朝が来るまでキスをして。

月湖

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75 絶対に帰る彼 side hikaru

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ほんの少し、俺への執着を見せてくれたと喜べば



「次やったらホントに捨てるからな」



そんな言葉でそれは違うと突き放される。

それでも



「・・・ナガレくんが俺を離さない限り、他の人なんて見ないよ」



少しでもあなたに届くことを願いながら本心を吐露する。



「・・・あっそ」



ふ・・・と小さく笑った彼から返って来たのはそんな素っ気無い言葉だったけれど、拒否されないだけマシだ。



「・・・ナガレくんが、好きなんだ」



あなたが、俺をどう思ってても。



「知ってるよ(笑)」



・・・全然、分かってない。

俺がどれだけあなたを想ってるかなんて、きっと1%も伝わってない。

優しくて、無邪気で、大人で、でも子供で、酷いひと。



「ほんとに・・・、好きなんだ」



あなたが俺を離さないなら、もう何されてもいいと思えてしまうぐらい。

あんなに欲しかったあなたのカラダだけど、俺が受け入れる事で繋ぎとめられるなら、もうこのままでいいと思うぐらい。



「・・・シャワー貸して」



二度目の俺の言葉には応えず、ナガレくんは寝室を出て行った。



「・・・愛してるんだ」



閉じた扉を見つめながら、言えなかった言葉を呟く。

本当の「愛」がどんなものかは知らないけれど、最上級だと思うこの言葉で想いが伝わるなら。

次の『夜』に言ってしまいたい。

彼から返ってくるのはまた、いつかくれた偽りのアイの言葉だろうけど。



考えるほどに目の奥が痛くなって、その痛みがカタチになる前に彼が整えてくれたベッドに入りきつく目を閉じた。


きっと彼は、いつものように帰って行く。

どれだけ激しい行為をしても、彼が朝までいてくれることは無かった。


関係を持って少し経った頃、俺はそんな彼を見送るのが嫌で、終わった後に眠いフリをしながら「スペアキーで鍵を掛けて帰って」とそのまま鍵を渡した。

それからは、彼は俺の寝たふりに気付いているのかいないのかシャワーを済ませると一応寝室に寄り、

「帰る」

と一言残し帰って行く。



だから、今日もそうだと、思っていた。




けれど。


今夜もドアに背を向けて眠った振りをしていた俺に掛けられた声は。



「ヒカルちゃん、今夜泊まらせて」



一瞬、空耳かと思った。



「・・・え?」



「帰るのめんどくさい」



でも、続けられたセリフにやっとそれが現実だと認識する。



「・・・あの」



寝た振りも忘れて声を出してしまった。



なんでいきなり?



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