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58 神ってやつは
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「なあ、聖女ってこういう時に出てくるんじゃないのか?」
世界が危機に陥った時に降臨するんだろ?
クロウの言うような事が本当に起きたら、下手したらこの国滅びそうだけど・・・。
顔はもう覚えていないが、あの踊り場で一緒に転生させられた女の子が聖女だと、確かに爺さん神さんが言っていた。
だから、
「聖女は・・・っ!?」
聖女はもうこの世界にいるのに、なんで出てこないんだ?
そう言う為に口を開けた瞬間。
突然、喉が痞えたように声が出なくなった。
「っ・・・!」
なんだ?
何が起こってる?
「!?」
呼吸が、息が吸えない。
何!?
「・・・っ?」
つまった喉を押さえ、ハクハクと口を開ける。
けれど求めた空気は入ってこなくて、ガクガクと身体が震えた。
『ハルカッ!?』
涙が溢れ零れたところで、俺の様子がおかしい事に気付いたクロウがすぐ傍に来てくれた。
でも何も出来ない。
だんだん身体の力も入らなくなってきて、座っていたソファに倒れた。
目の前が段々白くなってきて、俺また死ぬのか?なんてぼんやり考えた瞬間。
『神よ!ハルカに何をなさっておられるのか!!』
クロウの怒号が響いた。
「かみ・・?」
あ、喋れた。
息も吸えるようになった。
「爺さん神さん・・・?」
『そうだ』
「さっきの、あのヒトが、やったの?」
『そうだ』
「・・・」
なんで?
まだ思考がぼんやりしてる。けど。
ついさっきの、死ぬかもしれない恐怖の出来事は神が俺に何かしらをしたらしい。
「・・・俺、なんかやったかな」
クロウと話してて、サランラークが滅びるかもしれないって。
だから、聖女が・・・。
【ハルカよ。それは口に出してはならぬ事】
――――え?
【采配は神が決める事だ。愛し子であるハルカでも世界の采配に口を出してはならぬ】
これって、爺さん神さんの声か。たしかこんな声だったような気がする。
頭の中に直接響いてちょっと気持ち悪い。
【気持ち悪いはちょっと傷つくのう】
いや、聞こえてんのかよ。
【神だからの】
あっそう。
っていうか、さっきの酷くない?
言っちゃダメな事とかあるなら先に言っといて欲しいんだけど。
【ああ、すまぬ、加減を間違えた】
まあ、もういいけど。っていうか、聖女どこにいんの?
サランラーク結構なピンチらしいけど。
【・・・聖女は今は降ろせん】
・・・なんか、端切れ悪くね?
【別に歯切れわ、悪くなど、無い】
いや、思いっきり噛んでるし。
・・・なーんか、あれだよね?
態度が変って言うか。
俺と最初に会った時もこんな感じだったような?
【な、なんだ】
なんか隠してるよな?
理の神だっけ?上司のカミサマ。
何か言われた感じ?
【ギクッ】
ギクッ、じゃねーし。
キリキリ吐いて下さいねー。
今度は何だよ。
【親とも言える私に対してその態度は】
親とか言うならコドモにちゃんとわかるように説明してほしいもんですけどね。
【う】
どうせまた何かやらかして聖女を降ろすの禁止とか上司に言われたんだろ?
【何故分かるのだ】
分かるわ!
で?
本当に聖女生まれないの?
【それなんじゃが】
うん。
【・・・あのだな】
うん。
【その】
・・・いい加減しないと怒るよ?
【あー・・・すまない。聖女は降ろせない】
だからそれが何でって言ってるんだけど。
【お主が下界にいるからだな】
・・・は?
意味分からん。どういう事?
【ハルカを下界に降ろす前、私の不注意で転生させてしまう訳だからせめて生活に不自由しないようにと魔法を授けただろう】
ああ、まだ全然使えてないけど魔法使うの楽しいから感謝してる。家とかも、ありがと。
【ああ、どういたしまして。楽しくしているなら良かった。
―――ではなくてだ。
その、ハルカに授けた魔法の一部が強すぎて、その上聖女まで降臨させるのは世界の均衡が崩れるからと】
・・・はー。
もう全部アンタが悪いんじゃん。
【面目次第も無い】
強すぎるのって、聖魔法?
クロウが俺の聖魔法は神官長の力を遥かに凌駕するみたいなこと言ってたけど。
【そうだ】
俺の聖魔法が弱くなったら良いって事?
【一度授けた力は取り上げられぬ決まりになっておる】
・・・俺が死なない限り、聖女が生まれないって事?
世界を助けたいなら異分子は消せって言われた?
元々手違いでこっち来たし。
【理の神は非情だがそのような事を言う方ではない!】
でもそしたらどうすんの。このままじゃ世界の救世主たる聖女が降臨しないんだろ。
詰んでるじゃん。
【お主が助ければ良い】
は?無理無理!
俺色々魔法貰ったけど全然使えてないし!
つーか目立ちたくない!
【ああ、そういえば魔法だけ付与して制御スキルを入れ忘れていたのだ。すまない。明日の朝には魔法制御が出来るようにしておこう。
こちらで生まれた者は大きくなるにつれ徐々に身に着けていくものだが、ハルカは既に身体が出来上がりつつある故、これから制御を身に着けるのは難しかろう】
それは有難いけど・・・。
っていうか!
それって魔法が完璧に使えるようにしてやるから、俺に聖女の代わりをやれって事か!?
