朝が来るまでキスをして。

月湖

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43 嫌いな声

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ホント、呆れるくらいバカだわ。

せっかく教えてやったのに、のこのこ付いてくとか。

業界歴長いくせになんで分かんねえかな。

アイツはダメだ。



「・・・どうすっかな」



アイツの連れてく店の目星はある。

だけど。

ただ助けに行くだけじゃ、ね。



「お仕置きが、必要だよな?」



両方ともにさ?







俺は一旦家に帰り風呂に入ると、少しだけいつもより肌を出しカラダのラインが出る服に着替え、頃合いを見計らってまた家を出た。


タクシーを降り店のドアを引くと、カラン・・・と店の雰囲気に合う少しこもったベルの音と、低く鳴るジャズ。

この店、最初は俺だって気に入ってたんだけどな。

見知ったバーテンにバーボンをロックで頼み、とりあえずカウンター席に腰掛ける。



「・・・今日、あの人来てんでしょ?」



そして被っていたキャップを取り視線を強くして訊ねると、



「・・・ボックス席に」



アイスピックを操る手はそのまま、バーテンは静かに視線を流し、それだけ言った。



「さんきゅ」



グラスを受け取り、ここからはパーテーションが邪魔になって見えないボックス席に近付くと、案の定。




―――――「誰にも言わないから、今夜一晩、私に付き合って貰おうか」



アイツのセリフに、ヒカルちゃんの息を飲む音が聞こえた。



俺のいう事聞かなかった罰だよ。

さあ・・・どうする?


俺は裏のソファに音を立てないように腰を下ろし、様子を窺う事にした。



「・・・葛城なんて、メンバーとして以外、なんとも思ってないですよ。
彼だって・・・俺に特別な感情なんてないでしょ」



ふふ・・・。


顔は見えないけど、声に辛さが出てるよヒカルちゃん。

まあ、アイツには分かんねえと思うけど。

てか、ちゃんと分かってんじゃん。



「それは本当かな?」



アイツの、ニヤニヤした声。

ホント、大っ嫌いだわ。



「本当ですよ。だからいい加減はなし・・・っ」



あーあ・・・。

節操無しって、こういう事を言うのかね。

まあでも、そろそろかな。

氷の融け始めたグラスを持ち席を立つと、無理やりキスをされてるヒカルちゃんの隣にどかっと腰を下ろした。



「「!?」」



当然ながら、二人とも驚いた表情で俺を見ている。

俺は、そんな二人に、



「続けろよ」



意識して低くした声で言い放った。



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