私は女神じゃありません!!〜この世界の美的感覚はおかしい〜

朝比奈

文字の大きさ
上 下
25 / 45
第1章

惹かれる心2(レオルドさん視点)

しおりを挟む
急いで食堂に向かうと、エトアが言った通りリオ嬢が何も食べずに席に座っていた。

と、ここまで来て俺は昨日の夜、素顔を見られた事を思い出した。

もしかして、リオ嬢は昨日の醜い男が俺だと気づいていて、それを確かめるために待っていたんじゃ無いだろうか・・・。

浮き足立っていた心が僅かに痛む。

もしかしたら違うかもしれない。

ただ、単に俺と話がしたくて待っていてくれたのかもしれない。

だけど・・・。本当にそんな事が有り得るのだろうか。

だって、今まで俺の素顔を知ったあとも俺と話がしたいと言ってくれた女性はいなかったじゃないか。

だんだん暗い気持ちになって足取りが重くなる。

「あ、レオルドさんおはようございます!」

俺の姿を目にしたリオ嬢が笑顔で話しかけてくる。

「っ!?お、おはようございます・・・」

いつも通りに話しかけられた事に、一瞬、ビックリした俺は何とか普通に聞こえるように意識して返した。

「どうかしたんですか?」

不思議そうな顔をしてリオ嬢が俺を見つめる。

「い、いえ、あの、昨日は、その、」

「え?」

「なっ!なんでもありませんっ!」

「えと、はい。分かりました?」

リオ嬢から昨日の事について話を切り出されるなら俺から話そうと思い口を開くも、リオ嬢の顔をみるとやっぱり嫌われたくなくて誤魔化した。

やっぱり、昨日の醜い男が俺だってことに気づかれてないかもしれない。

なら、別に俺から言わなくても良いじゃないか。

いつかは嫌われるかもしれないが、別に今じゃなくてもいいだろ。

俺は話を切り出されるのが怖くて、朝食を受け取った後、リオ嬢とは別の席に座った。

しかし、朝食を受け取ったリオ嬢は何故か俺の隣に腰かけた。

「リ、リオ嬢っ!」

「ん?はい、なんですか?」

「き、今日も一緒に食べるんですか?」

俺は恐る恐る聞いてみる。

「はい、、あっ、すみません、もしかしてレオルドさん誰かと一緒に食べる約束でもしてましたか?」

「いえ、そういう訳では・・・」

ない、けど。

「?・・・そうですか、もし、お邪魔でしたら言ってくださいね。私、移動しますから」

「えっ?あ、いや、邪魔なわけっ、えと、俺は全然、良いんですけど、リオ嬢は、俺と一緒でも、良いんですか?」

やっぱり、昨日のことについて話をしたいのだろうか。

「えと、はい、勿論です。レオルドさんには他にも沢山聞きたいことがありますし・・・それに、私、レオルドさんとラナちゃんしか知っている人いなくて、一人で食べるのもちょっと・・・」

「そうですか。」

リオ嬢のその言葉に暗かった心が少しずつ軽くなって行くような気がした。

俺は、飯を食べるためマスクをずらし、隠していない頬が緩みそうになるのを抑えるため、目の前のパンとスープを黙々と食べ始めた。

今日の朝食はいつもよりもほんの少し美味しい気がした。

いつの間にか無言になっていた事に気づいた俺はふと、リオ嬢の事を伺う。

すると、何故か目の前の朝食に手をつけずにリオ嬢は俺の事をじっと見つめていた。

相変わらず、フードを深くかぶっているので、視線だけを動かして俺がリオ嬢の事を見ている事に気づいてないのかリオ嬢は無言でみてくる。

緊張と不安で段々と冷や汗が出てくる。

何故、俺はリオ嬢に見られているんだ?

よくよく見みるとリオ嬢の目は俺の手を追っている事が分かった。

スプーンを持つ手が震える。

まさか、俺が飯を食っているところをずっと見てたのか?

いやいや、そんなバカな・・・。

そう思いながらも恥ずかしさで顔が熱くなる。

これ以上見られるのは耐えられないと思った俺は手を止めてリオ嬢に懇願する。

「リ、リオ嬢、あ、あの、あんまり、見ないで、下さい。」

耳まで真っ赤になっているであろう顔が見られないように俺はフードを引っ張りさらに顔を隠す。

「えっ?あ、あのっ、すみませんっ!つい・・・」

と、リオ嬢の謝罪の言葉が聞こえてくる。

「つい」と言ったリオ嬢のその言葉にどういう意味かと考え、俺は首を振る。

もしかして、口元に何かついていたのか?

それとも、もっとパンを食べたかったのだろうか?

