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しおりを挟む「ラーティル様ぁ~、今日はぁ、リズベットと一緒にぃ、お勉強しませんかぁ~?」
今日も今日とて私はライル様に全力でかまった。調理実習ではさも当然かのようにライル様と同じ班になり、模写の時間も隣を陣取った。
そして今、やっと授業が終わり帰宅しようとしていたライル様をさらに引き止めいている。
さすがにやり過ぎかな?とは思った。
でも、私にはもう時間が無いのだ。一分一秒、無駄に出来ない。
「えっと・・・、今日は・・・」
「なにか用事があるんですかぁ~?」
なにやら歯切れの悪いライル様に私はくびをかしげた。
「すみません。今日は、ソフィア様とナーシアス殿下の所にいかなければならないので・・・」
そう言ってライル様は申し訳なさそうに眉を下げたが、私は正直ムッとした。
ソフィアと王子はもう付き合ってるはずでしょ!? なんで、ライル様を呼びつけるのよ!二人で勝手にイチャラブしとけばいいじゃない!!
今世の、わがままで嫉妬深い私が少し顔を出す。
「断ればいいのに・・・」
「え? 今、なん──」
私はハッとして、すぐに取り繕った。
「い、いや? なんでもないよォ~! えと、じゃあ、仕方がないねぇ!また今度さそうよぉ~。じゃあ、またねぇ~!」
ちょっと、下手くそだった気もするが、まぁ、これでいいだろう。私はライル様に手を振って駆け足でその場を離れた。
▽
「はぁぁぁ」
思わず思いため息をついた。
ここは図書館。本当なら、今頃ライル様と図書館でデートするはずだったのにと、私は不貞腐れた。
いや、分かってる。ライル様は忙しい人だ。なんせ、平民なのに王子にその頭脳と内面を認められ、友人と呼ばれるくらいなのだから・・・。でも・・・。
ぐるぐると嫌な思考が頭にくる。
ライル様はソフィアが好き。ソフィアはその気持ちに気づいてる。王子は・・・、分かんないけど。小説にはそこの所は書かれてなかったからな・・・。
「はぁぁぁぁぁ」
また、ため息が漏れた。
先程よりも深く重いものだ。
(私はライル様とソフィアを会わせたくない)
自分でも酷く自分勝手だとは分かってる。
でも・・・。ソフィアのそばに居ることで、ライル様がソフィアのことを諦められなくなったらどうしよう・・・・・だとか、ソフィアがライル様に興味を示したらどうしようと考えてしまうのだ。いや、それは多分ないと思うけども。
また漏れそうになったため息を飲み込み、私はなにか気分が上がるものがないかと、図書館をまわった。
「なにか捜し物でも?リズベット嬢?」
そして、何となく歴史書が並んでいるところを見つめていると、紫色の髪と目の青年に話しかけられた。
私はその見覚えのある顔にカチリと体が固まった。
(う、そ・・・。なんで、ボルドーがここにいるの?)
「・・・・・・」
「おや?無視ですか?それは少し悲しいですね」
わざとらしく傷ついた振りをした彼は、それでも石化したように動かなくなった私を見て、カラリと笑った。
「貴女は男性なら誰にでも媚びを売ると思っていたのですが・・・。もしかして、俺には魅力がないんでしょうか?」
今、私の目の前で失礼なことを言う男。
彼は王子から一番の信頼を得ている側近。しかしそれは表の顔で、本当の彼は暗殺者だ。
もちろん彼は私がその事を知っていることを知らないだろう。当たり前だ。これは前世の知識。つまり、小説から得た情報なのだから・・・。
ちらりと周りを見渡す。うん。誰もいない。さっきまで数人の生徒がチラホラ見えたはずの図書館はシーンと静まり返っていた。
私は目の前にいる彼。もとい暗殺者と図書館に二人きりという状況に最早何も言えずに引きつった笑みを浮かべた。
これ、どうすれば良いの!?
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