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64 頼もしい声
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「そこの!何奴ッ!!魔物か!?」
家を出てすぐ、見張りをしていた騎士達に見つかり剣を向けられた。
城では会わなかった騎士だ。いや全員を知ってるわけでは勿論ないし、前に騎士団の食堂にお邪魔したって言ったって、城の騎士が全員一緒に「いただきます」するわけじゃないだろうから俺を知らない人がいたって不思議じゃない。
それを思えばこの人のこの反応は至極当たり前の反応だ。
こんな危険な森の中たった一人で歩く子供なんて怪しい以外の何者でもない。
とりあえずこんなとこで斬られたくはないので、こちらに敵意は無いと素手の両手を挙げて声を上げた。
っていうか、俺見て魔物かって・・・人型の魔物っているのか?思わず出ただけ?
「俺はハルカといいます。アルブレヒト殿下に取次ぎを願いたいのですが」
「お前のような怪しい者に会わせられる訳がないだろう!!」
あー。まあそうなんだろうけど。
でもここで押し問答してても怪我人が良くなるわけでもなし。
えーと、あの人、なっていってたっけ・・・。
「では、側近のロナールさん?でしたっけ?に言付けを・・・」
「お前・・・ロナール子爵を知っているのか?」
「はい。先日お世話になりました」
「・・・ちょっと待っていてくれ」
側近さんの名前を出したら、怪しい子供を見る厳しい目がちょっとだけ軟化した。疑いつつも側近さんには繋いでくれるらしい。
つーか、ロナールさん子爵なのかよ。貴族なのに殿下と一緒に森に入ってたのかよ。
そもそも殿下が森にいた事自体が普通じゃないんだろうけど。
そして、テントに走っていった人以外の騎士達数人に剣を向けられながら待つこと数分。
「ハルカ・・・ッ」
出てきたのはアルブレヒト様だったよ。相変わらずフットワークの軽い人だ。後ろに側近さん達もいる。
「お前達、何をしている!剣を下ろせ!!」
騎士たちの剣が俺に向いていると気付いた瞬間、アルブレヒト様から鋭い声が発せられ、直後に騎士さん達の剣がザッ!と鞘に戻された。
「すまないハルカ、怪我はないか?」
道を遮らないように二手に分かれた騎士達の真ん中を当然のように堂々と歩いてくるアルブレヒト様に、やっぱこの人王子様なんだなーと思う。俺は多分ちょっと恐縮しちゃうな。
騎士さん達の視線が俺と殿下の間を行ったり来たりして関係を訝しんでいるというのに、そんな視線は完全無視で俺に構ってくる。スルー力りょく高すぎだろ。
「家に帰ったのではなかったのか?また迷子か?あの方は一緒ではないのか?」
「迷子って・・・」
ああ!!そういえば俺最初迷子の設定だったよ!
「ハルカ一人ならばここは危険だ。私達と一緒に森を出よう」
「えっと、いや一人じゃな・・・」
「・・・あの方も近くにおられるのか」
「あー、うん」
頷き、家のある方を指差すとクロウがゆっくり歩いてくるところだった。
「クロ、じゃない。神獣様が教えてくれたから」
「そうか」
「・・・魔獣にやられた怪我人がいるって」
周りに聞かれないように声を潜めて伝えると、殿下はピタリと俺の横についたクロウを見つめ、ゆっくり瞼を閉じ目礼をした。
「浄化、しますよ」
「ハルカ・・・」
俺が言うと、アルブレヒト様は何故か苦悩に満ちたような表情をした。
「クロウが言ってました。今すぐどうこうなるほどではないけれど、神殿に行ってきちんと浄化しないと最悪切断って事になりかねないって」
「ああ、聖水は持ち込んでいるから多少の傷なら浄化出来る。だがそうか・・・。神獣様には闇の残滓が見えるのだろうな」
「ええ。なので、俺をその怪我をした騎士さんのところに連れて行ってください」
「ハルカ、だが・・・」
言い淀む彼は、浄化した後の俺の事を心配してくれているのだろう。
この人は俺の力を知っている。
普通じゃないんだもんな、俺の力って。俺がこの力を貰ったせいで聖女を降ろせなくなったくらい、世界を救えちゃうくらいに大きな力がある。らしい。まだ練習中だけど。
でも、怪我人の浄化くらいならすぐに出来るくらいにはなってるよ。
「大丈夫ですよ」
「・・・いいのか」
「心配してくれてありがとうございます。でも、知ってしまったからには、これで見捨てたら寝覚めが悪いので・・・。でも、後のことはお任せしちゃってもいいですか」
さすがに多くの人にこの力を知られて頼られたりしたら、今の、子供の俺じゃ一人で対処出来ない。
悪いけど、王子様の権力をあてにさせてもらう。
「ああ、まかせろ」
にやりと笑い掛けたら、力強い答えが返ってきた。
この国トップクラスの権力、頼もしい。
家を出てすぐ、見張りをしていた騎士達に見つかり剣を向けられた。
城では会わなかった騎士だ。いや全員を知ってるわけでは勿論ないし、前に騎士団の食堂にお邪魔したって言ったって、城の騎士が全員一緒に「いただきます」するわけじゃないだろうから俺を知らない人がいたって不思議じゃない。
それを思えばこの人のこの反応は至極当たり前の反応だ。
こんな危険な森の中たった一人で歩く子供なんて怪しい以外の何者でもない。
とりあえずこんなとこで斬られたくはないので、こちらに敵意は無いと素手の両手を挙げて声を上げた。
っていうか、俺見て魔物かって・・・人型の魔物っているのか?思わず出ただけ?
