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61 イメージそのままはヤバかった
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そう言えば俺、アルブレヒト様と同衾したな。
すぐには部屋の用意が出来ないって事だったみたいだけど、あれ、あの部屋に泊まらなくてもよかったんじゃ?
完全に子供扱いで側近さん達にも微笑ましい目で見られてたっぽいけど、最後のアレを見て彼らはどう思ったか。考えるだけでも怖い。
え?あの人王弟だよな。
気軽に婚約者とか決められないと思うんだけど、既成事実があった場合はどうなる?そんなもんは無いけれども!
『ハルカ』
うっかり危険な方向に向いた思考を遮るようにクロウの声が掛かる。
「はっ!今それどころじゃなかった」
俺が物思いに耽っていた間にさっき浄化した場所から結構離れていたらしい。
気付けば周囲を取り巻く空気が重い。バリアのおかげで息苦しいという事は無いが、いつ魔獣が出てきても不思議じゃない程闇の濃度が濃かった。
「クロウ、ここ、ヤバいんじゃない?俺絶対ここの空気吸いたくない」
『ああ、この先に穴がある。ヤツの封印の綻びだな』
「そういう事・・・」
神の森を離れた神獣は、やがてその力を失い神獣ではなくなる。
クロウの言う『ヤツ』は初代聖女に傾倒し、彼女の願い通り『ずっと傍に』いて『この国を守って』いた。自身の存在が薄れ、失われると分かっていながら。
きっと、聖女にしてみれば無邪気な願いだったのだろう。
可愛いペットに言うような気安さで願った相手がどういう存在なのか分からないまま、きっと笑顔で言い放ったんだろう。
そして神獣は聖女の願いのまま誓いを立て、自身の一番美しい尾羽を聖女に捧げた。
この伝説に倣い、サランラークの王家の男子は髪を長く伸ばし運命の相手に捧げるらしい。
その伝説の所為で俺は大きな勘違いをして、寝起きのアルブレヒト様に土下座をかましてしまった訳だが。それは別にいいんだ。勘違いだったし。王子は気付いてなさそうだったし。
いまはそんな事より。
「これ、ここだけ浄化してもまた同じような綻びが出来るよな」
『ああ、これから益々増えるだろう。ヤツの力が完全に消え失せた瞬間、どの程度の闇が噴き出すか・・・』
「穴を見つけて都度浄化するのがいいのか?・・・なんか、モグラ叩きみたいな感じだな」
『モグラ叩きとは・・・』
「こっちってモグラいないの?土の中で生活する動物。トンネルを掘って何ヵ所かの巣を行ったり来たりすんの。畑の作物を食べちゃうから、空気穴から顔を出したところを叩いて駆除するんだよ」
『ああ、そういう事か。大泥ネズミという似たような生体のモノはいる。大きさはハルカと同じくらいだな。奴らも土の中で生活し根っこから畑の作物を食い荒らす故、農家が苦労しておる。毎年魔法使いが罠を張って駆除しているが、奴らは繁殖力が高く厄介者扱いされておる』
「俺と同じサイズのネズミか。それは遭遇したくないな」
『それなら、ハルカの前に姿を現す前に我が駆除してやろう』
「ありがとう、クロウ」
で、浄化だけど。
「コレ、一気に広範囲でやったら綻び直ったりしないかな」
浄化して移動する事数箇所。
なんか、疲労が重なると魔力の回復速度も若干落ちてくるらしい。全回復までにちょっと時間が掛かってきたから今日はもう終わりにすることにして、最後、ステータスで使用量を見えるようにしながら今ある魔力800全部を込めた浄化魔法を試す事にした。
「んんん―――――~~~・・・せーのっ浄化!!!」
身体の中に魔力を巡らせ、聖魔法だけどイメージするのは照明弾!そして一気に放出!
したのだが。
「あ。ヤバ」
イメージしたのがそのまま可視化されてしまい、俺の周囲が真っ白に光ってしまった。
眩しい!!!!そして怠い!
『眩しい』
「ごめん、うっかり」
現在の俺の魔力3。この数秒で回復した分。
倒れかかったのを受け止めてくれたクロウの背に懐きながら謝る。俺も眩しかった。
まさか聖魔法に色がついちゃうとは思わなかった。
まあ、光はすぐ消えたけど。
「うー・・・。次はもうちょっと眩しくないように頑張る」
『そうして貰えると助かる』
「うん」
魔力800を込めた浄化は周囲1キロくらいの闇を綺麗さっぱり消したらしい。うん。空気がウマイね!多分。俺は相変わらずバリアの中です。
バリア分の魔力、どうやら意識下で擬きさんがコントロールしてくれてるっぽい。魔力3しかないのにバリアはちゃんと維持されてる。とりあえず爺さん神さんありがとう。
『さて、そろそろ日が暮れるが宿はどうする?ここは開けているし家を出すか?』
「あー・・・うん。なんか疲れた。周りに誰もいないみたいだし、ご飯食べてもう寝たい」
やっと10になった魔力で周囲の探索を掛けてみたが魔力が届く範囲には魔獣も人もいない。
ドカンと家を出し、とりあえず中に入る。結界はもうちょっと魔力が回復してからにしよう。さすがにダルい。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
怪我から復帰後最初のお話60話にたくさんのハート、拍手ありがとうございます!
初めて500以上のハートを頂きました。
皆さまからの復帰祝いと勝手に思い、これからも頑張ろうとあらためて思いました。
まだまだ続くお話ですが、お付き合い頂けましたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします!
