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52 快癒
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キラキラとした光の粒子が消えて、白く発光していた俺の手も元に戻った。
目を閉じ、深呼吸をする。
うん。爽やか。
・・・ああ、目を開けたくない。
後ろがザワザワしている。
寒いわけでも痒いわけでもない。
物理的に騒がしくなってる。
なんか啜り泣きまで聞こえる。
あーあ・・・やっちゃったなー・・・。
「ハルカ」
すぐ後ろから殿下の声が聞こえて、次の瞬間抱き締められた。
「ありがとう。ハルカ・・・っ」
ぎゅうぎゅう力いっぱい抱き締められて痛い。
「殿下、痛いです」
そしてほっぺに髪があたって擽ったい。
目を開けると、さっきまで苦しそうに浅い息をしていた王子が体を起こし、呆然とこちらを見ていた。
「・・・ぼく、は」
さっきまでは良く見えなかった、俺を見つめる瞳は殿下と同じ蒼色。
「エドワード、もう苦しくないか?」
「はい、アルブレヒト叔父上」
「本当によかった」
「はい」
ここは叔父と甥の感動の場面、なのだが。
「殿下、とりあえず離してください。痛いです」
殿下は俺を抱き締めたまま王子と話していたのだ。
それも肋骨が軋むくらいの力で。
「ああ、すまない。
・・・ハルカ、君には感謝してもしきれない。この恩は一生忘れない。ありがとう」
「ちょ・・・殿下っ」
殿下は痛みを訴えた俺をすぐに開放してくれたが、そのまま俺の前で片膝をつき右手を掬い取った。
そして。
「っ!」
「私の真心をハルカに捧げる」
チュ、と軽い音を立てて唇が離れ、顔を上げた殿下の、強い光を放つ蒼い瞳が俺を射抜いた。
う・・・、本物の王子様のキラキラがヤバい。
女子でもないのに心臓が速くなり、顔もなんか熱くなった。
「で、殿下、あの・・」
「ハルカ、わた「エドワード殿下、ご快癒誠におめでとうございます」
おお、侍従さんナイス!
これ以上殿下に見られてたらヤバい扉が開きそうだった。
本当マジ、顔が良くて甥っ子を本気で心配して自分の危険も顧みず行動出来る中身までイケメンな王子の威力ヤバい。
さっきからヤバいしか言ってないけど本当なんかヤバいんだって。
お願いだからその握ってる手を放してくれ。
焦る俺を置き去りにして侍従さんと王子は和やかに会話をしていた。
「じいや、心配を掛けてすまなかった」
「本当に、ようございました」
「・・・叔父上も、私の為にありがとうございました」
「・・ああ、いや、全てはこのハルカがここにいてくれたお陰だ。礼なら彼に」
殿下、お願いだから立って下さい。
そして手を放して!
ついでに言ったら礼とかいらないから。
あなたはこれからやる事いっぱいあるだろう!
同じような症状の国民いっぱいいるって言ってただろ。
そういう事をとっとと思い出してくれ。
「俺、いえ私に礼など必要ありません。殿下が無事ご快癒されて良かったです。
でも暫くは安静に、食事もきちんと摂って病気で疲れた身体を癒してください」
「ハルカさん、ありがとうございました。
ずっと怖かったんです。僕はこのまま死んでしまうのかと、死にたくないと思いながらも身体はどんどん動かなくなって、この何日かはどんなに息を吸っても苦しくて・・・。
今日も、何人もの神官が治癒魔法をかけてくれたけれどそれでも苦しいのが治らなくて、もうダメなのかなって・・・っ」
話しながら王子の顔がくしゃりと歪んで、大きな目の端からぽろっと涙が落ちた。
「王子・・・」
そりゃそうだよな・・・。
どんなに不安だっただろう。
こんなに小さいのに、死ぬかもしれない恐怖と戦っていたなんて。
「・・・王子、頑張りましたね。よく、諦めないで今日まで生きていてくれました。
間に合ってよかった」
俯いてしまった王子の頭を撫でると、ガバッ!と小さく細い身体が抱きついてきた。
「う、ううー・・助けてくれてありがとう・・っ!」
流れる涙で胸元が濡れていくが、死の恐怖から解放された安堵で泣いているのだろう王子をとても離す気にはなれず、片手でその背中を優しく包んだ。
