聖女じゃないのに召喚された俺が、執着溺愛系スパダリに翻弄される話

月湖

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49 信用度

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まだ驚いたまま目を見開いている主従に苦笑しながら、

「このグラスは殿下の手に届くところで保管して頂けますか。
王子殿下に飲んで頂く前に毒見とか入るんでしょうけど、それ以前に俺が何もしていないという証明の為にも俺の手元に置いておかない方が良いと思うんです」

そう言って水が入ったグラスを差し出す。
本当は王子殿下の前でさっきのをやればいいんだろうけど、あれはあれで王子の侍従さんとかに「王子になにを飲ませようとしてるんだ!」みたいに止められそうだし。俺だって何度もやりたくない。目が痛いんだよ!あれ!
ついでに殿下からこの水を渡して貰った方が俺から渡すより信用度が上がる筈だ。。
というか、いくら殿下に連れだとしても初対面の見ず知らずの子供から突然「治療に必要だからこれ飲んで下さい」って言われても絶対受け取っては貰えないだろう。俺だって絶対怪しむ。
とりあえずそれだけは避けなければ。
俺の治癒魔法魔法を受けるなら、まず王子様にこの水を飲んで貰わない事には効果が現れないのだから。

「ハルカは本当に・・・成人前とは思えない程色々な事を知っているな。毒見役なんてこれまでのハルカの生活には縁が無かっただろう?」

俺の話に衝撃から復活した殿下が真顔に戻った。
訝しんでる感じかな。無理もないけど

「俺は普通ですよ。読書が趣味ですから、そこから得た知識は他の同い年の人よりはあるかも知れませんが」
「・・・普通、か。ハルカはいつも自分の事をそんな風に言う」
「本当にそうですから」

こちらに来てからの趣味が読書なのは本当だ。
テレビもパソコンもスマホも無い。
することと言えば魔法の練習か読書くらい。
爺さん神さんがいろんなジャンルの本をたくさん本棚に入れてくれてたおかげで、城に来る前までは夜は寝る前の読書が習慣になっていた。
毒見役や何やらというのは向こうのテレビ時代劇で見て知り得た知識なので、厳密には読書で得た知識じゃないけど、こっちの人にテレビだDVDだのと言っても通じる訳も無い。

「とにかく、お願いします」

「ああ、分かった」

言質を取って、暫く雑談(というか主に殿下が俺の髪の手入れについて語ってた。風呂上がりに香油をつけるといいとか。俺は髪に色々塗りつけるの嫌いなんだが)をしているとすぐに昼になり、今日は治癒魔法の為の水がある為執務室で食べさせてもらった。
昼のメニューはまたもステーキだった。体力が必要な仕事だから三食のうち二食は必ず肉メニューなんだってさ。
今度は牛っぽい肉をウェルダンに焼き上げてある。
身体が資本の騎士団ではレアステーキで腹痛なんて事はあってはならないって事なんだろう。
こんなにきちんと焼いても固くならない肉って、いったい何だろうと思いながら咀嚼する。
擦りおろし野菜に醤油と砂糖を合わせたような味のソースが美味くて、多分300グラムくらいあった肉を完食してしまった。
日本人のサガなのか食事を残すのはしのびなく、ピラフっぽいご飯とサラダも頑張って全部食べきったら流石に腹が苦しい。
王子様のところに行く前に食休みが欲しい。切実に。
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