すぐには部屋の用意が出来ないって事だったみたいだけど、あれ、あの部屋に泊まらなくてもよかったんじゃ?
完全に子供扱いで側近さん達にも微笑ましい目で見られてたっぽいけど、最後のアレを見て彼らはどう思ったか。考えるだけでも怖い。
え?あの人王弟だよな。
気軽に婚約者とか決められないと思うんだけど、既成事実があった場合はどうなる?そんなもんは無いけれども!
『ハルカ』
うっかり危険な方向に向いた思考を遮るようにクロウの声が掛かる。
「はっ!今それどころじゃなかった」
俺が物思いに耽っていた間にさっき浄化した場所から結構離れていたらしい。
気付けば周囲を取り巻く空気が重い。バリアのおかげで息苦しいという事は無いが、いつ魔獣が出てきても不思議じゃない程闇の濃度が濃かった。
「クロウ、ここ、ヤバいんじゃない?俺絶対ここの空気吸いたくない」
『ああ、この先に穴がある。ヤツの封印の綻びだな』
「そういう事・・・」
神の森を離れた神獣は、やがてその力を失い神獣ではなくなる。
クロウの言う『ヤツ』は初代聖女に傾倒し、彼女の願い通り『ずっと傍に』いて『この国を守って』いた。自身の存在が薄れ、失われると分かっていながら。
きっと、聖女にしてみれば無邪気な願いだったのだろう。
可愛いペットに言うような気安さで願った相手がどういう存在なのか分からないまま、きっと笑顔で言い放ったんだろう。
そして神獣は聖女の願いのまま誓いを立て、自身の一番美しい尾羽を聖女に捧げた。
この伝説に倣い、サランラークの王家の男子は髪を長く伸ばし運命の相手に捧げるらしい。
その伝説の所為で俺は大きな勘違いをして、寝起きのアルブレヒト様に土下座をかましてしまった訳だが。それは別にいいんだ。勘違いだったし。王子は気付いてなさそうだったし。
いまはそんな事より。
「これ、ここだけ浄化してもまた同じような綻びが出来るよな」
『ああ、これから益々増えるだろう。ヤツの力が完全に消え失せた瞬間、どの程度の闇が噴き出すか・・・』
「穴を見つけて都度浄化するのがいいのか?・・・なんか、モグラ叩きみたいな感じだな」
『モグラ叩きとは・・・』
「こっちってモグラいないの?土の中で生活する動物。トンネルを掘って何ヵ所かの巣を行ったり来たりすんの。畑の作物を食べちゃうから、空気穴から顔を出したところを叩いて駆除するんだよ」
『ああ、そういう事か。大泥ネズミという似たような生体のモノはいる。大きさはハルカと同じくらいだな。奴らも土の中で生活し根っこから畑の作物を食い荒らす故、農家が苦労しておる。毎年魔法使いが罠を張って駆除しているが、奴らは繁殖力が高く厄介者扱いされておる』
「俺と同じサイズのネズミか。それは遭遇したくないな」
『それなら、ハルカの前に姿を現す前に我が駆除してやろう』
「ありがとう、クロウ」
で、浄化だけど。
「コレ、一気に広範囲でやったら綻び直ったりしないかな」
浄化して移動する事数箇所。
なんか、疲労が重なると魔力の回復速度も若干落ちてくるらしい。全回復までにちょっと時間が掛かってきたから今日はもう終わりにすることにして、最後、ステータスで使用量を見えるようにしながら今ある魔力800全部を込めた浄化魔法を試す事にした。
「んんん―――――~~~・・・せーのっ浄化!!!」
身体の中に魔力を巡らせ、聖魔法だけどイメージするのは照明弾!そして一気に放出!
したのだが。
「あ。ヤバ」
イメージしたのがそのまま可視化されてしまい、俺の周囲が真っ白に光ってしまった。
眩しい!!!!そして怠い!
『眩しい』
「ごめん、うっかり」
現在の俺の魔力3。この数秒で回復した分。
倒れかかったのを受け止めてくれたクロウの背に懐きながら謝る。俺も眩しかった。
まさか聖魔法に色がついちゃうとは思わなかった。
まあ、光はすぐ消えたけど。
「うー・・・。次はもうちょっと眩しくないように頑張る」
『そうして貰えると助かる』
「うん」
魔力800を込めた浄化は周囲1キロくらいの闇を綺麗さっぱり消したらしい。うん。空気がウマイね!多分。俺は相変わらずバリアの中です。
バリア分の魔力、どうやら意識下で擬きさんがコントロールしてくれてるっぽい。魔力3しかないのにバリアはちゃんと維持されてる。とりあえず爺さん神さんありがとう。
『さて、そろそろ日が暮れるが宿はどうする?ここは開けているし家を出すか?』
「あー・・・うん。なんか疲れた。周りに誰もいないみたいだし、ご飯食べてもう寝たい」
やっと10になった魔力で周囲の探索を掛けてみたが魔力が届く範囲には魔獣も人もいない。
ドカンと家を出し、とりあえず中に入る。結界はもうちょっと魔力が回復してからにしよう。さすがにダルい。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
怪我から復帰後最初のお話60話にたくさんのハート、拍手ありがとうございます!
初めて500以上のハートを頂きました。
皆さまからの復帰祝いと勝手に思い、これからも頑張ろうとあらためて思いました。
まだまだ続くお話ですが、お付き合い頂けましたら嬉しいです。
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