聖女じゃないのに召喚された俺が、執着溺愛系スパダリに翻弄される話

月湖

文字の大きさ
上 下
45 / 65

45 治癒魔法と浄化魔法

しおりを挟む
「・・・俺の魔法は未熟で、必ず治せるという保証はありません。それでもいいなら」


震えているようにも見える王子に告げると、王子はガバッと顔を上げた。
表情は今にも泣きそうに歪んでいる。
そんな表情でもイケメンはイケメンなんだよなー。


「ハルカ・・・ああ、それで構わない。ありがとう。感謝する」

「その言葉は今はいりません。
治癒の専門家が治せない病を治せるかどうかなんて、自分でも分からないんですから」

「いいや。近いうちに失う覚悟をしなければならないと思っていた状況を思えば、少しでも希望を持たせてくれるハルカの存在には感謝しかない。
どんな病も治すと伝説にある神の森の果実を探して森に幾度と入ったが、芳しい成果も無く帰還していた。
今回私は下手を打ってしまったが、そのおかげでハルカと出会えたとも言える。
ハルカは私の恩人であり、今は甥を救う希望でもあるのだ」

「・・とりあえず、第一王子様にお会いできますか?」


両手を取られ熱っぽく語られる内容に内心ドキドキしながら、視線を少し逸らして話を終わらせた。







王子が第一王子の元に使いを出し、(・・・ああもう王子だらけでややこしいなこっちの王子は王弟殿下でいいや。本人が良いと言っても、人前でアルブレヒト様って名前呼びは馴れ馴れし過ぎてマズいような気もするし)暫くして返ってきた第一王子様側からの返答は午後からの訪問ならとの事で、それまでの数時間空くことが決まってしまった。


「すまない、ハルカ。この書類を処理する間待ってもらえるか。
終わったら騎士団の中を案内しよう」

「ああ、いえ、おかないなく。
部外者が歩き回るのは良くないと思いますので」

「年に一度、鍛練場など一部公開している場所もあるから構わないよ。
私が一緒にいて文句を言う者もいないだろうし」

「はあ・・・」


それは言えないから言わないだけだと思うよ、とは思っても言わなかった俺は日和見主義の元サラリーマンだ。


「では少しだけ待っていてくれ」

「はい」


頷くと、王弟殿下は執務机に向かいペンを持った。
脇の箱から書類を取り真剣に読むその顔はキリッと整い、どこから見ても出来る男の雰囲気を出していた。
殿下が集中し始めたのを確認し、俺は俺でやらなければならない事をする。
それは、自分のスキルの確認だ。
全体的にはうろ覚えだが、俺のスキルに治癒はあった筈だ。
だけど、なんか注釈がなかったっけ?
ほら、ゲームのスキルだって習得条件とか使用条件があったりするじゃん?

(ステータスオープン)

心の中で唱えると、目の前にタブレットサイズの画面が出てきた。



ハルカ ツヅキ

26歳 身長177センチメートル 体重62キログラム
健康状態良好
寿命16/100+-0
魔力量720/720+
レベル82/100+

火83/100+
水86/100+
土80/100+
風88/100+
光95/100+ 
聖95/100+ ※治癒の力はハルカツヅキの体液にのみ反応
闇50/100
無属性100/100+


ほら、あったよやっぱり。
つーか、これ使えなくないか?
俺の体液にのみ反応って・・・体液って、血とか?
それって自分にしか掛けられないって事じゃないか?
俺の血を飲ませたらそいつにも掛けられる?
え?普通に嫌なんだけど。
王弟殿下の時は・・・浄化して、森の果物食わせたら次の日には回復してた。
彼の言う「神の森の果実」。まさにそれだ。ついこないだまで効能なんて知らなくて毎日バクバク食ってたのは絶対に内緒にしよう。
っていうか。
俺の倉庫にソコソコの量は言ってるけど、あれはそう簡単に人前で出して良いものじゃない事くらい異世界初心者の俺にだって分かる。
神の森の存在はおいそれと明かしていいものじゃないし、明かしたところで誰一人として行くことなど出来はしない。
あの森は『神の森』だ。
そう考えると、自分がどういう存在なのか考えさせられるが、今はそれどころじゃない。
王子の治療をどうするかだよ。
治癒はもう効きにくくなってしまっていると言っていた。
方法はどうあれ俺が治癒を掛けて効果はあるのか?
投薬だって長くしていれば耐性が出来て効果が低くなる。
王子は今そんな状態なのだろうか。
魔法にもそんな事があるのか?
薬は、服用によって菌や細胞を壊し正常な状態で再生させるのが主な効果だろう。
じゃあ、治癒魔法って、なんだ?
逆再生のように傷が治っていくようなイメージだけど、そういう事なのか?
そんなチートな魔法が効かないって、末期じゃないか?
・・・そういえば、さっき殿下は聖魔法と言っていた。
治癒魔法は光属性で、聖魔法じゃない。
期待されているのは治癒魔法ではなくて、聖魔法・・・浄化?
殿下は第一王子の病気が闇の影響だと考えている?
それなら俺でもどうにかなりそうだ。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・話の流れが遅い ・作者が話の進行悩み過ぎてる

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...