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46 どうにかする方法
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王弟殿下の執務室で考え込んでいると、どこかへ行っていたクロウが戻ってきた。
「クロウ、おかえり」
『ハルカ、今戻った。変わりはないか?』
「・・・」
『何かあったか』
なんと言っていいものか。
言いあぐねていると、その沈黙をどう捉えたのかクロウは剣呑な雰囲気を醸し出した。
『そこの男に何か言われたか?』
返答次第では容赦しないと牙を見せるクロウに俺は、いつもクロウに守られてるなあ・・・と胸の中が温かくなった。
グルルルル・・と殿下向かって唸るクロウの首に腕を回し、大丈夫だと宥める。
「殿下には何もされてないよ。
・・・殿下の甥っ子さんが、病気なんだって。助けてあげたいけど、俺にそれが出来るのか考えてて・・・」
『ああ、そういう事か。あの子供はこの男の甥か』
「神獣様は、エドワードのところに?」
俺達の話が聞こえていたのだろう。
殿下が顔を上げた。
『城の中を見回って来ただけだ。たまたま見つけただけの事』
「・・・クロウ、王子様と後で会う事になっているんだけど、大丈夫そうだった?」
『ああ、神官が治癒を掛けていたな。レベルの不足でそれほど効いているようには見えなかった。
何もしないようりはマシだろうが』
「そう・・・。その事でちょっと話があるんだけど、いい?」
やはり王子の症状はかなり進んでいるらしい。
小さい子が苦しむ姿は見たくない。出来れば助けてやりたいけれど、俺の治癒はなあ・・・。
チラリと王弟殿下を見ると、殿下はじっと俺を見ていた。
その視線に籠るのは願いだろうか。
甥っ子を助けるために本当にあるかどうかも分からない神の森を探して危険な場所に赴くくらいだ。
出来るなら応えてやりたいと思う。
でもその手段が、さあ・・・。
流石にこれは殿下にも知られたくなくて、防音の結界を小さくして自分とクロウだけを閉じ込めた。
『ハルカ?どうした?』
「あのさ、殿下の甥っ子さん、俺なら治癒できると思う?」
『ハルカの治癒魔法には制約がかかっているだろう』
「分かるんだ?」
『ああ、我はハルカと繋がっているからな』
契約したからって事か?
クロウに隠さなきゃならない事なんて特に無いから別にいいけど。
「ステータス以外の事も分かる?」
『状態などは分かるな。心情までは分からぬから安心しろ』
獣姿なのに、表情豊かだよなクロウって・・・。
なんか、ニヤって笑ってるように見えるんだよ。
「別に、変な事考えないよ」
『考えていても分からぬと言っただろう』
「揶揄ってるだろう。意地悪だな」
『心外な。事実を言ってるだけなのだが』
それはそうなんだろうけど!
だったらその細めた目を戻してから言えよな。
結構真剣に話してたのに全然先に進まないじゃん。
「はあもう、で?その制約が掛かった状態の俺は王子を治せると思う?」
『体液に反応する、か。ハルカはどう考えている?』
「え、体液だろう?血、とか」
だって、体液だろ?俺の身体の中にある液体ってことだろ?
『確かに魔力と馴染みが良いのは血液だがな』
「他に何かあんの?」
『簡単に言えばハルカの身体から出るもの全部に、多少なりともハルカの魔力が含まれている、という事だ』
「俺からもの出る全部、って・・・」
俺が出すもの・・・?
「小便とか・・・?」
『最初に出るのがソレか』
半ば呆れた口調で言われるけどさあ!
