私は女神じゃありません!!〜この世界の美的感覚はおかしい〜

朝比奈

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第1章

私はカッコイイと思います!

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「リッ、リオ嬢、あのっ、もう、顔、隠したので・・・」

私が顔を覆うようにして俯いていると、レオルドさんが遠慮がちな声で話しかけてきた。

「リオ嬢から見ても、その、・・・俺は醜い、ですよね。」

「そんなことっ!そんなことありませんっ!」

私はレオルドさんのその言葉に思わず、レオルドさんの腕を掴み、全力で否定した。

「えっ・・・。」

「レオルドさんが醜いだなんて、そんなこと絶対にありませんっ!それに、レオルドさんはやっぱり、私が昨日会った騎士様でしたっ!」

「それって・・・。」

「はい。私のレオルドさんの評価は先程話した通りです。・・・その、凄く、凄くカッコイイと思います!」

最後の方は声が小さくなってしまったが、私が顔を赤くしながらそう言うと、レオルドさんには伝わったようで、フードをおろし、「本当に?」と言いながら私の瞳を覗き込むように見つめてくる。

多分、レオルドさんからしたら、私が嘘をついてないかどうか知りたくて、素顔を晒して私の目を見てると思うんだけど、私からしたら、イケメンが至近距離で見つめてくるものだから、正直、恥ずかしすぎる。

「レ、レオルドさんっ!あのっ、はっ、恥ずかしいのであんまり、見ないで下さいっ!」

「えっ?・・・あっ、は、はいっ!」

そう言って、距離をとった後、チラリとレオルドさんを見てみれば、真っ赤な顔に喜びや戸惑い、緊張が浮かぶ青い瞳と目が合う。

「リ、リオ嬢。」

「はい・・・。」

「・・・」

「・・・?」

名前を呼ばれ返事をしたものの、その後何も言わなくなったレオルドさんを不思議に思いながら、何も言わずに待つ。

「ありがとうございます。」

「・・・え、?」

「・・・リオ嬢も俺の顔を見れば、きっと顔を顰めると、拒絶すると、思ってました。 ・・・今までが、そうでしたから。」

「なっ、!・・・。」

レオルドさんの言葉を聞き、
何を大袈裟な。そんな訳ないじゃないですか。
と、そう思った。

でも、レオルドさんのその悲痛な面持ちを見て私は、この世界ではそれが普通なのだと察し、何も言えずに、レオルドさんを見つめ返す。

「でも、リオ嬢は、俺の顔を見ても、顔を顰めないでいてくれて、こうやって目を合わせてくれて・・・。正直、とても驚いていると言いますか・・・。」

「生きてきた世界が違いますから・・・。」

そうだ。レオルドさんは私に感謝しているみたいだけど、別に私が優しいとかそんな訳じゃない。

それにしても、環境一つでこうも価値観が異なるものなのか。

「・・・異世界。ですか?」

「はいっ。・・・あのー、レオルドさん、敬語じゃなくて良いですよ?」

話を急に変えることにはなってしまったが、気になったのだから仕方がない。レオルドさんさえ良ければ、普通の友達のようにタメ口で話したい。

「え?」

「レオルドさんが何歳かは分かりませんが、そんなに歳も変わらないお思いますし・・・。」

「・・・19です。」

「えっ、」

「こ、今年で19になる。リ、リオ嬢は?」

「に、23歳になります・・・。レオルドさん、年下だったんですね。」

・・・すみません。レオルドさん。勝手に歳上だと思ってました。まさかの4つも歳下だったなんて。

「敬語。」

「えっ?」

「リ、リオ嬢の方が歳上なんだし、お、俺がタメ口なのに、リオ嬢が敬語って、変じゃ無いですか。」

「ふふっ、レオルドさん、敬語に戻ってるよ。」

「いや、これは、その、クセで・・・。」

ゴホン、ゴホン

と、その時、サジャールさんのわざとらしい大きな咳払いで私とレオルドさんはハッとしてサジャールを見る。

「あー。とりあえず、まぁ、良かったな。・・・うん。俺は用事があるからそろそろ行くわ。また後で、話、聞かせろよ、レオルド。」

サジャールさんはニコリと笑いそれだけ言うと、一度、厨房へ行き、昼食の、お礼を言うと、「じゃあな。」とだけ言い去ってしまった。

「「・・・・・・」」

「レオルドさん、この後、何か用事とかある?」

「いえ、特には・・・」

「では、街を案内してくれませんか?
私、元の世界に帰る為にも、まずはこの世界の事を知りたいんです。美醜の事もそうですが、この世界は私がいた世界とは異なる部分がまだあると思うんです。
だから、教えてくれませんか?」

「っ、!・・・えぇ、俺で良ければ。」

「ありがとうっ!」

この時、レオルドさんの声が少しだけ元気がないような気がしたのは気の所為だろうか。

「・・・レオルドさん、また敬語になってたよ?」

「リオ嬢も、たまに敬語に戻ってましたよ。あっ、も、戻ってたぞ?」

その言葉に顔を見合わせて二人でクスリと笑う。

「・・・いきなり言葉使いを変えるのって難しいですね。」

「・・・あぁ。」

「無理しなくていいよ。敬語が楽ならそれで。徐々に慣れてくれればいいから。私はそうする。」

「はい。そうですね。俺もそうします。」

そう言って、レオルドさんは苦笑いをすると、また顔を隠してしまった。

レオルドさんには失礼かもしれないが、ローブで顔を隠している方が、レオルドさんって感じがしてとても落ち着く気がした。

いや、苦笑いさえも絵になるイケメンが目の前にいれば落ち着けるものも落ち着けないのは当然かもしれない。

正直、レオルドさんがイケメン過ぎて心臓に悪い。先程までずっとバクバクと心臓がうるさい音を立てていた。

忘れてはいけない。この世界での評価は高くとも、私の感覚では、私は、地味で平凡。イケメンに対しての耐性なんて持ち合わせていない。

よって、イケメンの隣に並ぶなんて恐れ多い。と、思っている。

この後、私は日が沈む前まで、レオルドさんに町を案内して貰った。


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