる珍奇がここから陸に揚がり、上方へと運ばれていった。その盛況ぶりは大層なものであったにちがいない。
人の集まるところにはしぜんと銭も集まる。
この辺りには借上で財を成した人も多く、小百姓ながら、僧として熊野の上分物を運用して財を成した石見房もそのひとりで、こうした人たちを有徳人といった。
牛太はこの石見房という有徳人のもとへ向かっていた。
「瓜生の次郎大夫です。あがってもよろしいでしょうか?」
通りから一本小路に入ったところ。石見房の館のまえで来訪を告げた。
うし曳きの牛太。仮名を次郎大夫と称していた。
「おぉ、次郎か。どうした?」
館のうちから次郎をみとめると、あるじの石見房が声をかえした。
それを入室の許しと受け止め、牛太は一歩、なかへと踏み入った。
「京へ行く用事があったので、頼まれていた品を仕入れて参りました」
と、告げたが、石見房は合点のいかない顔をしている。
「抹茶を仕入れて参りました」
と、傍らによってそう告げると、漸く合点がいったようで、
「おぉっ、そうかそうか、忘れとったわい」
と言って膝を打った。
機会があればという話で受けた依頼で、それももう随分と前のことになる。すぐに思い至らないのもしかたがないことだが、仮に忘れていたとしても、この品をみせれば、石見房なら飛びつくにちがいないと牛太は確信していた。
「しかも、驚かないで下さい――」
囲炉裏端に座ったままこちらに向きなった石見房の前に、牛太は懐から取りだした、茶の入った竹筒を置いた。
「――栂尾茶です」
思考が停止してしまったのか、石見房の顔が面にすり替わったかのごとく、笑顔を貼りつけたまま動かなくなった。
「なっ!? まことかっ!」
と、時が動きだすのと同時に、石見房は驚嘆の声をあげた。
(驚くなと前置きをしてもこれには驚くだろう)
石見房の上々の反応に、牛太の胸のうちに、高揚がひろがっていくのを感じた。
「どうやって手に入れた?」
と、食い入るように石見房が問う。
「京に昔馴染みがあって、そいつは安賀荘の出ですが、いまは領家の労役で京にとどまっているそうで」
高揚感からついつい早口になってしまいそうになるのを堪え、牛太はつとめて冷静に、事の次第を話し始めた。
「安賀か。それで昔馴染みか」
平地のすくない若狭では、そのわずかな耕作可能地にひしめくようにして荘園があった。
小浜津に接する南川の東には、河口で並走しながら若狭湾にそそぐ北川が流れている。その北川を辿って内陸へすすんで行くと、海からもっとも遠い山裾に、牛太の住む瓜生荘があり、その手前が安賀荘だった。「――それで昔馴染みか」と、石見房が納得したのは、この地理に由来する。
「ふむ。で、そやつから茶を入手したのか?」
牛太は「左様で」と答えてわずかに頭をさげたが、気持ちが昂っているとはいえ、商いごとに聡い石見房は、それですぐに「ああ、そうか」とはならなかった。
「どうしてそれが栂尾茶だとわかる? 領家の労役で上京しおるような者が、どうやって茶を手にできる?」
と、鋭く切り返してきた。
「わたしも同じ疑問をもちました。売茶が出まわっている話を耳にしてはいましたが、京の市庭でも、取引されているのを見たことがありませんでしたから」
牛太の言葉に、当然だといわんばかりに石見房は頷いた。
「神人か、供御人か、いずれにしても、寺社か朝廷につながりのある者たちの間でのみ取引されておるのだろう」
表には出てこない流通網。そうした裏の流通であることを考えれば、そこで暗躍しているのは神人か供御人で間違いないだろう。
朝廷や幕府を凌駕するほどの強大なちからをもっていた寺社に隷属する神人は、その組織の末端にあるとはいえ、個人を縛るさまざまなわずらいから免れることができた点では、特権階級であった。
そしてその神人が、特権を利用して、寺社の利益のために動いているのは公然のことだった。朝廷に属した供御人も同じとみてよい。
「それで、そいつはどうやってこれを手に入れた?」
石見房はつづきを促した。
「領家方の雑用をしていると申しておりました。それが六波羅の奉行人だそうで、茶会や贈答品などで、とかく茶が入用になるということで。使いで方々の寺社に出入りしているという話でした」
