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不覚にもときめいてしまいました

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「思ったんだけど」
「んー?」
「なんで、あたしに話しかけたのさ」

 思い切って聞いてみたら、メンチカツバーガーにかぶりつく動きが止まった。目が泳いでる。怪しい。

「誰かに罰ゲームかなんかでやらされた? クラスメイトも担任も、名前も顔もまだ覚えてないけど、陰口言った人なら分かるし、」
「あー、そうじゃなくて」

 食べる手を止めて、彼は姿勢を正した。空気に圧倒されて、自分も体勢を変えた。

「その……お弁当……」
「お弁当?」
「お弁当を、美味しそうに、笑顔で食べてるのを見て、いいなぁ……って」

 一緒に食べたら、もっと近くでその顔見れるかなぁと思って。あまりにまっすぐに言うものだから、返す言葉も見つからずにポカンとしてしまった。

「も、もう言っちゃったからこの際全部言っちゃうけど! 転校初日に一目惚れしてっ、でも話しかけられなくて……だから、もし良かったら」

 鼻先がくっつきそうな勢いで、近付いてきて、目を合わせようとする。遠くでチャイムが聞こえた。これ遅刻コースだ。またはサボりかな。そう考えて意識を逸らそうとしたのだけど。

「これからも俺と一緒に、ご飯食べよ?」

 その言葉に、不覚にもキュンとしてしまった自分がいるのだった。

「そういえば、名前なんていうの?」
「今さら!?」
「覚えてないから」

自分もいつか、作ったものを食べて貰えるんだろうか。



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