俺が出す液体って、そんなもんだろ。
でも王子様に俺の小便飲ませるの?ありえない。っていうか万が一にも王子が良いって言われても俺が全拒否だわそんなの。
『確かに一番量が出るのは尿だろうがな・・・。他にも涙や汗、鼻水、精液やらあるだろう。
ああ、精液は血液に次ぐ魔力量と言われているぞ』
「俺は恋人以外に自分の精液飲ませるような趣味は無い!!」
『ほう』
「あ、いや・・・」
俺は大声で何を叫んでんだよ。恥ずかしい。
『我はハルカの閨での趣味にとやかく言わぬからそれは好きにすれば良い』
「・・・、うん」
いや、そうじゃなくて。
「涙、って体液、か」
『ハルカの体内にあったものという意味ではな』
「・・・王子に俺の涙を飲ませて、俺が治癒を掛けたらその効果が現れる?」
『ああ』
「そうか・・・」
涙か・・・。
そりゃ血液飲ませるよりは全然ハードルが下がったけどさ。
「俺、涙なんてそんな大量に出ないけど」
『一、二滴あればよいだろう。あとは水で薄めて飲ませてから魔法を行使すればよい。
普通の人間の涙に含まれる魔力など微々たるもので検知も出来ぬだろうが、ハルカの魔力量はその辺の人間を遥かに凌ぐからな。与えるのはほんの少しでよいよ
「・・・そっか」
涙。涙、ねえ・・・。
「・・・玉ねぎ用意してもらうしかないな」
「クロウ、おかえり」
『ハルカ、今戻った。変わりはないか?』
「・・・」
『何かあったか』
なんと言っていいものか。
言いあぐねていると、その沈黙をどう捉えたのかクロウは剣呑な雰囲気を醸し出した。
『そこの男に何か言われたか?』
返答次第では容赦しないと牙を見せるクロウに俺は、いつもクロウに守られてるなあ・・・と胸の中が温かくなった。
グルルルル・・と殿下向かって唸るクロウの首に腕を回し、大丈夫だと宥める。
「殿下には何もされてないよ。
・・・殿下の甥っ子さんが、病気なんだって。助けてあげたいけど、俺にそれが出来るのか考えてて・・・」
『ああ、そういう事か。あの子供はこの男の甥か』
「神獣様は、エドワードのところに?」
俺達の話が聞こえていたのだろう。
殿下が顔を上げた。
『城の中を見回って来ただけだ。たまたま見つけただけの事』
「・・・クロウ、王子様と後で会う事になっているんだけど、大丈夫そうだった?」
『ああ、神官が治癒を掛けていたな。レベルの不足でそれほど効いているようには見えなかった。
何もしないようりはマシだろうが』
「そう・・・。その事でちょっと話があるんだけど、いい?」
やはり王子の症状はかなり進んでいるらしい。
小さい子が苦しむ姿は見たくない。出来れば助けてやりたいけれど、俺の治癒はなあ・・・。
チラリと王弟殿下を見ると、殿下はじっと俺を見ていた。
その視線に籠るのは願いだろうか。
甥っ子を助けるために本当にあるかどうかも分からない神の森を探して危険な場所に赴くくらいだ。
出来るなら応えてやりたいと思う。
でもその手段が、さあ・・・。
流石にこれは殿下にも知られたくなくて、防音の結界を小さくして自分とクロウだけを閉じ込めた。
『ハルカ?どうした?』
「あのさ、殿下の甥っ子さん、俺なら治癒できると思う?」
『ハルカの治癒魔法には制約がかかっているだろう』
「分かるんだ?」
『ああ、我はハルカと繋がっているからな』
契約したからって事か?
クロウに隠さなきゃならない事なんて特に無いから別にいいけど。
「ステータス以外の事も分かる?」
『状態などは分かるな。心情までは分からぬから安心しろ』
獣姿なのに、表情豊かだよなクロウって・・・。
なんか、ニヤって笑ってるように見えるんだよ。
「別に、変な事考えないよ」
『考えていても分からぬと言っただろう』
「揶揄ってるだろう。意地悪だな」
『心外な。事実を言ってるだけなのだが』
それはそうなんだろうけど!
だったらその細めた目を戻してから言えよな。
結構真剣に話してたのに全然先に進まないじゃん。
「はあもう、で?その制約が掛かった状態の俺は王子を治せると思う?」
『体液に反応する、か。ハルカはどう考えている?』
「え、体液だろう?血、とか」
だって、体液だろ?俺の身体の中にある液体ってことだろ?
『確かに魔力と馴染みが良いのは血液だがな』
「他に何かあんの?」
『簡単に言えばハルカの身体から出るもの全部に、多少なりともハルカの魔力が含まれている、という事だ』
「俺からもの出る全部、って・・・」
俺が出すもの・・・?
「小便とか・・・?」
『最初に出るのがソレか』
半ば呆れた口調で言われるけどさあ!
俺が出す液体って、そんなもんだろ。
でも王子様に俺の小便飲ませるの?ありえない。っていうか万が一にも王子が良いって言われても俺が全拒否だわそんなの。
『確かに一番量が出るのは尿だろうがな・・・。他にも涙や汗、鼻水、精液やらあるだろう。
ああ、精液は血液に次ぐ魔力量と言われているぞ』
「俺は恋人以外に自分の精液飲ませるような趣味は無い!!」
『ほう』
「あ、いや・・・」
俺は大声で何を叫んでんだよ。恥ずかしい。
『我はハルカの閨での趣味にとやかく言わぬからそれは好きにすれば良い』
「・・・、うん」
いや、そうじゃなくて。
「涙、って体液、か」
『ハルカの体内にあったものという意味ではな』
「・・・王子に俺の涙を飲ませて、俺が治癒を掛けたらその効果が現れる?」
『ああ』
「そうか・・・」
涙か・・・。
そりゃ血液飲ませるよりは全然ハードルが下がったけどさ。
「俺、涙なんてそんな大量に出ないけど」
『一、二滴あればよいだろう。あとは水で薄めて飲ませてから魔法を行使すればよい。
普通の人間の涙に含まれる魔力など微々たるもので検知も出来ぬだろうが、ハルカの魔力量はその辺の人間を遥かに凌ぐからな。与えるのはほんの少しでよいよ
「・・・そっか」
涙。涙、ねえ・・・。
「・・・玉ねぎ用意してもらうしかないな」
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