109 / 148
109 匂い side hikaru
しおりを挟む
・
「それ・・どうすんの?」
楽屋に備え付けの小さな洗面台で手と顔を洗い、一応持ってたハンカチで水気を拭い振り返ると、さっき使った恥ずかしいティッシュを、新しいそれに包んでポッケに入れるナガレくんがいた。
すぐそこにゴミ箱があるのに。
そう思って訊くと、彼は呆れたように俺を見て言った。
「こんな、匂いですぐ分かるもん置いとけるかって。トイレに捨てんだよ」
「あ・・・そ、っか」
言われればその通りだ・・。
『犯人』が俺達だってバレなくても、気付いた人は気持ちのいいもんじゃないだろう。
そういえば、この人は何気に気付く人だった。
「そうだよね。・・・ごめん」
そんな事には一切頭が回らず、こんなところで欲情した自分が恥ずかしい。
「仕掛けたの俺だし(笑) もういいなら行くよ?」
「あ、うん」
色気を残した笑顔をうっかり真正面から見てしまい、頬が熱くなる。
それを隠すように背を向け、ドアノブに手を掛けた瞬間。
「あ、待った」
と、腕を掴まれた。
「今日、何時上がり?」
訊かれて、カラダの奥に残る熱が少し大きくなった。
それを悟られないようにゆっくりと振り返り、笑顔を作り答える。
「24時、前には終わると思う・・・」
明日は久しぶりのオフだ。
もし『お仕置き』が酷くても回復する時間は十分にある。
「・・・」
そんな事を考えてまた少し熱が大きくなる。
「そ? じゃあ、終わったら連絡して」
彼はそんな俺を分かってるんだと思う。
「ん・・」
身長差の分ほんの少し下から俺を覗き込み首の後ろに腕を掛けると、チュッと小さく口付けニヤリと笑い、俺より先に出て行った。
・
「あ、おかえり。葛城さんいた?」
何度か深呼吸し落ち着いてから自分たちの楽屋に戻ると、さっきまでのちょっと緊迫した空気はどこへやら、すっかりリラックスした3人がいた。
「トイレ行って戻るって」
理由を思い出すと恥ずかしいけれども、そんなのこいつらが知るわけないし。
朔也の脇を通って自分の席に戻り、新聞を開く。
すると直後に、朔也が俺の方に振り向き訊いてきた。
「ヒカルさん、香水変えたの?」
「え? 変えてねえけど?」
っていうか、今日は付けてもいない。
「なんで? なんか匂う?」
それに返ってきた答えは・・・。
「なんかリーダーがつけてる香水みたいな匂いがしたからさ」
その言葉に、ギクリと背中が硬直した。
・
「それ・・どうすんの?」
楽屋に備え付けの小さな洗面台で手と顔を洗い、一応持ってたハンカチで水気を拭い振り返ると、さっき使った恥ずかしいティッシュを、新しいそれに包んでポッケに入れるナガレくんがいた。
すぐそこにゴミ箱があるのに。
そう思って訊くと、彼は呆れたように俺を見て言った。
「こんな、匂いですぐ分かるもん置いとけるかって。トイレに捨てんだよ」
「あ・・・そ、っか」
言われればその通りだ・・。
『犯人』が俺達だってバレなくても、気付いた人は気持ちのいいもんじゃないだろう。
そういえば、この人は何気に気付く人だった。
「そうだよね。・・・ごめん」
そんな事には一切頭が回らず、こんなところで欲情した自分が恥ずかしい。
「仕掛けたの俺だし(笑) もういいなら行くよ?」
「あ、うん」
色気を残した笑顔をうっかり真正面から見てしまい、頬が熱くなる。
それを隠すように背を向け、ドアノブに手を掛けた瞬間。
「あ、待った」
と、腕を掴まれた。
「今日、何時上がり?」
訊かれて、カラダの奥に残る熱が少し大きくなった。
それを悟られないようにゆっくりと振り返り、笑顔を作り答える。
「24時、前には終わると思う・・・」
明日は久しぶりのオフだ。
もし『お仕置き』が酷くても回復する時間は十分にある。
「・・・」
そんな事を考えてまた少し熱が大きくなる。
「そ? じゃあ、終わったら連絡して」
彼はそんな俺を分かってるんだと思う。
「ん・・」
身長差の分ほんの少し下から俺を覗き込み首の後ろに腕を掛けると、チュッと小さく口付けニヤリと笑い、俺より先に出て行った。
・
「あ、おかえり。葛城さんいた?」
何度か深呼吸し落ち着いてから自分たちの楽屋に戻ると、さっきまでのちょっと緊迫した空気はどこへやら、すっかりリラックスした3人がいた。
「トイレ行って戻るって」
理由を思い出すと恥ずかしいけれども、そんなのこいつらが知るわけないし。
朔也の脇を通って自分の席に戻り、新聞を開く。
すると直後に、朔也が俺の方に振り向き訊いてきた。
「ヒカルさん、香水変えたの?」
「え? 変えてねえけど?」
っていうか、今日は付けてもいない。
「なんで? なんか匂う?」
それに返ってきた答えは・・・。
「なんかリーダーがつけてる香水みたいな匂いがしたからさ」
その言葉に、ギクリと背中が硬直した。
・
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる