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第1章
路地裏の魔術師
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井戸を離れた私は、小さな子供達の賑やかな声や、楽しそうに何かを話している町の人達の声を聞きながら、特に目的もなく町をブラブラと歩いた。
通りすがりに話しかけてくれる人が結構いてビックリしたが、コモスの町は私が前に住んでいた所と、あまり変わらない暖かな雰囲気があるような気がした。
武器の絵が描かれた看板が下がっているお店や、ゲームに出てくるような冒険者の人が目に入ると、やっぱり違う所何だな、と思い何だか自分がゲームの中に入った様な気分になる。
ちょっとした冒険をしているみたいだ。
頭の中にあの有名なゲームのオープニングソングが流そうになった所で私は誰かに服の端を引っ張られ、振り返る。
「お姉ちゃん、来て。」
そう言って私に話しかけて来たのは、10歳くらいの男の子で。
「キャシーが呼んでた。」
と言い私の服を掴んだまま引っ張っているのはラナちゃんと同い年くらいの女の子だった。
「えっと・・・、キャシーって誰?」
いきなりの事にビックリしながらも私の事を呼んでいると言う人の事を聞いてみる。
しかし、二人に行けばわかると言われ、早く早くと急かすように背中を押され、私は言われるがまま二人の後をついて行った。
▽
二人の子供に連れてこられたのは路地裏だった。
人通りがない路地裏は先程までいた場所とは雰囲気が異なり何処か薄気味悪く冷たい所だった。
キャシーと呼ばれた女性は二人の子供に何やらお金のような者を渡すと「しばらく、向こうで待ってなさい。」と言い私の方を見た。
「初めまして、お嬢さん。いきなりごめんなさいね。」
申し訳なさそうにそう言ったのは私とそう変わらないくらいの年齢の女性で大きな水晶が置かれている所を見ると占い師か何かだろうか。
「えと、貴女は誰ですか。なぜ、私を?」
「私?私は魔術師よ。皆にはキャシーと呼ばれているわ。あの子達に貴女を連れてきてもらったのは、貴女の魔力が異常だったから、かしらね。ねぇ、貴女は何者なの?もしかして、私のお仲間かしら?」
後半はなんの事だか分からなかったが、キャシーさんの言った魔術師という言葉に私は瞳を輝かせて聞いた。
「ま、魔術師って、魔法とか使えるんですかっ!」
「えっ。えぇ、そうよ。当たり前じゃない。魔法が使えなくて魔術師は名乗れないわよ。」
「えぇっ!す、凄い・・・。」
「はい?凄いって、何なのよ。貴女には言われたくないわ。」
「え、何でですか?」
「何でって・・・、まさか貴女、魔術師じゃ無いの?」
「はい、違いますよ。」
「えぇっ!嘘でしょっ!そんなに魔力を持ったいるのにっ?」
「えぇっ!私に魔力とかあるんですか?」
衝撃的な事実にお互い無言で見つめ合う。やがて、先に口を開いたのはキャシーさんだった。
「あるも何も、今まで見たことないくらい沢山あるわよ。ねぇ、それだけの魔力を持っていて何故、魔術師じゃ無いの?」
キャシーさんが真剣な表情で私にそう聞いてきた。
魔法があると知った今、私の話を信じてくれるんじゃないかと思った私はキャシーさんに正直に話す事にした。
「キャシーさん、私、魔法がない別の世界からきたんです。」
魔術師であるキャシーさんなら何か知っているかもしれない、そう思い私もキャシーさんの目を真剣に見つめて言った。
「別の、世界・・・?」
しかし、キャシーさんは意味が分からないと顔に出しながら私を見つめ先を促してくる。
「はい。異世界といいますか、こことは全く異なる世界から来たんです。私の世界には魔術師と言う職業は無いし、そもそも魔法なんて使える人いません。」
私は出来るだけ丁寧に、キャシーさんに伝わるように話した。だが、キャシーさんから帰ってきた言葉は、私が望まないものだった。