六波羅探題は京に置かれたは幕府の出先機関で、鎌倉から遠い、西国統治の要であった。六波羅の奉行人の多くが、西国各地に所領を持ち、それは若狭でも例外ではなかった。
「なるほど。それでその出入りしている寺社から、茶を仕入れているというわけか」
合点がいったのか、石見房は頷いたが、事実はすこし異なる。
「いや、仕入れているというかまぁ、コレですね」
そう言って、牛太が指で鉤爪をつくって見せると、
「ほっ、六波羅の奉行人の荷から荷抜きするか。そりゃあ豪胆だ」
と、石見房は膝を打って愉快そうに笑った。
「上手くやっているから心配はないと申しておりましたが、露見するとすれば取引からだろうとも。流すさきにいくつかあてはあるらしいのですが、同郷の昔馴染みに流せるのなら、その方が安心だと」
京へ行ったのはこの商いのためではなかった。もちろん「機会があれば――」と、石見房との口約束があったので、茶の仕入れもあたまの片隅に置いてはいたが、あてがあったわけではない。
首尾よく当初の商いがかたづき、京の市を物見していたところで偶然再会し、さきの話へとつながった。
「そういうことであれば、品は信用してもよさそうじゃな」
たしかに出どころは明確だ。ゆえに品としては信用できる。
「となれば、これをこのさきも定期的に入手できるということだな?」
石見房のあたまの中は、すでに今後のことへと知恵をめぐらせているようだった。
「そういうことです。こちらに居るよりも楽に稼げると、労役と称して、銭が貯まるまでしばらくは京に留まるつもりだと申しておりましたから」
お上を利用してちゃっかり儲けようというのだから逞しい。
「よろしいっ! 買おう。いくらになる?」
石見房は、タンッと膝を打った。
「ありがとうございます。それでは駄賃も含めて、五〇〇文ほど頂ければ」
牛太も、合の手を入れるように、決めていた値を呼んだ。
「五百か……」
石見房は腕を組み、目を閉じると、小さく唸った。
よい調子できていたが、ここでピタリと流れが止まってしまった。
なにやら思案をはじめた石見房を前に、牛太は次の言葉を辛抱強く待った。
(さすがにとんとん拍子ではいかないか)
ここで、この時代に流通していた貨幣について補足しておくと、宋(中国)から輸入された一文銭のみで、その貨幣価値は、米や塩など、同時代の記録に値が記してあるものを現代の価格に換算してみると、当時の一文は現代の45円くらいになるらしい。
つまり五〇〇文は、45×500=22,500円ということになる。
鎌倉時代も後期にはいるとすでに国産の茶が流通してはいるが、現在のように手ごろな価格で気軽にたのしめる飲みものではなく、寺社を中心に、効果・効能を目的に飲むか、新興勢力として成り上がってきた武士らが嗜みに飲むといったもので、からだにいい嗜好品という位置づけだったのではないかと推測する。現代に置き換えて考えると、チョコレートやコーヒーがイメージに近い気がする。健康促進効果が期待できる嗜好品。産地やブランドによってかなり高価なものがある点でも似ているのではないかと思う。
茶産地のなかでも栂尾産は別格とされている。
この超ブランド品につけられた22,500円を妥当とするか否かというのが、いま二人のあいだに無言の駆け引きをさせていた。
(こちらからの言葉を待っているのだろうが、ここは根競べだ)
牛太は身じろぎひとつせず、無言で待っていた。
間がもたなくなってさきに声を発した方が負けと心得、じっと待つ。無言の重圧に耐える時間は、とても長く感じられた。
「今後のことを考えれば、もうすこし下げることができるのではないか?」
と、さきに口を開いたのは石見房の方だった。
「そもそも駄賃というが、この竹筒一本運ぶのに、米や塩を運ぶのと同じように駄賃を取るというのは納得がいかん」
と、理屈を語りだしたが、こうなれば勝負になる。
「たしかに。目方で考えれば、懐におさまる竹筒一本で、牛車に山と積んだ米塩と同じように駄賃をとるというのは納得がいかないでしょう。しかし距離で考えるとどうでしょう? 京からここまで歩けば、荷があろうが無かろうが腹も減るし喉も乾きます」
商いは、相手を問答の場に立たせたところで漸く始まる。それができなければ、そのさきの話は無い。
「ふむ、一理あるな」
(まずは一問、退けたか)
