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しおりを挟む「リズベット嬢は誰にでも媚びを売るのですね」
ライル様にそんなことを言われたのは、残り期間一ヶ月をきったある日のことだった。
正直、ライル様との関係は最初に比べ日に日に良くなっていっていると思っていた。
昨日だって、ボルドー様にはおかしいと言われたけれど、ライル様に手作りのお菓子を作ってまた持っていった。そして、やっと素直に「美味しい」と言って貰えたのだ。
聞き間違いだろうか・・・・・そんなことは無いと分かっているのにどうしてもそう疑ってしまう。
「ラー、ティル、様・・・?」
「貴女は殿下のことが好きなはずでしょう? それなのに、ボルドー様も狙っているのですか? ああ。それとも乗り換えたのですか? 」
ライル様は私の方を一度も見ようともせずに、不機嫌さを隠さずトゲのある言葉を口にする。
私が何も言えずにいるとライル様はバツの悪そうな顔をして頭を下げた。
「すみません。なんでもありません、今のは・・・・・忘れてください」
「・・・・・ライル様だけですよ 」
( 媚びを売りたいのも、好きになって貰いたいのも。・・・・・貴方だけです )
そう思いを込めて小さく呟いた。
しかし何やら考え事をしているのか、ライル様には聞こえていなかったみたいで反応されなかった。
私は今後のことについて、もっと真剣に考えなければとこぶしを握った。
もう期限は1ヶ月を切った。お母様からも先日、手紙が届いた。・・・・・お金を貰い平民として生きるか、それとも修道院か・・・・・
(勿論。私は平民として生きることを選んだ。)
どうやら先日。とうとう、私がならず者と通じている事や、ソフィアに対しての仕打ちに両親が気づいたみたいで、未来の王太子妃であり歌で人々を癒す奇跡の力を持つ少女に嫌われないように立ち回ろうとしているみたいだ。
一応私もそろそろソフィアと一度話をすべきだと思い、ソフィアの所へ何度か足を運んだ。
(でも・・・・・ソフィアに謝ろうと思い近づこうとする度、殿下やその周りの方々のガードが固くて巧みに避けられるのよね。)
(しかもソフィアはそれに気づいてないし・・・・・)
最近癖になっているため息がまたもれそうになる。 今はライル様の手前、ため息なんてつかないが、もし今が一人ならいつもの2倍は、いや、3倍くらいのため息が出ただろう。
(・・・それにしても、ライル様は私がボルドー様に媚びを売っているように見えたってこと?
だとしたらそれは間違いなのだけれど・・・・・
・・・・・もしかして、ぶりっ子の演技をしているせいでそう見えていたのかしら?)
だとしたらライル様の前でだけ素に戻る私は、ライル様にどう見えているのかしら?
チラリとライル様に視線をむける。
相変わらずライル様は難しい顔をしていた。
私の視線に気づく様子は無い。
「・・・・・」
(もういっその事、一思いにライル様に告白してみる?
そうしたらライル様は少なくとも今よりは私のことを見てくれるんじゃないかな?
そうゆう恋の始まり方もありよね?
うーん。でも、その前に、信じてくれるかな・・・・・
あーでも。ライル様が好きだってことは伝わらなくても、せめて殿下の事はもう興味が無いって事は伝えたい)
新たな目標を胸に私は思考をめぐらす。
作戦の見直しと作成。
ギャップ作戦はやめた方がいいのかもしれない・・・・・
(まあ。とりあえず。そうと決まったら行動しなきゃ!!
・・・・・流石に今すぐ「告白」は無理だけれど、きちんとオシャレして、二人きりの時に・・・・・)
「善は急げよね」
ーーーーーわたしにはもう悠長にしてられる時間なんて無いんだから・・・・・
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