「・・・もしかして、私の事をからかってるのかしら?」
そう言ったキャシーさんの目は鋭く、怒っているように見えた。
まさか魔術師であるキャシーさんにそう言われるとは思ってなかった私は慌てて首を振る。
「ち、違います!からかってなんていませんっ!私は本当にっ・・・」
「リオ嬢っ!」
その時、突然聞こえたその声に振り返れば走ってこちらに向かって来るレオルドさんとエトアさんが見えた。
「レオルドさんっ!?何で此処に・・・」
「リオ嬢っ、そこから離れて下さいっ!」
レオルドさんの焦った声に私は状況が把握出来ずに固まった。
「はぁ、もう少し話したかったんだけど、相変わらず仕事が早い奴らだ。」
その時、先程とは違い低い男の人の様な声が後ろから聞こえ、ビックリして振り返りると、目の前で淡い光と共にキャシーさんの姿が突然消えた。
目の前で起こった非科学的な現象に目を丸くしているとレオルドさんに肩を掴まれた。
「リオ嬢っ!大丈夫ですかっ!」
「えっ?あぁ、はい。」
困惑しながらも私がレオルドさんにそう返すとエトアさんが悔しそうに顔を歪めながら言った。
「また逃げられましたね。あの転移魔術の速さを見るにあれは人形か何かでしょうか。」
「それは分からない。でも、この町にヤツがいる事が分かったんだ。とにかく、団長に報告するのが先だ。」
「そうですね。」
「・・・」
(あの、一体何があったんでしょうか・・・。)
レオルドさん達の会話から、レオルドさん達がキャシーさんのことを追っている事は何となく分かったけど、それ以外の事は何が何だかさっぱり分からなかった私は、質問をするタイミングを伺っていた。
すると、エトアさんは貼り付けた様な笑みで私に近づき問いかけた。
「それで、アイハラさんはこんな所で奴と何をしてたんですか?」
言われてもないのに「逃がさない」なんて言葉が聞こえた気がするのは私の気の所為だろうか。
私の今の心情を表すなら蛇に見つめられたカエルだ。
私はエトアさんから目を離すことが出来ぬまま、唾をゴクリと飲み込んだ。
あれ?もしかして私、疑われてます??
通りすがりに話しかけてくれる人が結構いてビックリしたが、コモスの町は私が前に住んでいた所と、あまり変わらない暖かな雰囲気があるような気がした。
武器の絵が描かれた看板が下がっているお店や、ゲームに出てくるような冒険者の人が目に入ると、やっぱり違う所何だな、と思い何だか自分がゲームの中に入った様な気分になる。
ちょっとした冒険をしているみたいだ。
頭の中にあの有名なゲームのオープニングソングが流そうになった所で私は誰かに服の端を引っ張られ、振り返る。
「お姉ちゃん、来て。」
そう言って私に話しかけて来たのは、10歳くらいの男の子で。
「キャシーが呼んでた。」
と言い私の服を掴んだまま引っ張っているのはラナちゃんと同い年くらいの女の子だった。
「えっと・・・、キャシーって誰?」
いきなりの事にビックリしながらも私の事を呼んでいると言う人の事を聞いてみる。
しかし、二人に行けばわかると言われ、早く早くと急かすように背中を押され、私は言われるがまま二人の後をついて行った。
▽
二人の子供に連れてこられたのは路地裏だった。
人通りがない路地裏は先程までいた場所とは雰囲気が異なり何処か薄気味悪く冷たい所だった。
キャシーと呼ばれた女性は二人の子供に何やらお金のような者を渡すと「しばらく、向こうで待ってなさい。」と言い私の方を見た。
「初めまして、お嬢さん。いきなりごめんなさいね。」
申し訳なさそうにそう言ったのは私とそう変わらないくらいの年齢の女性で大きな水晶が置かれている所を見ると占い師か何かだろうか。
「えと、貴女は誰ですか。なぜ、私を?」
