聖女じゃないのに召喚された俺が、執着溺愛系スパダリに翻弄される話

月湖

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65 拗ねる26歳児

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彼らは、仲間に守られるように中央のテントに3人一緒に寝かされていた。
3人共包帯だらけで、その包帯にも血が滲んでいた。
そして、傷口から感じる闇の気配。
この場所は俺が昨日めいっぱい魔力を込めた浄化の名残で闇の活動は抑えられている筈なのに、それでも感じる。
戦った相手は強い魔獣だったのだろう。これは放っておいたらマズイ奴だ。


「・・・浄化、しますね」
「頼む」


寝ている3人を俺の聖魔法で包むように浄化していく。どうしても白く光っちゃうのはご愛敬ってことで。
何度か試したけれど、この光が消えることは無かった。
クロウ曰く、俺の聖魔法が可視化されているらしい。
その辺の神官が聖魔法を使う時にはこんな現象はまず起こらないという事だ。
ファンタジーかSFかという現象にちょっと恥ずかしがっていれば、神がくれた魔法なのだからレベルが違って当たり前だと言われて諦めた。

この聖域モドキの場所にいるというのに、3人の身体の中に残る闇は持ち主を侵食しようと微かにだが蠢いている。
それを感じ取れてしまった自分にちょっとビックリだ。
更に魔力を込めると白い光は少し強くなり、その瞬間に3人の体内の闇は呆気なく消えて無くなった。


「・・・終わりましたよ」


闇の消滅の確認と同時に魔力の放出を止め、息をつく。
浄化自体よりも、アルブレヒト様達に見られている事の方が緊張した。
エドワード王子の時に一度見られているとはいえ、あの時は侍従長始め関係者に箝口令を出してもらったから、俺の力を知っている人は限られている。
けれど、これから俺が力を使う度にそんなことをしていたら行動も制限されちゃうと思うし、それで助けられた筈の命が失われたりしたらやりきれない。
だから、これからはこの力を隠さない事に決めた。


「ハルカ、ありがとう」
「いいえ。俺に出来るのはこれくらいですから。あと・・・水があったら治癒も出来るんですけど、ありますか?」


浄化は済んだとはいえ、目の前の騎士達が重症だというのに変わりはない。
俺が治癒できるのは俺の、た、体液を身体の中に含んでいる人だけだ。
爺さん神さんが俺の為に、望まない力の使い方をしなくていいようにそうした設定にしてくれたんだけど、この状況で聖女の降臨が無いと確定した今はその設定がもどかしく思う。
有難いのは有難いんだけど。
まあ、キスとか性交渉じゃない体液の接種の仕方はクロウが教えてくれたから、それなりの人に治癒魔法を掛ける事は出来るからよくなったんだけど。


「・・・そうか。水か・・・。ちょっと待ってくれ」


俺が水を頼むと、アルブレヒト様は少しの間何かを考えた様子で、しかしすぐに部下に水を持ってくるように指示をしていた。
なんだろう?行軍では水が貴重とかそんな感じ?でも、魔法で・・・っていうか、俺!俺にも水魔法あるじゃん!!
そういや、前回のエドワード王子の時もしっかり用意してもらったよ。
うわー・・・。


「・・・・すいません、アルブレヒト様。入れ物だけで大丈夫です。
俺も水魔法使えた・・・」


マヌケな自分にガックリしながら後ろに立つアルブレヒト様に使えると、彼は一瞬キョトンとした表情を見せ、そしてクスクスと笑い出した。
イケメンの笑い顔、お嬢さん方には大層高い攻撃力だろうけど俺には効かん!
けど、そんなに笑わなくても!拗ねてやるぞ!?


「わ、笑わないでください。まだ魔法に慣れていないんです」


ぷん、とそっぽを向くと大きな手で頭を撫でられ「すまない。そうだな。ハルカはまだ成人前だった」と宥められる。
うう。俺26歳なのに子供扱い・・・。いや、今は子供なんだけど。
でもまだこっちの常識に慣れてない俺、26歳児はイタイなーと思ってしまうのよ・・・。


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