「では抹茶の値の根拠はなんだ? 栂尾茶といえば、たしかに滅多に手にはいる品ではない。だがさきほどの話では、お前の昔馴染みの某が、使いに出たさきで荷抜きして得たものであろう。となれば、仕入れ値はかかっておらぬことになる。いくら希少な品を危険を冒して手にいれたとはいえ、元手のかかっておらぬものに五〇〇文の値を付けるのは、些か業が深いのではないか?」
「たしかに。銭を払って荷を抜いたとは聞いておりませんから、あれが茶を仕入れるのに銭はかかっていないでしょう。しかしわたしは、やつに銭を払って茶を仕入れています。石見房様が取引する相手は銭を払って茶を仕入れたわたしであって、荷抜きで茶を手に入れたその者ではありません。仕入れ値に取り分を上乗せした値で売る。それは商いとして当然ではないでしょうか?」
「ほほっ、そうくるか」
石見房の口許が僅かにほころんだ。
「では最後に、商人の倫理について問う。この茶は荷抜きによって手にいれた盗品であることは明白。お前も常時は荷受けを生業としているわけだが、こうして当たり前のように荷抜きが行われているとなると信用ができぬゆえ、今後は荷を託すかどうか考え直す必要があるかもしれん。商いは信用で成り立っておる。盗品であることが明白である品を売ることについて、どう申し開きするか?」
(痛いところを突いてくる……)
「たしかに……。至極真っ当な論理です。まだまだ商人の真似事をしているに過ぎませんが、これを正当化してしまっては、今後、商いはできなくなるでしょう。信用を欠いてしまいますから。うちは田畑をもちません。このさきも商いで身を立てて行かなければなりませんから、その問いに対して、申し開きすることはできません」
ここは非を認めるしかない。その場しのぎの適当な言葉で繕えば、すべてを失うことになりかねない。
「至極真っ当な答えで安心した」
的確に痛いところを突いてくるあたり、さすがに小百姓から成り上がっただけのことはある。しかしこの問については、石見房もひとつ過ちを犯している。
「いえ、申し開きのしようがありませんから。ひとつこちらからも問いたいのですが、よろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「さきほど石見房様はこの茶を『買う』と申しました。では、盗品であることを承知のうえで、その品を買うことについて、石見房様はどのようにお考えでしょうか?」
(怒らせてしまっただろうか)
間の空いた空気に、そんなことが頭をよぎったところで、石見房は破顔して膝を何度も打って笑った。
ひととおり笑い終わったところで、石見房が目の前の竹筒を手に取った。
「次郎はここに顔を出すようになってどれくらい経つ?」
「今年が三年目でしょうか」
「歳はいくつになった?」
「数えで十六になりました」
「そうか。次郎は根が正直で真面目だ。覚えも早いし機転も利く。ただ弁が立つ子ではなかったが、立派になったものだ」
「……。有難う御座います」
決着がついたのか、それとも次の一手への布石なのか。唐突に持ち上げられたところで、それを真に受けて喜ぶこともできず、牛太は曖昧な笑顔で礼を述べるしかなかった。
「そう訝しむな。本心を申しただけのことだ」
石見房は手にした竹筒を、親指の腹で撫でている。
「さて、次郎の問いに答えてやらねばな。ワシがどう考えているかだが――」
と、居ずまいを正して石見房は語りはじめた。
「信用を欠いては商いは成り立たん。とはいえ、すべてに於いて清廉潔白である必要もなかろう。ワシはお前の話を聞いて、盗品であることを承知のうえで『買う』と言った。この茶の出処を話すなかで、盗品であることまで話す必要はなかったはずだ。それでもお前は包み隠さず話した。信用は互いの信頼から生まれる。ワシはこの茶が本物であると信用した。そして盗品であることを隠さずに話したお前のことも信用した。この茶が清廉潔白であるか否かは、ワシにとってはあまり問題ではない」
ここですこし間をおき、石見房が牛太に問いかけた。
「ひとつ訊ねる。たとえばこれがワシでなかったら、お前は盗品であることまで伝えたか?」
「いえ、伝えなかったでしょう」
と牛太が答えると、
「では何故、ワシにはそれを話した?」
と、重ねて問う。