「私?私は魔術師よ。皆にはキャシーと呼ばれているわ。あの子達に貴女を連れてきてもらったのは、貴女の魔力が異常だったから、かしらね。ねぇ、貴女は何者なの?もしかして、私のお仲間かしら?」
後半はなんの事だか分からなかったが、キャシーさんの言った魔術師という言葉に私は瞳を輝かせて聞いた。
「ま、魔術師って、魔法とか使えるんですかっ!」
「えっ。えぇ、そうよ。当たり前じゃない。魔法が使えなくて魔術師は名乗れないわよ。」
「えぇっ!す、凄い・・・。」
「はい?凄いって、何なのよ。貴女には言われたくないわ。」
「え、何でですか?」
「何でって・・・、まさか貴女、魔術師じゃ無いの?」
「はい、違いますよ。」
「えぇっ!嘘でしょっ!そんなに魔力を持ったいるのにっ?」
「えぇっ!私に魔力とかあるんですか?」
衝撃的な事実にお互い無言で見つめ合う。やがて、先に口を開いたのはキャシーさんだった。
「あるも何も、今まで見たことないくらい沢山あるわよ。ねぇ、それだけの魔力を持っていて何故、魔術師じゃ無いの?」
キャシーさんが真剣な表情で私にそう聞いてきた。
魔法があると知った今、私の話を信じてくれるんじゃないかと思った私はキャシーさんに正直に話す事にした。
「キャシーさん、私、魔法がない別の世界からきたんです。」
魔術師であるキャシーさんなら何か知っているかもしれない、そう思い私もキャシーさんの目を真剣に見つめて言った。
「別の、世界・・・?」
しかし、キャシーさんは意味が分からないと顔に出しながら私を見つめ先を促してくる。
「はい。異世界といいますか、こことは全く異なる世界から来たんです。私の世界には魔術師と言う職業は無いし、そもそも魔法なんて使える人いません。」
私は出来るだけ丁寧に、キャシーさんに伝わるように話した。だが、キャシーさんから帰ってきた言葉は、私が望まないものだった。
「・・・もしかして、私の事をからかってるのかしら?」
そう言ったキャシーさんの目は鋭く、怒っているように見えた。
まさか魔術師であるキャシーさんにそう言われるとは思ってなかった私は慌てて首を振る。
「ち、違います!からかってなんていませんっ!私は本当にっ・・・」
「リオ嬢っ!」
その時、突然聞こえたその声に振り返れば走ってこちらに向かって来るレオルドさんとエトアさんが見えた。
「レオルドさんっ!?何で此処に・・・」
「リオ嬢っ、そこから離れて下さいっ!」
レオルドさんの焦った声に私は状況が把握出来ずに固まった。
「はぁ、もう少し話したかったんだけど、相変わらず仕事が早い奴らだ。」
その時、先程とは違い低い男の人の様な声が後ろから聞こえ、ビックリして振り返りると、目の前で淡い光と共にキャシーさんの姿が突然消えた。
目の前で起こった非科学的な現象に目を丸くしているとレオルドさんに肩を掴まれた。
「リオ嬢っ!大丈夫ですかっ!」
「えっ?あぁ、はい。」
困惑しながらも私がレオルドさんにそう返すとエトアさんが悔しそうに顔を歪めながら言った。
「また逃げられましたね。あの転移魔術の速さを見るにあれは人形か何かでしょうか。」
「それは分からない。でも、この町にヤツがいる事が分かったんだ。とにかく、団長に報告するのが先だ。」
「そうですね。」
「・・・」
(あの、一体何があったんでしょうか・・・。)
レオルドさん達の会話から、レオルドさん達がキャシーさんのことを追っている事は何となく分かったけど、それ以外の事は何が何だかさっぱり分からなかった私は、質問をするタイミングを伺っていた。
すると、エトアさんは貼り付けた様な笑みで私に近づき問いかけた。
「それで、アイハラさんはこんな所で奴と何をしてたんですか?」
言われてもないのに「逃がさない」なんて言葉が聞こえた気がするのは私の気の所為だろうか。
私の今の心情を表すなら蛇に見つめられたカエルだ。
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