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57 クロウ不在の理由
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「お、かえり。クロウ。おつかれさん」
驚き過ぎてソファの端っこに飛び退き、何と戦うつもりだったのかクッションを盾にしながら久しぶりの友達を労う。
『ああ。我のいぬ間に不自由は無かったか』
「こっちはいつも通りだったけど・・・クロウはなんか疲れてる?」
『ああ、多少な。あの莫迦はまったくロクな事をせん』
はーっ!と大きなため息をつくクロウは、珍しく感情を表に出している。
一体何があったのだろう。
「あのバカって・・・」
『あの男の、いやサランラークを守護している守護獣のことだ。今やはぐれとなってしまった莫迦者よ。
ようやく見つけ出したわ』
王宮に行った時は気配は感じられても姿までは見つけられなかったらしい。
『あれは初代聖女と契約した鳥型の神獣だ。元はどこかしらで飼われていた白孔雀であったか。
飼い主が死んで、エサを求めてふらふらと森に迷いこみ獣に喰われそうになっていたところを、神が気まぐれで助けたのが始まりだ。
あやつは元が元だけにヒトへの思い入れが強くてな。初代聖女は世界に溢れた闇を浄化した後秘かに後宮入りしたのだが、ヤツは世界の均衡が整った後もかの聖女に望まれたからと、サランラークを離れず守護するなどと宣った』
まったく、厄介な。とかブツブツ言ってるけど、でもあれ?
「それって俺とクロウの契約みたいなものじゃなくて?」
クロウもずっと俺と一緒にいるよな?
何が違うんだろう。
『我はハルカと契約はしたが、それはハルカただ一人、一代のみ。
そして、前にも言ったが魂の一部は常にこの森にあるようにしている。
我はこの森の守護獣であり神獣の王だからな。統べる者として森と眷属を守る使命がある』
「そっか」
『あの莫迦は神獣としての使命を忘れ森を離れた。帰還せなんだ為に神獣としての力も薄れ今や瀕死の状態だ。それ故あやつが永きに渡り押さえつけていた悪しきモノが地上に出てきてしまっている』
「それって・・・」
悪しきモノと聞いて真っ先に思い出すのはあの小さな王子の部屋で感じた闇の気配だ。
まさか・・・?
でもそうなのだとしたらあの時浄化で消えた事にも納得がいく。
『あの莫迦は自分の神力を使い、よりにもよって闇の噴出を抑えつけていたのだ!』
怒りの為か、話しながらクロウの身体からピシッピシッと電気が弾ける。
『永きに渡りスタンピードが無かった理由がこれだったのだ。
サランラークは気候が比較的穏やかで暮らしやすい国である故、大型魔獣が生まれにくいのだと思っていた。
我の目はなんという節穴か!』
はぐれ鳥に怒っていたかと思えば今度は自分に対して怒ってる。
こちらははぐれ鳥が愚を犯している事に気付けず、結果として最悪に近い状態まで放置してしまった、王としての責任感からくる怒りなのだろう。
俺としてはクロウが悪いんじゃなくて、神獣の使命を忘れてある意味色ボケしたアホ鳥が悪いと言ってやりたいが、そんな気休めはいらないんだろうな。
そんな事をぼーっと考えていた俺はどれだけ暢気なのか。
『あやつの神力は今やもうほぼ無いに等しい。実態を現わすのが困難な程にな。
別にあやつが消えるは自業自得故なんとも思わぬが、拙いのはその後だ。
あやつの神力が完全に消えた瞬間から、抑圧されていた闇が膨れ上がり大型魔獣が大量に生まれるだろう。そうなれば大規模なスタンピードが起こるのは必至』
「スタンピード・・・」
魔獣が溢れてそこにあるものを蹂躙する。それは時に国を亡ぼす程の災害。
『あやつが行方不明になって千年以上が経つ。どれ程の魔獣が生まれるか予想もつかぬ』
他の国では数年から数十年毎に起きるというスタンピードが千年起きていない。
闇とは、負の感情が膨れ上がってどうにもならなかったものの成れの果て。そう本で読んだ。
人の心が作り出すものだから、絶対に無くなることは無いとも。
人間関係や生活環境が良ければ負の感情は生まれにくい。でも負の感情なんて持ってない人の方が少なくて。どうやっても闇は育ちやがて魔獣に姿を変えて襲ってくる。
ある意味因果応報という奴かもしんないけど。
そんなものが・・・千年分の魔獣が一気に襲ってくる?