「さきほどお話した通り、これが露見するとすれば取引からでしょう。やつはわたしを信用していたから、盗品であることを話した。しかし、理由はそれだけではないでしょう。おそらく盗品であるという事実の共有を図ったのだと思います。盗品であると承知のうえで取引したとなれば、それは明らかに同罪です。となればわたしはこのことをおいそれと他言することは無いでしょう。仮に話すとすれば、その相手は限られます。その時わたしがその相手に話す理由を、石見房様はなんと思われますでしょうか?」
表面上の商いの品は茶だけだが、それは目には見えない不都合な事実がまとわりついた品だった。いま、この不都合な事実とともに、この品を売ろうとしているのだ。
「一蓮托生。ワシも同罪というわけか」
「申し訳ありません」
秘密の共有が信頼関係を生む。
秘密を打ち明けるのは勇気のいることで、そもそも信用のおけない者が相手ではできないことだ。あるいは打ち明けたことによって信用を失うかもしれない。
それでも商いをするうえで、避けては通れない。
踏み込んだ話をせず、上辺だけで取り繕おうとすれば、相手も自分に対し、同じ様に応じるだろう。それでは到底、望んだ結果は得られない。
誰を相手に、何処まで踏み込むか。それを見極める勘は養ってきたつもりだ。
すでに築いた信頼関係があり、このさきも長い付き合いを望むが故のこと。共有した秘密が明るみに出たときに失う信用が大きいほど、秘密を共有する者どおしの結びつきは強くなる。決して、同罪にすることが目的ではない。
「よい」と、ひとこと声を発すると、石見房は話の向きをかえた。
「ところでそやつは上手くやっていると言っているそうだが、たとえ僅かでも、毎度々々荷抜きをされていれば、さすがに気付くのではないか?」
言葉の調子から、もはや話は次へと移ったようだった。清廉潔白であるかは問題ではないという、さきの言葉に偽りはないようだ。
「おそらく気がつかないのではないかと。茶をもらいに寺社へ赴くのは、やつひとりだと申しておりましたから。返答の書簡を持たされる時もあるそうですが、多少の読み書きはできるので、中をあらためて、数量の記載があれば手を出さないようにしているそうです」
領家方ではそいつが持って帰ってきた分がすべてであって、どれだけの量を貰ったのかまでは把握していないというようなことも言っていた。無論、本人が知らぬだけという可能性がないとはいえないが。
「ほほっ、書簡の中まで確かめるか」
石見房は、いよいよ面白いといったふうに笑った。
「あやういとみれば手を出さぬとは抜け目ない。大胆かつ慎重。単なる下男として使い走りにするには勿体ない奴だな」
褒められた行いではないはずだが、大胆かつ慎重というのは当たっているかもしれない。飄々としたなんとも捉えどころのない男であることは事実だった。
「京での暮らしはなにかと入用だと。労役のための生活費を自ら工面しているのであって、たとえ咎められたとしても、領家に叛く意図はないと突っ撥ねると豪語しているような輩です」
「それでもお前は、そやつを信用に足る者と捉えているのであろう?」
「もちろんです」
「ならばそれで十分だ。よしっ! 久しぶりに楽しませてもらった」
石見房は手にしていた竹筒を置くと、
「よろしい。五〇〇文で手を打とう」
と言って、拍手を打った。
「ありがとうございますっ!」
抑えていた感情が喜びとともに腹の底から吹き出した。
「ただし――」
次からはこうはいかんぞと、石見房は釘をさすことも忘れなかった。くわえて、今回はご祝儀だ、とも言った。
「あとその京にいるお前の昔馴染みに、銭で釣れる供僧がおらぬか探るように伝えるのだ。清廉潔白であるかどうかは問題ではないが、所詮は荷抜き。まとまった量を仕入れることはできん。ワシの飲用と思っておったが、まとまった量を得られる可能性があるとなれば、商いの道も考えたくなる性分でな」
(このさきの商いにつながると思えば安い買い物ということか)
「この件に関して必要となる銭については利子はとらん。銭が入用になったら申せ」
小商いだったはずの商いが、大商いに化けることになりそうだ。畏まって下げた頭の下で、口許が緩むのを抑えきれなかった。
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