私、勘当寸前のぶりっ子悪役令嬢ですが、推しに恋しちゃダメですか?

朝比奈

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「ライル様が大好きなんです」

私は胸を張って、満面の笑みで正直な気持ちを伝えた。

ライル様は目を大きく見開いて驚いていた。何かを言おうと口を開いたり閉じたりしている。

「あの·····、それって·····」
「ふふふ、いきなり私にそんな事言われても困っちゃいますよね、ごめんなさい。でも、信じてくれませんか?」

「·····信じるも何も、リズベット嬢が好きなのは───」
「ライル様ですよ」
「っ、!!」
「貴方が好きなんです」

信じてください、私はそう思いを乗せてライル様をまっすぐ見つめた。でも、ライル様の戸惑った顔に思わず苦笑いをもらす。

「何故?  って思ってますよね? 」
「·····」
「以前の私はナーシアス殿下の事が好きだったし、ソフィアのことを妬み、嫌い、嫌がらせはもちろん、謝っても許されないようなことも、沢山してきたんですから·····」

自分で言っていてだんだんと視線がさがる。そうだ。私がしてきたことは決して許されることではない。

それはいくら記憶を思い出したあと、嫌がらせなんてして無い、ナーシアス殿下の事はもう諦めたと言っても関係ない。

私は、ソフィアに謝らないといけなかった。

このままシナリオ通りに進むためにぶりっ子を継続して嫌われようだとか。
反省して真面目になり、ソフィアとの仲が改善されたらシナリオが変わってしまうからとか·····。

理由は沢山考えることが出来る。

ただのいじめっ子である自分を正当化させるための、私のただの言い訳は。

本当にライル様に好かれたいのなら、する事はまず一つだったのに。

(でも、もう今更遅いわ)

私は胸の内に溢れる後悔を見ないふりをして、ライル様の先程の質問の答えを口にした。今度は茶化すような喋り方ではなく、真剣に。

「さっきの質問の答え、どっちも私ですよ」

殿下に付きまとっていたのもソフィアを虐めていたのも·····どっちも私のした事。

前世の記憶を思い出さなかったら、私は今でも同じ事をしていたはずだ。

「ああ、人が変わったようになった訳はですね。実家から、勘当宣言を受けたんです。だから、2ヶ月ほど前に心を入れ替えることにしました。もう少し周りを・・・、視野を広げようと思ったんです。」
「リズベット嬢──」
「ああ。後は、忘れていた記憶を、不思議な夢を見たんです。だから、」
「リズベット嬢っ!!」

ふわり、優しい香りが鼻を擽った。ライル様が私の頬に手を伸ばしている。え、なんで──。

「泣かないで下さい」
「·····え?」

言われて気づいた。いつの間にか私は泣いてしまっていたらしい。

ああ。私は本当に·····

「ライル様、好きです。だから、今はまだ振らないでください。まだ、好きでいさせてください。勘当されたら、私、大人しくいなくなる、から·····」

   ああ。私はいつからこんなに弱くなってしまったんだろう。もしかしたらに掛けてみようと思ったのに、そのもしかしたらすら期待出来なくなるほどに、自分に自信が無い。ライル様に選んでもらう自信が。

「リズベット嬢」
「·····はい」
「最後にひとつ確認させてください。ナーシアス殿下の事はどう思っているんですか」
「もう何とも、思って──」
「じゃあ、本当にっ·····。  俺、自惚れても·····、リズベット嬢の言ったことを信じても良いんですか?」
「···············え?」
(信じて·····くれるの?)

私はこれでもかと言うほど目を見開いて、ライル様を見つめる。心做しか頬が色づいて見えるライル様に私の心臓が呼吸を始めた。

「はぃ」
私の小さくか細い声に、ライル様が嬉しそうに微笑んだ。

「聞きたい事は沢山あるけど、とりあえず、泣き止んで下さい。」
「あっ·····ごめっ」
「俺も」
「····?」

恥ずかしくなって下を向いた私はライル様の優しい声に思わず顔を上げた。

「あなたが好きです」
「~~~~!!!!」

·····推しに撃ち抜かれました。

ライル様の尊すぎるふにゃりとした笑顔をまじかで見た私は、過去最大で赤くなっている顔とうるさい心臓を自覚しながらも、無意識に鼻にハンカチを押し当て、その場に座り込んだ。

「リズベット嬢!!大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫です·····。そ、それよりも、ライル様、今·····」
「あ、えと·····、なんだか恥ずかしいですね。 本来、平民が伯爵令嬢に告白なんて有り得ない事ですし·····。それに、俺も今、自覚したんで」
「自覚って·····」

ライル様は一度言葉を紡ぐと、私の前に膝をついて手を取り、キスを落とした。

(キキキ、キス!手に、ライル様の、唇がっ!!)
「つっ、!!!!ライル様っ!?」

荒れ狂う私の内心はライル様には聞こえないらしい。真剣な顔でライル様は話を続ける。

「俺、リズベット嬢に泣かれるとダメみたいです。誰にも譲れないと思ってしまったから·····」
「え?」
(それは、どういう·····?)

「リズの涙を拭うのは、他の人じゃなくて、俺がいい。 他の人に泣いているリズを見せたくない」
「う·····、ら、ライル様?」

まって、まって!これって本当に現実なの!?  私、今日、死んじゃうの!?  って、あれ?今のライル様の言葉って·····、泣いているソフィアを王子にわざと見つけさせた時のシーンと·····

「リズ、俺と──」

(そそ、そう言えば!さっきから、りりり、リズって!!呼び捨てっ──!!)

「結婚して下さい」

「······························ぇ?」

ボンッと顔から湯気が出るくらい真っ赤になっていた私は、ライル様のかいしんのいちげきで、とうとう意識を手放した。


───────────────────
更新遅くてすみません。リアルが忙しすぎて、中々、執筆できず·····
ここまで読んでくれた皆様、ありがとうこざいました。
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