ヤバいなんてもんじゃないだろ。
つーか、爺さん神さんは何やってたんだよ。
・
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
すみません。今回も少し短いです。
片手でちまちまPCを打っております。とても不便(-"-)
今月中にもう一度くらいは更新したいなあと、思ってはおります。
皆さまご心配と温かいコメントありがとうございます。
全て大切に読ませて頂いております。
お返事遅れてて申し訳ありません。
「お、かえり。クロウ。おつかれさん」
驚き過ぎてソファの端っこに飛び退き、何と戦うつもりだったのかクッションを盾にしながら久しぶりの友達を労う。
『ああ。我のいぬ間に不自由は無かったか』
「こっちはいつも通りだったけど・・・クロウはなんか疲れてる?」
『ああ、多少な。あの莫迦はまったくロクな事をせん』
はーっ!と大きなため息をつくクロウは、珍しく感情を表に出している。
一体何があったのだろう。
「あのバカって・・・」
『あの男の、いやサランラークを守護している守護獣のことだ。今やはぐれとなってしまった莫迦者よ。
ようやく見つけ出したわ』
王宮に行った時は気配は感じられても姿までは見つけられなかったらしい。
『あれは初代聖女と契約した鳥型の神獣だ。元はどこかしらで飼われていた白孔雀であったか。
飼い主が死んで、エサを求めてふらふらと森に迷いこみ獣に喰われそうになっていたところを、神が気まぐれで助けたのが始まりだ。
あやつは元が元だけにヒトへの思い入れが強くてな。初代聖女は世界に溢れた闇を浄化した後秘かに後宮入りしたのだが、ヤツは世界の均衡が整った後もかの聖女に望まれたからと、サランラークを離れず守護するなどと宣った』
まったく、厄介な。とかブツブツ言ってるけど、でもあれ?
「それって俺とクロウの契約みたいなものじゃなくて?」
クロウもずっと俺と一緒にいるよな?
何が違うんだろう。
『我はハルカと契約はしたが、それはハルカただ一人、一代のみ。
そして、前にも言ったが魂の一部は常にこの森にあるようにしている。
我はこの森の守護獣であり神獣の王だからな。統べる者として森と眷属を守る使命がある』
「そっか」
『あの莫迦は神獣としての使命を忘れ森を離れた。帰還せなんだ為に神獣としての力も薄れ今や瀕死の状態だ。それ故あやつが永きに渡り押さえつけていた悪しきモノが地上に出てきてしまっている』
「それって・・・」
悪しきモノと聞いて真っ先に思い出すのはあの小さな王子の部屋で感じた闇の気配だ。
まさか・・・?
でもそうなのだとしたらあの時浄化で消えた事にも納得がいく。
『あの莫迦は自分の神力を使い、よりにもよって闇の噴出を抑えつけていたのだ!』
怒りの為か、話しながらクロウの身体からピシッピシッと電気が弾ける。
『永きに渡りスタンピードが無かった理由がこれだったのだ。
サランラークは気候が比較的穏やかで暮らしやすい国である故、大型魔獣が生まれにくいのだと思っていた。
我の目はなんという節穴か!』
はぐれ鳥に怒っていたかと思えば今度は自分に対して怒ってる。
こちらははぐれ鳥が愚を犯している事に気付けず、結果として最悪に近い状態まで放置してしまった、王としての責任感からくる怒りなのだろう。
俺としてはクロウが悪いんじゃなくて、神獣の使命を忘れてある意味色ボケしたアホ鳥が悪いと言ってやりたいが、そんな気休めはいらないんだろうな。
そんな事をぼーっと考えていた俺はどれだけ暢気なのか。
『あやつの神力は今やもうほぼ無いに等しい。実態を現わすのが困難な程にな。
別にあやつが消えるは自業自得故なんとも思わぬが、拙いのはその後だ。
あやつの神力が完全に消えた瞬間から、抑圧されていた闇が膨れ上がり大型魔獣が大量に生まれるだろう。そうなれば大規模なスタンピードが起こるのは必至』
「スタンピード・・・」
魔獣が溢れてそこにあるものを蹂躙する。それは時に国を亡ぼす程の災害。
『あやつが行方不明になって千年以上が経つ。どれ程の魔獣が生まれるか予想もつかぬ』
他の国では数年から数十年毎に起きるというスタンピードが千年起きていない。
闇とは、負の感情が膨れ上がってどうにもならなかったものの成れの果て。そう本で読んだ。
人の心が作り出すものだから、絶対に無くなることは無いとも。
人間関係や生活環境が良ければ負の感情は生まれにくい。でも負の感情なんて持ってない人の方が少なくて。どうやっても闇は育ちやがて魔獣に姿を変えて襲ってくる。
ある意味因果応報という奴かもしんないけど。
そんなものが・・・千年分の魔獣が一気に襲ってくる?
ヤバいなんてもんじゃないだろ。
つーか、爺さん神さんは何やってたんだよ。
・
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
すみません。今回も少し短いです。
片手でちまちまPCを打っております。とても不便(-"-)
今月中にもう一度くらいは更新したいなあと、思ってはおります。
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全て大切に読ませて頂いております。
お返事遅れてて申し訳ありません。
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