9 / 23
9
しおりを挟む「ラーティル様ぁ~、今日はぁ、リズベットと一緒にぃ、お勉強しませんかぁ~?」
今日も今日とて私はライル様に全力でかまった。調理実習ではさも当然かのようにライル様と同じ班になり、模写の時間も隣を陣取った。
そして今、やっと授業が終わり帰宅しようとしていたライル様をさらに引き止めいている。
さすがにやり過ぎかな?とは思った。
でも、私にはもう時間が無いのだ。一分一秒、無駄に出来ない。
「えっと・・・、今日は・・・」
「なにか用事があるんですかぁ~?」
なにやら歯切れの悪いライル様に私はくびをかしげた。
「すみません。今日は、ソフィア様とナーシアス殿下の所にいかなければならないので・・・」
そう言ってライル様は申し訳なさそうに眉を下げたが、私は正直ムッとした。
ソフィアと王子はもう付き合ってるはずでしょ!? なんで、ライル様を呼びつけるのよ!二人で勝手にイチャラブしとけばいいじゃない!!
今世の、わがままで嫉妬深い私が少し顔を出す。
「断ればいいのに・・・」
「え? 今、なん──」
私はハッとして、すぐに取り繕った。
「い、いや? なんでもないよォ~! えと、じゃあ、仕方がないねぇ!また今度さそうよぉ~。じゃあ、またねぇ~!」
ちょっと、下手くそだった気もするが、まぁ、これでいいだろう。私はライル様に手を振って駆け足でその場を離れた。
▽
「はぁぁぁ」
思わず思いため息をついた。
ここは図書館。本当なら、今頃ライル様と図書館でデートするはずだったのにと、私は不貞腐れた。
いや、分かってる。ライル様は忙しい人だ。なんせ、平民なのに王子にその頭脳と内面を認められ、友人と呼ばれるくらいなのだから・・・。でも・・・。
ぐるぐると嫌な思考が頭にくる。
ライル様はソフィアが好き。ソフィアはその気持ちに気づいてる。王子は・・・、分かんないけど。小説にはそこの所は書かれてなかったからな・・・。
「はぁぁぁぁぁ」
また、ため息が漏れた。
先程よりも深く重いものだ。
(私はライル様とソフィアを会わせたくない)
自分でも酷く自分勝手だとは分かってる。
でも・・・。ソフィアのそばに居ることで、ライル様がソフィアのことを諦められなくなったらどうしよう・・・・・だとか、ソフィアがライル様に興味を示したらどうしようと考えてしまうのだ。いや、それは多分ないと思うけども。
また漏れそうになったため息を飲み込み、私はなにか気分が上がるものがないかと、図書館をまわった。
「なにか捜し物でも?リズベット嬢?」
そして、何となく歴史書が並んでいるところを見つめていると、紫色の髪と目の青年に話しかけられた。
私はその見覚えのある顔にカチリと体が固まった。
(う、そ・・・。なんで、ボルドーがここにいるの?)
「・・・・・・」
「おや?無視ですか?それは少し悲しいですね」
わざとらしく傷ついた振りをした彼は、それでも石化したように動かなくなった私を見て、カラリと笑った。
「貴女は男性なら誰にでも媚びを売ると思っていたのですが・・・。もしかして、俺には魅力がないんでしょうか?」
今、私の目の前で失礼なことを言う男。
彼は王子から一番の信頼を得ている側近。しかしそれは表の顔で、本当の彼は暗殺者だ。
もちろん彼は私がその事を知っていることを知らないだろう。当たり前だ。これは前世の知識。つまり、小説から得た情報なのだから・・・。
ちらりと周りを見渡す。うん。誰もいない。さっきまで数人の生徒がチラホラ見えたはずの図書館はシーンと静まり返っていた。
私は目の前にいる彼。もとい暗殺者と図書館に二人きりという状況に最早何も言えずに引きつった笑みを浮かべた。
これ、どうすれば良いの!?
1
お気に入りに追加
240
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
アイアイ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。


【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

【コミカライズ】今夜中に婚約破棄してもらわナイト
待鳥園子
恋愛
気がつけば私、悪役令嬢に転生してしまったらしい。
不幸なことに記憶を取り戻したのが、なんと断罪不可避の婚約破棄される予定の、その日の朝だった!
けど、後日談に書かれていた悪役令嬢の末路は珍しくぬるい。都会好きで派手好きな彼女はヒロインをいじめた罰として、都会を離れて静かな田舎で暮らすことになるだけ。
前世から筋金入りの陰キャな私は、華やかな社交界なんか興味ないし、のんびり田舎暮らしも悪くない。罰でもなく、単なるご褒美。文句など一言も言わずに、潔く婚約破棄されましょう。
……えっ! ヒロインも探しているし、私の婚約者会場に不在なんだけど……私と婚約破棄する予定の王子様、どこに行ったのか、誰か知りませんか?!
♡コミカライズされることになりました。詳細は追って発表いたします。

働かなくていいなんて最高!貴族夫人の自由気ままな生活
ゆる
恋愛
前世では、仕事に追われる日々を送り、恋愛とは無縁のまま亡くなった私。
「今度こそ、のんびり優雅に暮らしたい!」
そう願って転生した先は、なんと貴族令嬢!
そして迎えた結婚式――そこで前世の記憶が蘇る。
「ちょっと待って、前世で恋人もできなかった私が結婚!?!??」
しかも相手は名門貴族の旦那様。
「君は何もしなくていい。すべて自由に過ごせばいい」と言われ、夢の“働かなくていい貴族夫人ライフ”を満喫するつもりだったのに――。
◆メイドの待遇改善を提案したら、旦那様が即採用!
◆夫の仕事を手伝ったら、持ち前の簿記と珠算スキルで屋敷の経理が超効率化!
◆商人たちに簿記を教えていたら、商業界で話題になりギルドの顧問に!?
「あれ? なんで私、働いてるの!?!??」
そんな中、旦那様から突然の告白――
「実は、君を妻にしたのは政略結婚のためではない。ずっと、君を想い続けていた」
えっ、旦那様、まさかの溺愛系でした!?
「自由を与えることでそばにいてもらう」つもりだった旦那様と、
「働かない貴族夫人」になりたかったはずの私。
お互いの本当の気持ちに気づいたとき、
気づけば 最強夫婦 になっていました――!
のんびり暮らすつもりが、商業界のキーパーソンになってしまった貴族夫人の、成長と溺愛の物語!
推ししか勝たん!〜悪役令嬢?なにそれ、美味しいの?〜
みおな
恋愛
目が覚めたら、そこは前世で読んだラノベの世界で、自分が悪役令嬢だったとか、それこそラノベの中だけだと思っていた。
だけど、どう見ても私の容姿は乙女ゲーム『愛の歌を聴かせて』のラノベ版に出てくる悪役令嬢・・・もとい王太子の婚約者のアナスタシア・アデラインだ。
ええーっ。テンション下がるぅ。
私の推しって王太子じゃないんだよね。
同じ悪役令嬢なら、推しの婚約者になりたいんだけど。
これは、推しを愛でるためなら、家族も王族も攻略対象もヒロインも全部巻き込んで、好き勝手に生きる自称悪役令嬢のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる