64 / 65
64 頼もしい声
しおりを挟む
「そこの!何奴ッ!!魔物か!?」
家を出てすぐ、見張りをしていた騎士達に見つかり剣を向けられた。
城では会わなかった騎士だ。いや全員を知ってるわけでは勿論ないし、前に騎士団の食堂にお邪魔したって言ったって、城の騎士が全員一緒に「いただきます」するわけじゃないだろうから俺を知らない人がいたって不思議じゃない。
それを思えばこの人のこの反応は至極当たり前の反応だ。
こんな危険な森の中たった一人で歩く子供なんて怪しい以外の何者でもない。
とりあえずこんなとこで斬られたくはないので、こちらに敵意は無いと素手の両手を挙げて声を上げた。
っていうか、俺見て魔物かって・・・人型の魔物っているのか?思わず出ただけ?
「俺はハルカといいます。アルブレヒト殿下に取次ぎを願いたいのですが」
「お前のような怪しい者に会わせられる訳がないだろう!!」
あー。まあそうなんだろうけど。
でもここで押し問答してても怪我人が良くなるわけでもなし。
えーと、あの人、なっていってたっけ・・・。
「では、側近のロナールさん?でしたっけ?に言付けを・・・」
「お前・・・ロナール子爵を知っているのか?」
「はい。先日お世話になりました」
「・・・ちょっと待っていてくれ」
側近さんの名前を出したら、怪しい子供を見る厳しい目がちょっとだけ軟化した。疑いつつも側近さんには繋いでくれるらしい。
つーか、ロナールさん子爵なのかよ。貴族なのに殿下と一緒に森に入ってたのかよ。
そもそも殿下が森にいた事自体が普通じゃないんだろうけど。
そして、テントに走っていった人以外の騎士達数人に剣を向けられながら待つこと数分。
「ハルカ・・・ッ」
出てきたのはアルブレヒト様だったよ。相変わらずフットワークの軽い人だ。後ろに側近さん達もいる。
「お前達、何をしている!剣を下ろせ!!」
騎士たちの剣が俺に向いていると気付いた瞬間、アルブレヒト様から鋭い声が発せられ、直後に騎士さん達の剣がザッ!と鞘に戻された。
「すまないハルカ、怪我はないか?」
道を遮らないように二手に分かれた騎士達の真ん中を当然のように堂々と歩いてくるアルブレヒト様に、やっぱこの人王子様なんだなーと思う。俺は多分ちょっと恐縮しちゃうな。
騎士さん達の視線が俺と殿下の間を行ったり来たりして関係を訝しんでいるというのに、そんな視線は完全無視で俺に構ってくる。スルー力りょく高すぎだろ。
「家に帰ったのではなかったのか?また迷子か?あの方は一緒ではないのか?」
「迷子って・・・」
ああ!!そういえば俺最初迷子の設定だったよ!
「ハルカ一人ならばここは危険だ。私達と一緒に森を出よう」
「えっと、いや一人じゃな・・・」
「・・・あの方も近くにおられるのか」
「あー、うん」
頷き、家のある方を指差すとクロウがゆっくり歩いてくるところだった。
「クロ、じゃない。神獣様が教えてくれたから」
「そうか」
「・・・魔獣にやられた怪我人がいるって」
周りに聞かれないように声を潜めて伝えると、殿下はピタリと俺の横についたクロウを見つめ、ゆっくり瞼を閉じ目礼をした。
「浄化、しますよ」
「ハルカ・・・」
俺が言うと、アルブレヒト様は何故か苦悩に満ちたような表情をした。
「クロウが言ってました。今すぐどうこうなるほどではないけれど、神殿に行ってきちんと浄化しないと最悪切断って事になりかねないって」
「ああ、聖水は持ち込んでいるから多少の傷なら浄化出来る。だがそうか・・・。神獣様には闇の残滓が見えるのだろうな」
「ええ。なので、俺をその怪我をした騎士さんのところに連れて行ってください」
「ハルカ、だが・・・」
言い淀む彼は、浄化した後の俺の事を心配してくれているのだろう。
この人は俺の力を知っている。
普通じゃないんだもんな、俺の力って。俺がこの力を貰ったせいで聖女を降ろせなくなったくらい、世界を救えちゃうくらいに大きな力がある。らしい。まだ練習中だけど。
でも、怪我人の浄化くらいならすぐに出来るくらいにはなってるよ。
「大丈夫ですよ」
「・・・いいのか」
「心配してくれてありがとうございます。でも、知ってしまったからには、これで見捨てたら寝覚めが悪いので・・・。でも、後のことはお任せしちゃってもいいですか」
さすがに多くの人にこの力を知られて頼られたりしたら、今の、子供の俺じゃ一人で対処出来ない。
悪いけど、王子様の権力をあてにさせてもらう。
「ああ、まかせろ」
にやりと笑い掛けたら、力強い答えが返ってきた。
この国トップクラスの権力、頼もしい。
家を出てすぐ、見張りをしていた騎士達に見つかり剣を向けられた。
城では会わなかった騎士だ。いや全員を知ってるわけでは勿論ないし、前に騎士団の食堂にお邪魔したって言ったって、城の騎士が全員一緒に「いただきます」するわけじゃないだろうから俺を知らない人がいたって不思議じゃない。
それを思えばこの人のこの反応は至極当たり前の反応だ。
こんな危険な森の中たった一人で歩く子供なんて怪しい以外の何者でもない。
とりあえずこんなとこで斬られたくはないので、こちらに敵意は無いと素手の両手を挙げて声を上げた。
っていうか、俺見て魔物かって・・・人型の魔物っているのか?思わず出ただけ?
