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閑話 ボルドーの初恋 前編
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※この話は読まなくても大丈夫ですが、読めば9.10.11でのボルドーの心境が少し分かりやすくなると思います。
これはこれで短編。みたいな感じでお楽しみいただければ幸いです。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
俺の名前はボルドー。
ローニア伯爵家の三男で今はナーシアス殿下の側近としてそばに使えている。だが、その裏では己の手を血で染める暗殺者として、または小さな情報も逃さない諜報員として夜の街を飛び回っている。
これはそんな俺が、「人殺しなんてしたくない」そんな思いを抱え師の元を飛び出した日のちょっとした昔話だ。
▽
「僕はあんさつしゃにはなりたくありませんっ! お父様。僕は民を守るカッコイイ騎士になりたいのです!」
それが俺が初めて我が家の家業について父親から話を聞いた時に言った言葉だ。
昔から俺は騎士に憧れていた。
それはきっと、母親が夜寝る時に読んでくれる物語に出てくる騎士が凄くキラキラして見えたから。ただそれだけ。それでも俺は将来、人々を守る騎士になりたいと、そう願っていた。
だが。現実は残酷にも俺の夢を打ち砕いた。
結局。俺の希望は聞き届けられることなく・・・・・俺は7才の誕生日を迎えた翌日。暗殺者を育てる為の養成所に押し込まれた。
その時、俺は必死に両親に泣き叫び手を伸ばしたが、振り向きもせずに遠くに行ってしまったその背中に俺は酷く裏切られた気持ちになった。
▽
その養成所での生活は酷く辛いものだった。
教えてくれる師はいつも無表情で、なんの感情も伺えない目や話し方に俺はいつもビクビクしていた。
あざの耐えない、そんな生活が続く中。俺は一度だけこっそりとその養成所を抜け出した。
今思えば、師が俺が抜け出したことに気が付かないわけが無いのだが・・・・・
それでもその時の俺は抜け出せた達成感にそこまで頭が回らなかった。
▽
始めてくる街はとても賑やかで、その時8才になったばかりの俺にとっては凄くワクワクするものだった。
それでもずっと走っていた足は疲れ、休むために路地裏に入った。
するとそこにはガラの悪い大人が3人ほど立っていて、そいつらは俺の存在に気がつくと優しく声をかけてくれた。
「おい坊主。どこのガキだか知らねぇが、一人で路地裏に入るんじゃねぇ。家まで送ってってやるから、早く出ろ」
「えっ・・・・・あのっ、僕・・・・・」
怖いと思っていた人達に予想以上に優しく声をかけられ僕は混乱した。
「お、お兄さんたちは誰・・・・・?」
見た目より怖い人達じゃないのかもしれない・・・・・俺は恐る恐るそう聞いた。
「あ?俺たちか? 俺たちはこの街のけん──」
「ちょっと!!あなた達何をしているの!!」
僕の質問に怖いお兄さんたちが応えようとした時。1人の少女が路地裏に飛び込んできた。
「あなた一人!? 早くこちらに来なさいなっ!!」
少女は仁王立ちのままそう言うと僕の手を引っ張って駆け出した。
「おいっ!ちょっ、待てっ!!」
怖いお兄さんたちのそんな声が聞こえたけど、少女は振り向きもせずに僕を引っ張った。
▽
今思えば、彼らがあの町の憲兵で、路地裏に迷い込んだ俺のことを助けようとしてくれていたとわかるのだが・・・・・
俺も彼女もそんなこと知らずに逃げてたんだよな・・・・・
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
続きます・・・・・
これはこれで短編。みたいな感じでお楽しみいただければ幸いです。
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俺の名前はボルドー。
ローニア伯爵家の三男で今はナーシアス殿下の側近としてそばに使えている。だが、その裏では己の手を血で染める暗殺者として、または小さな情報も逃さない諜報員として夜の街を飛び回っている。
これはそんな俺が、「人殺しなんてしたくない」そんな思いを抱え師の元を飛び出した日のちょっとした昔話だ。
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「僕はあんさつしゃにはなりたくありませんっ! お父様。僕は民を守るカッコイイ騎士になりたいのです!」
それが俺が初めて我が家の家業について父親から話を聞いた時に言った言葉だ。
昔から俺は騎士に憧れていた。
それはきっと、母親が夜寝る時に読んでくれる物語に出てくる騎士が凄くキラキラして見えたから。ただそれだけ。それでも俺は将来、人々を守る騎士になりたいと、そう願っていた。
だが。現実は残酷にも俺の夢を打ち砕いた。
結局。俺の希望は聞き届けられることなく・・・・・俺は7才の誕生日を迎えた翌日。暗殺者を育てる為の養成所に押し込まれた。
その時、俺は必死に両親に泣き叫び手を伸ばしたが、振り向きもせずに遠くに行ってしまったその背中に俺は酷く裏切られた気持ちになった。
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その養成所での生活は酷く辛いものだった。
教えてくれる師はいつも無表情で、なんの感情も伺えない目や話し方に俺はいつもビクビクしていた。
あざの耐えない、そんな生活が続く中。俺は一度だけこっそりとその養成所を抜け出した。
今思えば、師が俺が抜け出したことに気が付かないわけが無いのだが・・・・・
それでもその時の俺は抜け出せた達成感にそこまで頭が回らなかった。
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始めてくる街はとても賑やかで、その時8才になったばかりの俺にとっては凄くワクワクするものだった。
それでもずっと走っていた足は疲れ、休むために路地裏に入った。
するとそこにはガラの悪い大人が3人ほど立っていて、そいつらは俺の存在に気がつくと優しく声をかけてくれた。
「おい坊主。どこのガキだか知らねぇが、一人で路地裏に入るんじゃねぇ。家まで送ってってやるから、早く出ろ」
「えっ・・・・・あのっ、僕・・・・・」
怖いと思っていた人達に予想以上に優しく声をかけられ僕は混乱した。
「お、お兄さんたちは誰・・・・・?」
見た目より怖い人達じゃないのかもしれない・・・・・俺は恐る恐るそう聞いた。
「あ?俺たちか? 俺たちはこの街のけん──」
「ちょっと!!あなた達何をしているの!!」
僕の質問に怖いお兄さんたちが応えようとした時。1人の少女が路地裏に飛び込んできた。
「あなた一人!? 早くこちらに来なさいなっ!!」
少女は仁王立ちのままそう言うと僕の手を引っ張って駆け出した。
「おいっ!ちょっ、待てっ!!」
怖いお兄さんたちのそんな声が聞こえたけど、少女は振り向きもせずに僕を引っ張った。
▽
今思えば、彼らがあの町の憲兵で、路地裏に迷い込んだ俺のことを助けようとしてくれていたとわかるのだが・・・・・
俺も彼女もそんなこと知らずに逃げてたんだよな・・・・・
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
続きます・・・・・
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