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しおりを挟む「えっとぉ~、貴方はぁ、どちら様?ですかぁ~? リズにぃ~、何か用ですかぁ~?」
内心、酷く冷や汗をかきながらも私は満面の笑みと甘い声でボルドーに話しかけた。
「おや? 俺の事をご存知でないので?」
「は、はぃ~。お姿をお見かけしたことはあるんですが・・・・・」
先程の軽いイメージと一転してボルドーが射抜くような眼差しで私を見つめてくるのでだんだんとタメ口がとけ敬語になってしまう。
「ほぅ。そうですか・・・・・。これは失礼しました。俺はナーシアス殿下の側近の一人です。・・・・・どうぞ、ボルドーとお呼びください」
「ボ、ボルドー様ですねぇ~。・・・・・えっと、私に何の用ですかぁ~?」
「いえ。特にこれと言った用は無かったのですが、何かお探しのようでしたので・・・・・」
「そ、そうなんですかぁ~。うふふ、えっとぉ~じゃあリズはこの後、用事があるので先に失礼しますねぇ~」
と、とにかく早く逃げないと・・・・・私はボルドー様に早口で別れを告げると早くその場を離れようと背を向けた。その時・・・
「ラーティル・ドアリアに近づいて何を企んでいる」
感情を感じさせないそんな声が耳元で聞こえた。
突然のことに思わずひゅっと喉がなり動けなくなる。
今、後ろを振り向けば殺られるのでは無いか・・・・・そう思わせるほどに緊張した空気が私たちの間に流れる。
私は前を向いたまま何かを答えようとしたけれど、恐怖で固まった喉から出るのはただの空気だけで私は一言も声に出すことが出来なかった。
「リズベット・ダウト・・・・・貴女が頭の回る女だと言うことはよく分かっている・・・・・貴女がなぜ子供にも分かるような演技を続けているのかは知らないがこれ以上余計な事はしない事だ」
「余計な・・・・・こと・・・・・?」
「以前から貴女の行動は時折、監視させてもらっていた。最近の貴女の行動は謎が多いが・・・・・大方、ラーティルに取り入って何かよからぬ事を企んでいるんだろう? 」
「そ、んな、ことはっ──」
「単刀直入に言おう。殿下やその周りの方々に近づくな。・・・・・死にたくなければな」
「っっ、!!」
(死にたくなければ・・・・・
殿下やその周りの人に近づかない?
それって・・・・・ライル様にも?)
冷や汗の止まらない緊張感の中。ボルドー様の言葉が私の頭の中を何度も回る。
そして数秒後、私はボルドー様の言葉を理解した。
(それってつまり・・・・・ライル様に近づくなってこと??
そんなの・・・・・)
「・・ぃや・・す」
「は?」
「いやっ、! 嫌です!! ライル様が目の前にいるのにっ、同じ世界で生きているのにっ! ただ黙って見てるだけなんてっ!! 絶対に嫌よっ!!!」
私は気がつけば全力でそう叫んでいた。
そしてその勢いのままボルドー様に詰め寄り本棚を使って壁ドンをした。
「殿下やソフィアにはもう近づかないわっ!! けれどライル様は嫌よっ!! 」
・・・・・だって、ずっと好きだったんだもの。 嫌われてるって分かってても諦めきれないんだものっ!!
私の頬を一粒の大きな雫がつたい胸元に落ちた事も気にせず、目の前にいる男が暗殺者だと言うことも忘れてキッときつく睨みつけた。
や、やりすぎたかしら・・・・・
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