「俺はハルカといいます。アルブレヒト殿下に取次ぎを願いたいのですが」
「お前のような怪しい者に会わせられる訳がないだろう!!」
あー。まあそうなんだろうけど。
でもここで押し問答してても怪我人が良くなるわけでもなし。
えーと、あの人、なっていってたっけ・・・。
「では、側近のロナールさん?でしたっけ?に言付けを・・・」
「お前・・・ロナール子爵を知っているのか?」
「はい。先日お世話になりました」
「・・・ちょっと待っていてくれ」
側近さんの名前を出したら、怪しい子供を見る厳しい目がちょっとだけ軟化した。疑いつつも側近さんには繋いでくれるらしい。
つーか、ロナールさん子爵なのかよ。貴族なのに殿下と一緒に森に入ってたのかよ。
そもそも殿下が森にいた事自体が普通じゃないんだろうけど。
そして、テントに走っていった人以外の騎士達数人に剣を向けられながら待つこと数分。
「ハルカ・・・ッ」
出てきたのはアルブレヒト様だったよ。相変わらずフットワークの軽い人だ。後ろに側近さん達もいる。
「お前達、何をしている!剣を下ろせ!!」
騎士たちの剣が俺に向いていると気付いた瞬間、アルブレヒト様から鋭い声が発せられ、直後に騎士さん達の剣がザッ!と鞘に戻された。
「すまないハルカ、怪我はないか?」
道を遮らないように二手に分かれた騎士達の真ん中を当然のように堂々と歩いてくるアルブレヒト様に、やっぱこの人王子様なんだなーと思う。俺は多分ちょっと恐縮しちゃうな。
騎士さん達の視線が俺と殿下の間を行ったり来たりして関係を訝しんでいるというのに、そんな視線は完全無視で俺に構ってくる。スルー力りょく高すぎだろ。
「家に帰ったのではなかったのか?また迷子か?あの方は一緒ではないのか?」
「迷子って・・・」
ああ!!そういえば俺最初迷子の設定だったよ!
「ハルカ一人ならばここは危険だ。私達と一緒に森を出よう」
「えっと、いや一人じゃな・・・」
「・・・あの方も近くにおられるのか」
「あー、うん」
頷き、家のある方を指差すとクロウがゆっくり歩いてくるところだった。
「クロ、じゃない。神獣様が教えてくれたから」
「そうか」
「・・・魔獣にやられた怪我人がいるって」
周りに聞かれないように声を潜めて伝えると、殿下はピタリと俺の横についたクロウを見つめ、ゆっくり瞼を閉じ目礼をした。
「浄化、しますよ」
「ハルカ・・・」
俺が言うと、アルブレヒト様は何故か苦悩に満ちたような表情をした。
「クロウが言ってました。今すぐどうこうなるほどではないけれど、神殿に行ってきちんと浄化しないと最悪切断って事になりかねないって」
「ああ、聖水は持ち込んでいるから多少の傷なら浄化出来る。だがそうか・・・。神獣様には闇の残滓が見えるのだろうな」
「ええ。なので、俺をその怪我をした騎士さんのところに連れて行ってください」
「ハルカ、だが・・・」
言い淀む彼は、浄化した後の俺の事を心配してくれているのだろう。
この人は俺の力を知っている。
普通じゃないんだもんな、俺の力って。俺がこの力を貰ったせいで聖女を降ろせなくなったくらい、世界を救えちゃうくらいに大きな力がある。らしい。まだ練習中だけど。
でも、怪我人の浄化くらいならすぐに出来るくらいにはなってるよ。
「大丈夫ですよ」
「・・・いいのか」
「心配してくれてありがとうございます。でも、知ってしまったからには、これで見捨てたら寝覚めが悪いので・・・。でも、後のことはお任せしちゃってもいいですか」
さすがに多くの人にこの力を知られて頼られたりしたら、今の、子供の俺じゃ一人で対処出来ない。
悪いけど、王子様の権力をあてにさせてもらう。
「ああ、まかせろ」
にやりと笑い掛けたら、力強い答えが返ってきた。
この国トップクラスの権力、頼もしい。
455
お気に入りに追加
2,316
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています
八神紫音
BL
魔道士はひ弱そうだからいらない。
そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。
そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、
ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。
突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる