61 / 65
61 イメージそのままはヤバかった
しおりを挟む
そう言えば俺、アルブレヒト様と同衾したな。
すぐには部屋の用意が出来ないって事だったみたいだけど、あれ、あの部屋に泊まらなくてもよかったんじゃ?
完全に子供扱いで側近さん達にも微笑ましい目で見られてたっぽいけど、最後のアレを見て彼らはどう思ったか。考えるだけでも怖い。
え?あの人王弟だよな。
気軽に婚約者とか決められないと思うんだけど、既成事実があった場合はどうなる?そんなもんは無いけれども!
『ハルカ』
うっかり危険な方向に向いた思考を遮るようにクロウの声が掛かる。
「はっ!今それどころじゃなかった」
俺が物思いに耽っていた間にさっき浄化した場所から結構離れていたらしい。
気付けば周囲を取り巻く空気が重い。バリアのおかげで息苦しいという事は無いが、いつ魔獣が出てきても不思議じゃない程闇の濃度が濃かった。
「クロウ、ここ、ヤバいんじゃない?俺絶対ここの空気吸いたくない」
『ああ、この先に穴がある。ヤツの封印の綻びだな』
「そういう事・・・」
神の森を離れた神獣は、やがてその力を失い神獣ではなくなる。
クロウの言う『ヤツ』は初代聖女に傾倒し、彼女の願い通り『ずっと傍に』いて『この国を守って』いた。自身の存在が薄れ、失われると分かっていながら。
きっと、聖女にしてみれば無邪気な願いだったのだろう。
可愛いペットに言うような気安さで願った相手がどういう存在なのか分からないまま、きっと笑顔で言い放ったんだろう。
そして神獣は聖女の願いのまま誓いを立て、自身の一番美しい尾羽を聖女に捧げた。
この伝説に倣い、サランラークの王家の男子は髪を長く伸ばし運命の相手に捧げるらしい。
その伝説の所為で俺は大きな勘違いをして、寝起きのアルブレヒト様に土下座をかましてしまった訳だが。それは別にいいんだ。勘違いだったし。王子は気付いてなさそうだったし。
いまはそんな事より。
「これ、ここだけ浄化してもまた同じような綻びが出来るよな」
『ああ、これから益々増えるだろう。ヤツの力が完全に消え失せた瞬間、どの程度の闇が噴き出すか・・・』
「穴を見つけて都度浄化するのがいいのか?・・・なんか、モグラ叩きみたいな感じだな」
『モグラ叩きとは・・・』
「こっちってモグラいないの?土の中で生活する動物。トンネルを掘って何ヵ所かの巣を行ったり来たりすんの。畑の作物を食べちゃうから、空気穴から顔を出したところを叩いて駆除するんだよ」
『ああ、そういう事か。大泥ネズミという似たような生体のモノはいる。大きさはハルカと同じくらいだな。奴らも土の中で生活し根っこから畑の作物を食い荒らす故、農家が苦労しておる。毎年魔法使いが罠を張って駆除しているが、奴らは繁殖力が高く厄介者扱いされておる』
「俺と同じサイズのネズミか。それは遭遇したくないな」
『それなら、ハルカの前に姿を現す前に我が駆除してやろう』
「ありがとう、クロウ」
で、浄化だけど。
「コレ、一気に広範囲でやったら綻び直ったりしないかな」
浄化して移動する事数箇所。
なんか、疲労が重なると魔力の回復速度も若干落ちてくるらしい。全回復までにちょっと時間が掛かってきたから今日はもう終わりにすることにして、最後、ステータスで使用量を見えるようにしながら今ある魔力800全部を込めた浄化魔法を試す事にした。
「んんん―――――~~~・・・せーのっ浄化!!!」
身体の中に魔力を巡らせ、聖魔法だけどイメージするのは照明弾!そして一気に放出!
したのだが。
「あ。ヤバ」
イメージしたのがそのまま可視化されてしまい、俺の周囲が真っ白に光ってしまった。
眩しい!!!!そして怠い!
『眩しい』
「ごめん、うっかり」
現在の俺の魔力3。この数秒で回復した分。
倒れかかったのを受け止めてくれたクロウの背に懐きながら謝る。俺も眩しかった。
まさか聖魔法に色がついちゃうとは思わなかった。
まあ、光はすぐ消えたけど。
「うー・・・。次はもうちょっと眩しくないように頑張る」
『そうして貰えると助かる』
「うん」
魔力800を込めた浄化は周囲1キロくらいの闇を綺麗さっぱり消したらしい。うん。空気がウマイね!多分。俺は相変わらずバリアの中です。
バリア分の魔力、どうやら意識下で擬きさんがコントロールしてくれてるっぽい。魔力3しかないのにバリアはちゃんと維持されてる。とりあえず爺さん神さんありがとう。
『さて、そろそろ日が暮れるが宿はどうする?ここは開けているし家を出すか?』
「あー・・・うん。なんか疲れた。周りに誰もいないみたいだし、ご飯食べてもう寝たい」
やっと10になった魔力で周囲の探索を掛けてみたが魔力が届く範囲には魔獣も人もいない。
ドカンと家を出し、とりあえず中に入る。結界はもうちょっと魔力が回復してからにしよう。さすがにダルい。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
怪我から復帰後最初のお話60話にたくさんのハート、拍手ありがとうございます!
初めて500以上のハートを頂きました。
皆さまからの復帰祝いと勝手に思い、これからも頑張ろうとあらためて思いました。
まだまだ続くお話ですが、お付き合い頂けましたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします!