いやでも、リオ嬢の朝食にはほとんど手がつけられていないし・・・。

その後、空気を変えようと思ったのかリオ嬢の方から色々と話しかけてくれた。

しかし、俺はせっかくリオ嬢が話しかけてくれたのにも関わらず、上手く話を広げることが出来なかった。

何だか気まずい空気が流れる中、俺は幻聴を聞くことになる。

「レ、レオルドさんが食べている所って何だか色気がありますよね。」

「はい、そうですね・・・って、えぇっ!」

あれ?え?俺、今、なんて言われたんだ?

リオ嬢に言われた言葉の意味を理解するのに、時間がかかった俺は、意味を理解した後、なんだ、幻聴か。と思いリオ嬢を見た。

リオ嬢の真っ赤に染まった顔に、今の言葉が幻聴ではないと知り、つられたように顔が赤くなったのは、きっと、仕方のないことだと思う。

今まで、リオ嬢の事は綺麗な美人で高嶺の花と思っていたが、この時ばかりは可愛い一人の女の子にしか見えなかったのだから。

━━━━━━━━━━━━━━━
まだまだ、レオルドさん視点が続きます。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!

お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。 ……。 …………。 「レオくぅーん!いま会いに行きます!」

美醜逆転異世界で、非モテなのに前向きな騎士様が素敵です

花野はる
恋愛
先祖返りで醜い容貌に生まれてしまったセドリック・ローランド、18歳は非モテの騎士副団長。 けれども曽祖父が同じ醜さでありながら、愛する人と幸せな一生を送ったと祖父から聞いて育ったセドリックは、顔を隠すことなく前向きに希望を持って生きている。けれどやはりこの世界の女性からは忌み嫌われ、中身を見ようとしてくれる人はいない。 そんな中、セドリックの元に異世界の稀人がやって来た!外見はこんなでも、中身で勝負し、専属護衛になりたいと頑張るセドリックだが……。 醜いイケメン騎士とぽっちゃり喪女のラブストーリーです。 多分短い話になると思われます。 サクサク読めるように、一話ずつを短めにしてみました。

天使は女神を恋願う

紅子
恋愛
美醜が逆転した世界に召喚された私は、この不憫な傾国級の美青年を幸せにしてみせる!この世界でどれだけ醜いと言われていても、私にとっては麗しき天使様。手放してなるものか! 女神様の導きにより、心に深い傷を持つ男女が出会い、イチャイチャしながらお互いに心を暖めていく、という、どう頑張っても砂糖が量産されるお話し。 R15は、念のため。設定ゆるゆる、ご都合主義の自己満足な世界のため、合わない方は、読むのをお止めくださいm(__)m 20話完結済み 毎日00:00に更新予定

異世界転生〜色いろあって世界最強!?〜

野の木
恋愛
気付いたら、見知らぬ場所に。 生まれ変わった?ここって異世界!? しかも家族全員美男美女…なのになんで私だけ黒髪黒眼平凡顔の前世の姿のままなの!? えっ、絶世の美女?黒は美人の証? いやいや、この世界の人って目悪いの? 前世の記憶を持ったまま異世界転生した主人公。 しかもそこは、色により全てが決まる世界だった!?

何を言われようとこの方々と結婚致します!

おいも
恋愛
私は、ヴォルク帝国のハッシュベルト侯爵家の娘、フィオーレ・ハッシュベルトです。 ハッシュベルト侯爵家はヴォルク帝国でも大きな権力を持っていて、その現当主であるお父様にはとても可愛がられています。 そんな私にはある秘密があります。 それは、他人がかっこいいと言う男性がとても不細工に見え、醜いと言われる男性がとてもかっこよく見えるということです。 まあ、それもそのはず、私には日本という国で暮らしていた前世の記憶を持っています。 前世の美的感覚は、男性に限定して、現世とはまるで逆! もちろん、私には前世での美的感覚が受け継がれました……。 そんな私は、特に問題もなく16年生きてきたのですが、ある問題が発生しました。 16歳の誕生日会で、おばあさまから、「そろそろ結婚相手を見つけなさい。エアリアル様なんてどう?今度、お茶会を開催するときエアリアル様をお呼びするから、あなたも参加しなさい。」 え?おばあさま?エアリアル様ってこの帝国の第二王子ですよね。 そして、帝国一美しいと言われている男性ですよね? ……うん!お断りします! でもこのまんまじゃ、エアリアル様と結婚させられてしまいそうだし……よし! 自分で結婚相手を見つけることにしましょう!

なんて最悪で最高な異世界!

sorato
恋愛
多々良 初音は、突然怪物だらけの異世界で目覚めた。 状況が理解出来ないまま逃げようとした初音は、とある男に保護されーー…。 ※テスト投稿用作品です。タグはネタバレ。

異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。

バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。 全123話 ※小説家になろう様にも掲載しています。

美醜逆転の世界に間違って召喚されてしまいました!

エトカ
恋愛
続きを書くことを断念した供養ネタ作品です。 間違えて召喚されてしまった倉見舞は、美醜逆転の世界で最強の醜男(イケメン)を救うことができるのか……。よろしくお願いします。

処理中です...