・・・もう片方は殿下が握ったままだ。いいかげん放してください。
目を閉じ、深呼吸をする。
うん。爽やか。
・・・ああ、目を開けたくない。
後ろがザワザワしている。
寒いわけでも痒いわけでもない。
物理的に騒がしくなってる。
なんか啜り泣きまで聞こえる。
あーあ・・・やっちゃったなー・・・。
「ハルカ」
すぐ後ろから殿下の声が聞こえて、次の瞬間抱き締められた。
「ありがとう。ハルカ・・・っ」
ぎゅうぎゅう力いっぱい抱き締められて痛い。
「殿下、痛いです」
そしてほっぺに髪があたって擽ったい。
目を開けると、さっきまで苦しそうに浅い息をしていた王子が体を起こし、呆然とこちらを見ていた。
「・・・ぼく、は」
さっきまでは良く見えなかった、俺を見つめる瞳は殿下と同じ蒼色。
「エドワード、もう苦しくないか?」
「はい、アルブレヒト叔父上」
「本当によかった」
「はい」
ここは叔父と甥の感動の場面、なのだが。
「殿下、とりあえず離してください。痛いです」
殿下は俺を抱き締めたまま王子と話していたのだ。
それも肋骨が軋むくらいの力で。
「ああ、すまない。
・・・ハルカ、君には感謝してもしきれない。この恩は一生忘れない。ありがとう」
「ちょ・・・殿下っ」
殿下は痛みを訴えた俺をすぐに開放してくれたが、そのまま俺の前で片膝をつき右手を掬い取った。
そして。
「っ!」
「私の真心をハルカに捧げる」
チュ、と軽い音を立てて唇が離れ、顔を上げた殿下の、強い光を放つ蒼い瞳が俺を射抜いた。
う・・・、本物の王子様のキラキラがヤバい。
女子でもないのに心臓が速くなり、顔もなんか熱くなった。
「で、殿下、あの・・」
「ハルカ、わた「エドワード殿下、ご快癒誠におめでとうございます」
おお、侍従さんナイス!
これ以上殿下に見られてたらヤバい扉が開きそうだった。
本当マジ、顔が良くて甥っ子を本気で心配して自分の危険も顧みず行動出来る中身までイケメンな王子の威力ヤバい。
さっきからヤバいしか言ってないけど本当なんかヤバいんだって。
お願いだからその握ってる手を放してくれ。
焦る俺を置き去りにして侍従さんと王子は和やかに会話をしていた。
「じいや、心配を掛けてすまなかった」
「本当に、ようございました」
「・・・叔父上も、私の為にありがとうございました」
「・・ああ、いや、全てはこのハルカがここにいてくれたお陰だ。礼なら彼に」
殿下、お願いだから立って下さい。
そして手を放して!
ついでに言ったら礼とかいらないから。
あなたはこれからやる事いっぱいあるだろう!
同じような症状の国民いっぱいいるって言ってただろ。
そういう事をとっとと思い出してくれ。
「俺、いえ私に礼など必要ありません。殿下が無事ご快癒されて良かったです。
でも暫くは安静に、食事もきちんと摂って病気で疲れた身体を癒してください」
「ハルカさん、ありがとうございました。
ずっと怖かったんです。僕はこのまま死んでしまうのかと、死にたくないと思いながらも身体はどんどん動かなくなって、この何日かはどんなに息を吸っても苦しくて・・・。
今日も、何人もの神官が治癒魔法をかけてくれたけれどそれでも苦しいのが治らなくて、もうダメなのかなって・・・っ」
話しながら王子の顔がくしゃりと歪んで、大きな目の端からぽろっと涙が落ちた。
「王子・・・」
そりゃそうだよな・・・。
どんなに不安だっただろう。
こんなに小さいのに、死ぬかもしれない恐怖と戦っていたなんて。
「・・・王子、頑張りましたね。よく、諦めないで今日まで生きていてくれました。
間に合ってよかった」
俯いてしまった王子の頭を撫でると、ガバッ!と小さく細い身体が抱きついてきた。
「う、ううー・・助けてくれてありがとう・・っ!」
流れる涙で胸元が濡れていくが、死の恐怖から解放された安堵で泣いているのだろう王子をとても離す気にはなれず、片手でその背中を優しく包んだ。
・・・もう片方は殿下が握ったままだ。いいかげん放してください。
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