・
世界が危機に陥った時に降臨するんだろ?
クロウの言うような事が本当に起きたら、下手したらこの国滅びそうだけど・・・。
顔はもう覚えていないが、あの踊り場で一緒に転生させられた女の子が聖女だと、確かに爺さん神さんが言っていた。
だから、
「聖女は・・・っ!?」
聖女はもうこの世界にいるのに、なんで出てこないんだ?
そう言う為に口を開けた瞬間。
突然、喉が痞えたように声が出なくなった。
「っ・・・!」
なんだ?
何が起こってる?
「!?」
呼吸が、息が吸えない。
何!?
「・・・っ?」
つまった喉を押さえ、ハクハクと口を開ける。
けれど求めた空気は入ってこなくて、ガクガクと身体が震えた。
『ハルカッ!?』
涙が溢れ零れたところで、俺の様子がおかしい事に気付いたクロウがすぐ傍に来てくれた。
でも何も出来ない。
だんだん身体の力も入らなくなってきて、座っていたソファに倒れた。
目の前が段々白くなってきて、俺また死ぬのか?なんてぼんやり考えた瞬間。
『神よ!ハルカに何をなさっておられるのか!!』
クロウの怒号が響いた。
「かみ・・?」
あ、喋れた。
息も吸えるようになった。
「爺さん神さん・・・?」
『そうだ』
「さっきの、あのヒトが、やったの?」
『そうだ』
「・・・」
なんで?
まだ思考がぼんやりしてる。けど。
ついさっきの、死ぬかもしれない恐怖の出来事は神が俺に何かしらをしたらしい。
「・・・俺、なんかやったかな」
クロウと話してて、サランラークが滅びるかもしれないって。
だから、聖女が・・・。
【ハルカよ。それは口に出してはならぬ事】
――――え?
【采配は神が決める事だ。愛し子であるハルカでも世界の采配に口を出してはならぬ】
これって、爺さん神さんの声か。たしかこんな声だったような気がする。
頭の中に直接響いてちょっと気持ち悪い。
【気持ち悪いはちょっと傷つくのう】
いや、聞こえてんのかよ。
【神だからの】
あっそう。
っていうか、さっきの酷くない?
言っちゃダメな事とかあるなら先に言っといて欲しいんだけど。
【ああ、すまぬ、加減を間違えた】
まあ、もういいけど。っていうか、聖女どこにいんの?
サランラーク結構なピンチらしいけど。
【・・・聖女は今は降ろせん】
・・・なんか、端切れ悪くね?
【別に歯切れわ、悪くなど、無い】
いや、思いっきり噛んでるし。
・・・なーんか、あれだよね?
態度が変って言うか。
俺と最初に会った時もこんな感じだったような?
【な、なんだ】
なんか隠してるよな?
理の神だっけ?上司のカミサマ。
何か言われた感じ?
【ギクッ】
ギクッ、じゃねーし。
キリキリ吐いて下さいねー。
今度は何だよ。
【親とも言える私に対してその態度は】
親とか言うならコドモにちゃんとわかるように説明してほしいもんですけどね。
【う】
どうせまた何かやらかして聖女を降ろすの禁止とか上司に言われたんだろ?
【何故分かるのだ】
分かるわ!
で?
本当に聖女生まれないの?
【それなんじゃが】
うん。
【・・・あのだな】
うん。
【その】
・・・いい加減しないと怒るよ?
【あー・・・すまない。聖女は降ろせない】
だからそれが何でって言ってるんだけど。
【お主が下界にいるからだな】
・・・は?
意味分からん。どういう事?
【ハルカを下界に降ろす前、私の不注意で転生させてしまう訳だからせめて生活に不自由しないようにと魔法を授けただろう】
ああ、まだ全然使えてないけど魔法使うの楽しいから感謝してる。家とかも、ありがと。
【ああ、どういたしまして。楽しくしているなら良かった。
―――ではなくてだ。
その、ハルカに授けた魔法の一部が強すぎて、その上聖女まで降臨させるのは世界の均衡が崩れるからと】
・・・はー。
もう全部アンタが悪いんじゃん。
【面目次第も無い】
強すぎるのって、聖魔法?
クロウが俺の聖魔法は神官長の力を遥かに凌駕するみたいなこと言ってたけど。
【そうだ】
俺の聖魔法が弱くなったら良いって事?
【一度授けた力は取り上げられぬ決まりになっておる】
・・・俺が死なない限り、聖女が生まれないって事?
世界を助けたいなら異分子は消せって言われた?
元々手違いでこっち来たし。
【理の神は非情だがそのような事を言う方ではない!】
でもそしたらどうすんの。このままじゃ世界の救世主たる聖女が降臨しないんだろ。
詰んでるじゃん。
【お主が助ければ良い】
は?無理無理!
俺色々魔法貰ったけど全然使えてないし!
つーか目立ちたくない!
【ああ、そういえば魔法だけ付与して制御スキルを入れ忘れていたのだ。すまない。明日の朝には魔法制御が出来るようにしておこう。
こちらで生まれた者は大きくなるにつれ徐々に身に着けていくものだが、ハルカは既に身体が出来上がりつつある故、これから制御を身に着けるのは難しかろう】
それは有難いけど・・・。
っていうか!
それって魔法が完璧に使えるようにしてやるから、俺に聖女の代わりをやれって事か!?
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