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第2話
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「玉山さん、ありがとうございました!」
完売しました、と書かれた紙を貼った机の前で、弘樹は頭を下げた。什器の搬出も済ませ、コスプレでの撮影も終えて化粧も落とし男に戻った弘樹はスッキリした顔をしていた。
「2回目だったし、売り子がいなくても大丈夫かなぁって甘く見てました。自分が行列を体験するなんて全く思わなくて」
「みひろさん、可愛いからどんどん人気出ますね」
「そんな! でも、本当に助かりました」
コスプレエリアで去年は味わえなかった、大きな囲み撮影も経験して充実した一日になったと、弘樹は達成感に溢れていた。
「そうだ玉山さん、もしよろしければ、お礼をさせて下さい」
「お礼?」
「はい! 今日スペースを回せたのもコスプレエリアで囲みが出来たのも、玉山さんのおかげですし。それに、去年のお礼もしてません。あの時に声を掛けて下さって撮影して頂いてなければ、俺の写真がバズっても無かったし、こんなに人が来ることも無かったし……」
俯き加減にモジモジとはにかむ弘樹に、玉山は出会いの日を思い出す。今日のように暑かった日。ベンチに座り一人で自撮りしながら寂しそうに清涼飲料水を飲んでいた弘樹に、どうして声を掛けたのか。女だと思ったのに、男だと言われても気にならなかった。ただ、放っておいたら消えてしまいそうだったのだ。撮った写真をSNSに上げて、もしトレンドにでも乗れば、自分もみひろのコスプレカメラマンとして更に有名になれるだろうという気持ちもあった。
――独占欲、だったのかもしれない。
「みひろさんが、そう言うなら……僕で良ければ」
「玉山さんだから、ですよ」
「……そんなに僕は良い人じゃないです」
「そうですか?」
疑う気持ちが全くない、澄んだ瞳を真っ直ぐ向けられて、玉山は思わず苦笑した。
「そう、だと思いますけど」
「ふふっ。でも、玉山さんは大丈夫な気がします」
「じゃあ……お願いしてもいいですか?」
「はい! 俺に出来ることなら何でもします」
別の独占欲がフツフツと湧き上がる。
「では……今度、コスプレ専門の即売会ありましたよね? 写真集とかDVDとかチェキとか売る……」
「はい、もちろん出ますよ」
「それの新作、僕に撮らせて頂けますか?」
「え……!?」
寝耳に水だった。確かに新作DVDは予定していたが、まだ衣装も内容も決まっていない。紙の写真集も出すか分からない。まさかの提案だった。
「あのイベント、二次創作はダメでしたよね? こちらで後ほど、作品のテーマと衣装のリストを載せた企画書をメールするので、考えておいて下さい。もちろん、強要はしません」
熱く語る玉山に、NOとは言えなかった。勢いに飲まれ、弘樹は無言で頷いた。
完売しました、と書かれた紙を貼った机の前で、弘樹は頭を下げた。什器の搬出も済ませ、コスプレでの撮影も終えて化粧も落とし男に戻った弘樹はスッキリした顔をしていた。
「2回目だったし、売り子がいなくても大丈夫かなぁって甘く見てました。自分が行列を体験するなんて全く思わなくて」
「みひろさん、可愛いからどんどん人気出ますね」
「そんな! でも、本当に助かりました」
コスプレエリアで去年は味わえなかった、大きな囲み撮影も経験して充実した一日になったと、弘樹は達成感に溢れていた。
「そうだ玉山さん、もしよろしければ、お礼をさせて下さい」
「お礼?」
「はい! 今日スペースを回せたのもコスプレエリアで囲みが出来たのも、玉山さんのおかげですし。それに、去年のお礼もしてません。あの時に声を掛けて下さって撮影して頂いてなければ、俺の写真がバズっても無かったし、こんなに人が来ることも無かったし……」
俯き加減にモジモジとはにかむ弘樹に、玉山は出会いの日を思い出す。今日のように暑かった日。ベンチに座り一人で自撮りしながら寂しそうに清涼飲料水を飲んでいた弘樹に、どうして声を掛けたのか。女だと思ったのに、男だと言われても気にならなかった。ただ、放っておいたら消えてしまいそうだったのだ。撮った写真をSNSに上げて、もしトレンドにでも乗れば、自分もみひろのコスプレカメラマンとして更に有名になれるだろうという気持ちもあった。
――独占欲、だったのかもしれない。
「みひろさんが、そう言うなら……僕で良ければ」
「玉山さんだから、ですよ」
「……そんなに僕は良い人じゃないです」
「そうですか?」
疑う気持ちが全くない、澄んだ瞳を真っ直ぐ向けられて、玉山は思わず苦笑した。
「そう、だと思いますけど」
「ふふっ。でも、玉山さんは大丈夫な気がします」
「じゃあ……お願いしてもいいですか?」
「はい! 俺に出来ることなら何でもします」
別の独占欲がフツフツと湧き上がる。
「では……今度、コスプレ専門の即売会ありましたよね? 写真集とかDVDとかチェキとか売る……」
「はい、もちろん出ますよ」
「それの新作、僕に撮らせて頂けますか?」
「え……!?」
寝耳に水だった。確かに新作DVDは予定していたが、まだ衣装も内容も決まっていない。紙の写真集も出すか分からない。まさかの提案だった。
「あのイベント、二次創作はダメでしたよね? こちらで後ほど、作品のテーマと衣装のリストを載せた企画書をメールするので、考えておいて下さい。もちろん、強要はしません」
熱く語る玉山に、NOとは言えなかった。勢いに飲まれ、弘樹は無言で頷いた。
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