朝が来るまでキスをして。

月湖

文字の大きさ
上 下
73 / 148

73 俺を想っていた男の言葉

しおりを挟む



ヒカルがフラフラしながら風呂に向かうのを見送ると、俺は脱ぎ散らかした服のポケットから携帯を取り出しある番号にコールする。

すると、夜中にもかかわらず電話は割とすぐに相手に繋がった。



『・・・もしもし』



若干疲れたような声に笑ってしまいそうになる。

今夜の事があるまではすげえテンションで話してたのに。



「もしもし、パパ? さっきはどうもね(笑)」



『・・・今は、お前と楽しく話せる気分じゃないんだがな』



まあ、だろうね(笑)



「大丈夫。すぐ切るよ(笑)」



最後の忠告しに電話しただけだし。



『冷たいな』



はあ・・・とわざとらしく吐いたため息が聞こえてくる。

まったく。



「どうしろっていうのさ(笑)
ちょっと言っとく事があっただけだからすぐ切るよ」



『ナガレ・・・』



わざと明るく返したら、切なげな声で俺を呼んでくる。



「なに」



俺はそれに気付かない振りをして、普通に返した。

けど、相手はそんな俺の事も分かってるんだろう。

めげずに言葉を続けてくる。



『俺は、本気だったよ。お前の事・・・。
本気で、好きだった。
だから、同じようにお前を想ってる七瀬くんを排除したかった』



落ち着いた、静かな声だった。



「・・・パパ?」



・・・好き、だった?



『・・・いつかきちんと言おうと思ってた。いつも茶化してたけどな。
それが過去形になるのは切ないけど、しかたない。
・・・出来る事なら俺の方を向いて欲しかったが、お前のあんな眼を見せられちゃ諦めるしかないと思ってな』



「・・・」



どういう意味か、分からなかった。

確かに睨み付けはしたけど。



『ナガレ・・七瀬くんが好きなんだろう?』



「・・・まさか」



そんな気持ち、あるわけない。



『お前は、七瀬くんが好きなんだよ。俺を睨み付けたあの眼は、そういう眼だった。
気付いてないならちゃんと考えろ。
・・・俺みたいに、他の奴にとられる前に』



まあ、お前が俺のものになった事は無かったけどな。

相手は最後にそう、自嘲したような乾いた笑いをもらした。



「そんなの・・・」



『お前が俺に向けた目は、どうしたって恋する男の嫉妬の眼だった。
ホントならこんな事教えたくないけどな。
・・・じゃあな』



失恋の傷が癒えたら、また呑みに行こう。

そんな事を言って、パパの電話は切れた。



『お前は七瀬くんが好きなんだ』


取り残された俺の頭に、パパの言葉がグルグル回っていた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

処理中です...