「俺はハルカといいます。アルブレヒト殿下に取次ぎを願いたいのですが」
「お前のような怪しい者に会わせられる訳がないだろう!!」
あー。まあそうなんだろうけど。
でもここで押し問答してても怪我人が良くなるわけでもなし。
えーと、あの人、なっていってたっけ・・・。
「では、側近のロナールさん?でしたっけ?に言付けを・・・」
「お前・・・ロナール子爵を知っているのか?」
「はい。先日お世話になりました」
「・・・ちょっと待っていてくれ」
側近さんの名前を出したら、怪しい子供を見る厳しい目がちょっとだけ軟化した。疑いつつも側近さんには繋いでくれるらしい。
つーか、ロナールさん子爵なのかよ。貴族なのに殿下と一緒に森に入ってたのかよ。
そもそも殿下が森にいた事自体が普通じゃないんだろうけど。
そして、テントに走っていった人以外の騎士達数人に剣を向けられながら待つこと数分。
「ハルカ・・・ッ」
出てきたのはアルブレヒト様だったよ。相変わらずフットワークの軽い人だ。後ろに側近さん達もいる。
「お前達、何をしている!剣を下ろせ!!」
騎士たちの剣が俺に向いていると気付いた瞬間、アルブレヒト様から鋭い声が発せられ、直後に騎士さん達の剣がザッ!と鞘に戻された。
「すまないハルカ、怪我はないか?」
道を遮らないように二手に分かれた騎士達の真ん中を当然のように堂々と歩いてくるアルブレヒト様に、やっぱこの人王子様なんだなーと思う。俺は多分ちょっと恐縮しちゃうな。
騎士さん達の視線が俺と殿下の間を行ったり来たりして関係を訝しんでいるというのに、そんな視線は完全無視で俺に構ってくる。スルー力りょく高すぎだろ。
「家に帰ったのではなかったのか?また迷子か?あの方は一緒ではないのか?」
「迷子って・・・」
ああ!!そういえば俺最初迷子の設定だったよ!
「ハルカ一人ならばここは危険だ。私達と一緒に森を出よう」
「えっと、いや一人じゃな・・・」
「・・・あの方も近くにおられるのか」
「あー、うん」
頷き、家のある方を指差すとクロウがゆっくり歩いてくるところだった。
「クロ、じゃない。神獣様が教えてくれたから」
「そうか」
「・・・魔獣にやられた怪我人がいるって」
周りに聞かれないように声を潜めて伝えると、殿下はピタリと俺の横についたクロウを見つめ、ゆっくり瞼を閉じ目礼をした。
「浄化、しますよ」
「ハルカ・・・」
俺が言うと、アルブレヒト様は何故か苦悩に満ちたような表情をした。
「クロウが言ってました。今すぐどうこうなるほどではないけれど、神殿に行ってきちんと浄化しないと最悪切断って事になりかねないって」
「ああ、聖水は持ち込んでいるから多少の傷なら浄化出来る。だがそうか・・・。神獣様には闇の残滓が見えるのだろうな」
「ええ。なので、俺をその怪我をした騎士さんのところに連れて行ってください」
「ハルカ、だが・・・」
言い淀む彼は、浄化した後の俺の事を心配してくれているのだろう。
この人は俺の力を知っている。
普通じゃないんだもんな、俺の力って。俺がこの力を貰ったせいで聖女を降ろせなくなったくらい、世界を救えちゃうくらいに大きな力がある。らしい。まだ練習中だけど。
でも、怪我人の浄化くらいならすぐに出来るくらいにはなってるよ。
「大丈夫ですよ」
「・・・いいのか」
「心配してくれてありがとうございます。でも、知ってしまったからには、これで見捨てたら寝覚めが悪いので・・・。でも、後のことはお任せしちゃってもいいですか」
さすがに多くの人にこの力を知られて頼られたりしたら、今の、子供の俺じゃ一人で対処出来ない。
悪いけど、王子様の権力をあてにさせてもらう。
「ああ、まかせろ」
にやりと笑い掛けたら、力強い答えが返ってきた。
この国トップクラスの権力、頼もしい。
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