すぐには部屋の用意が出来ないって事だったみたいだけど、あれ、あの部屋に泊まらなくてもよかったんじゃ?
完全に子供扱いで側近さん達にも微笑ましい目で見られてたっぽいけど、最後のアレを見て彼らはどう思ったか。考えるだけでも怖い。
え?あの人王弟だよな。
気軽に婚約者とか決められないと思うんだけど、既成事実があった場合はどうなる?そんなもんは無いけれども!
『ハルカ』
うっかり危険な方向に向いた思考を遮るようにクロウの声が掛かる。
「はっ!今それどころじゃなかった」
俺が物思いに耽っていた間にさっき浄化した場所から結構離れていたらしい。
気付けば周囲を取り巻く空気が重い。バリアのおかげで息苦しいという事は無いが、いつ魔獣が出てきても不思議じゃない程闇の濃度が濃かった。
「クロウ、ここ、ヤバいんじゃない?俺絶対ここの空気吸いたくない」
『ああ、この先に穴がある。ヤツの封印の綻びだな』
「そういう事・・・」
神の森を離れた神獣は、やがてその力を失い神獣ではなくなる。
クロウの言う『ヤツ』は初代聖女に傾倒し、彼女の願い通り『ずっと傍に』いて『この国を守って』いた。自身の存在が薄れ、失われると分かっていながら。
きっと、聖女にしてみれば無邪気な願いだったのだろう。
可愛いペットに言うような気安さで願った相手がどういう存在なのか分からないまま、きっと笑顔で言い放ったんだろう。
そして神獣は聖女の願いのまま誓いを立て、自身の一番美しい尾羽を聖女に捧げた。
この伝説に倣い、サランラークの王家の男子は髪を長く伸ばし運命の相手に捧げるらしい。
その伝説の所為で俺は大きな勘違いをして、寝起きのアルブレヒト様に土下座をかましてしまった訳だが。それは別にいいんだ。勘違いだったし。王子は気付いてなさそうだったし。
いまはそんな事より。
「これ、ここだけ浄化してもまた同じような綻びが出来るよな」
『ああ、これから益々増えるだろう。ヤツの力が完全に消え失せた瞬間、どの程度の闇が噴き出すか・・・』
「穴を見つけて都度浄化するのがいいのか?・・・なんか、モグラ叩きみたいな感じだな」
『モグラ叩きとは・・・』
「こっちってモグラいないの?土の中で生活する動物。トンネルを掘って何ヵ所かの巣を行ったり来たりすんの。畑の作物を食べちゃうから、空気穴から顔を出したところを叩いて駆除するんだよ」
『ああ、そういう事か。大泥ネズミという似たような生体のモノはいる。大きさはハルカと同じくらいだな。奴らも土の中で生活し根っこから畑の作物を食い荒らす故、農家が苦労しておる。毎年魔法使いが罠を張って駆除しているが、奴らは繁殖力が高く厄介者扱いされておる』
「俺と同じサイズのネズミか。それは遭遇したくないな」
『それなら、ハルカの前に姿を現す前に我が駆除してやろう』
「ありがとう、クロウ」
で、浄化だけど。
「コレ、一気に広範囲でやったら綻び直ったりしないかな」
浄化して移動する事数箇所。
なんか、疲労が重なると魔力の回復速度も若干落ちてくるらしい。全回復までにちょっと時間が掛かってきたから今日はもう終わりにすることにして、最後、ステータスで使用量を見えるようにしながら今ある魔力800全部を込めた浄化魔法を試す事にした。
「んんん―――――~~~・・・せーのっ浄化!!!」
身体の中に魔力を巡らせ、聖魔法だけどイメージするのは照明弾!そして一気に放出!
したのだが。
「あ。ヤバ」
イメージしたのがそのまま可視化されてしまい、俺の周囲が真っ白に光ってしまった。
眩しい!!!!そして怠い!
『眩しい』
「ごめん、うっかり」
現在の俺の魔力3。この数秒で回復した分。
倒れかかったのを受け止めてくれたクロウの背に懐きながら謝る。俺も眩しかった。
まさか聖魔法に色がついちゃうとは思わなかった。
まあ、光はすぐ消えたけど。
「うー・・・。次はもうちょっと眩しくないように頑張る」
『そうして貰えると助かる』
「うん」
魔力800を込めた浄化は周囲1キロくらいの闇を綺麗さっぱり消したらしい。うん。空気がウマイね!多分。俺は相変わらずバリアの中です。
バリア分の魔力、どうやら意識下で擬きさんがコントロールしてくれてるっぽい。魔力3しかないのにバリアはちゃんと維持されてる。とりあえず爺さん神さんありがとう。
『さて、そろそろ日が暮れるが宿はどうする?ここは開けているし家を出すか?』
「あー・・・うん。なんか疲れた。周りに誰もいないみたいだし、ご飯食べてもう寝たい」
やっと10になった魔力で周囲の探索を掛けてみたが魔力が届く範囲には魔獣も人もいない。
ドカンと家を出し、とりあえず中に入る。結界はもうちょっと魔力が回復してからにしよう。さすがにダルい。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
怪我から復帰後最初のお話60話にたくさんのハート、拍手ありがとうございます!
初めて500以上のハートを頂きました。
皆さまからの復帰祝いと勝手に思い、これからも頑張ろうとあらためて思いました。
まだまだ続くお話ですが、お付き合い頂けましたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします!
736
お気に入りに追加
2,331
あなたにおすすめの小説

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・話の流れが遅い
・作者が話の進行悩み過ぎてる
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる