悪の華

佐久間 要

文字の大きさ
上 下
3 / 9

第三話

しおりを挟む
時が一刻、一刻と過ぎ去っていく中で愛とゆうとはまるで、今まで会っていない時間を埋めるかの様に喋り合い、求め合った。二人は今までにない感覚に、麻痺をしていたのだ。客間で話をしていると、急にドアが開いた。



「ゆうと」



ゆうとはその声に対して、愛といる時だけは酷い嫌悪感を感じてしまった。



「どうしたんだ。ゆき」



ゆうとの放った声は酷く冷たく、愛と接している時とは異なり過ぎていて、愛はほくそ笑んだ。



(ふふふ...順調だわね...)



愛はそう思った後、ゆきの方に視線が行った。
いや、視線を合わされたのだ。
愛とゆきの視線が交わり、無言が続く。



(これはだめだ。自分がばれる)



愛は直感的にそう感じていた。
なぜそう感じるのか。それは愛が’’へび’’だからだ。聖書に出てくるサタンの化身。そう、要するに悪魔なのだ。アダムとイブに身を唆したのもへび。ゆうとは誘いに乗ってしまった。

つまり、ゆうとは実を知らぬ間に食べてしまった。
ゆうとに’’良心’’が残っている限り、自分からは逃れられないだろうと愛は踏んでいた。
だが、ゆきの視線は涼しい程に痛く、刺々しい。
どうして刺々しいのか。
考える間もなく、ゆきは無言のままゆうとに近づいた。



「な、なんだよ」



ゆうとが放った声は戸惑いが隠せていなかった。
ゆうとはハッと気づき、愛を守る様な’’しぐさ’’をした。



「こいつには手を出すな」



そう言ったゆうとは清々しく、かっこよかった。
ゆきはそんな事を言わせる愛に嫉妬をした。



(俺の方がゆうとを好きなのに)



その感情が顔に出ていたのか、愛はゆきの方を見てくすっ、と笑った。その笑い方はあまりにも優雅で、残酷だった。ゆきは嫉妬で、怒りで、頭がどうにかなりそうだったが一旦冷静になろうと深呼吸をして、こう言った。



「俺より、その蛇女の方が好きなんだな。分かった。じゃあな」



愛はゆきが言った’’蛇女’’という単語に反応した。
逆にゆうとは魔法にかかったみたいに愛を守る仕草をしたまま、動かない。見兼ねたゆきはくるっと二人に背を向け、部屋を出ていった。









❀7/15 セリフが読みにくいと感じたので、セリフと文との間に空白を入れました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!

組長と俺の話

性癖詰め込みおばけ
BL
その名の通り、組長と主人公の話 え、主人公のキャラ変が激しい?誤字がある? ( ᵒ̴̶̷᷄꒳ᵒ̴̶̷᷅ )それはホントにごめんなさい 1日1話かけたらいいな〜(他人事) 面白かったら、是非コメントをお願いします!

モルモットの生活

麒麟
BL
ある施設でモルモットとして飼われている僕。 日々あらゆる実験が行われている僕の生活の話です。 痛い実験から気持ち良くなる実験、いろんな実験をしています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

処理中です...