私、勘当寸前のぶりっ子悪役令嬢ですが、推しに恋しちゃダメですか?

朝比奈

文字の大きさ
上 下
20 / 23

18

しおりを挟む

私?私が誰かって事?・・・

まあ。少し考えてみればライル様の言いたいこともわかる気がした。だって、二ヶ月前、記憶を取り出してからの私は殿下への執着もソフィアへの嫌がらせもしなくなり、それなりに真面目に生きてきた。

でも・・・

「うーん?  どういうことですかぁ??  リズ、ラーティル様の言っていること、難しすぎて分かんないっ」

私は反射的にぶりっ子モードに入っていた。

思えば昔から、本心を隠したい時や泣きそうになった時はわざと明るい声を出して自分に言い聞かせていた。

「大丈夫」って。
私はなんともない。
「平気」だって。

先程までキラキラして見えていたライル様の瞳も、もう熱を帯びているようには見えなかった。

「でもぉ~、リズは、リズだお??  私は私だもんっ!!  他の誰でもない、リズベット・ダウトは私だけだよー!」

言いながら私は顔にニッコリと笑顔を貼り付ける。

嘘は言っていない。私は私なのだから。
ただ、前世の記憶が蘇り心を入れ替えただけ。
私は何も変わっていない。そう・・・そのはず。

「ラーティル様は私が何に見えてるんですかー??」

私はケラケラと笑いながらライル様に尋ねた。

「・・・分かりません。でも、俺は俺の見てきたリズベット嬢を信じたい  」

「・・・・・・」

「その、人に媚びを売るような態度の貴女と殿下達には先程まで決して見せようとしなかった、賢くも優しく微笑む事が出来る貴女。  俺は、俺の見てきたものが間違ってなかったと、それが、リズベット嬢なのだと。 」 

ライル様はそこまでのことを一気に言い切ると。その綺麗な顔を少しだけ歪め、悲しそうな泣きそうな顔になり、目線を少し下げ、続けた。

「でもっ!  そうしたらまた分からなくなる。  以前の貴女の殿下のへの気持ちも、ソフィアへの嫉妬も、嘘には見えなかったから。  」

ライル様の真剣な目に言葉に私は言葉を失った。
そして。もう、取り繕えないと思った。
いや、この人に対して、取り繕いたくないと思った。真剣に向き合わなければと。

だって・・・嬉しかったから・・・
早足で立ち去った私を。ほっといても別によかったのに・・・。追いかけてくれたこと。

ライル様なりに真剣に私を見てくれたこと
今こうして向き合おうとしてくれてること
歩み寄ってくれようと、私の事を理解しようとしてくれていること。

「ライル様って呼ばせてくれたら考えます」

私は少し困ったように微笑んでライル様を見た。

ーーーライル様は覚えているかしら?
前にも一度。
私はこの言葉を貴方に問いかけたことを。

本当は今すぐにでも、素直に気持ちを伝えたい。
「好きです」って。
私が思い出した不思議な夢の話も聞いて欲しい。前世。ただの文字、誰かの妄想、想像上の文脈が作り上げた貴方が私の“理想”だった。なんて、変な話だと思うけれど。

でも、それには少し勇気が足りない。
だから。後ほんの少しの勇気が欲しい。

貴方の名前を、ずっと心の中で呼んでいたその名前を私に呼ばせて欲しい。

もう、あの頃とは違うのだと。
何か確かな証拠が欲しかった。

「分かりました。・・・正直。何故そこまで俺をその名で呼びたいのかは分かりませんが・・・」

(え?本当に?  いいの・・・?)

ライル様から呼び方の許可を貰えた。

その事にまた涙が目にたまる。

ーーーずっとそう呼びたかった。
ずっと心の中だけだった。
ライル様。少しは期待してもいいの・・・?

溢れ出そうになった思いを胸に一度ゆっくりと深呼吸をした。
「ありがとう」そう小さく呟いたその声はやはり震えていたけれど、すぐ近くにいたライル様には聞こえていたみたいだ。

ライル様は先程の私とはまた違った困ったような戸惑っているような表情をしていた。

私は思わずその顔にクスリと笑いを零すとライル様を見つめ言葉を紡いだ。


「ライル様、私ねーーーー」


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

アイアイ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

【完結】望んだのは、私ではなくあなたです

灰銀猫
恋愛
婚約者が中々決まらなかったジゼルは父親らに地味な者同士ちょうどいいと言われ、同じ境遇のフィルマンと学園入学前に婚約した。 それから3年。成長期を経たフィルマンは背が伸びて好青年に育ち人気者になり、順調だと思えた二人の関係が変わってしまった。フィルマンに思う相手が出来たのだ。 その令嬢は三年前に伯爵家に引き取られた庶子で、物怖じしない可憐な姿は多くの令息を虜にした。その後令嬢は第二王子と恋仲になり、王子は婚約者に解消を願い出て、二人は真実の愛と持て囃される。 この二人の騒動は政略で婚約を結んだ者たちに大きな動揺を与えた。多感な時期もあって婚約を考え直したいと思う者が続出したのだ。 フィルマンもまた一人になって考えたいと言い出し、婚約の解消を望んでいるのだと思ったジゼルは白紙を提案。フィルマンはそれに二もなく同意して二人の関係は呆気なく終わりを告げた。 それから2年。ジゼルは結婚を諦め、第三王子妃付きの文官となっていた。そんな中、仕事で隣国に行っていたフィルマンが帰って来て、復縁を申し出るが…… ご都合主義の創作物ですので、広いお心でお読みください。 他サイトでも掲載しています。

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

王太子殿下が欲しいのなら、どうぞどうぞ。

基本二度寝
恋愛
貴族が集まる舞踏会。 王太子の側に侍る妹。 あの子、何をしでかすのかしら。

【コミカライズ】今夜中に婚約破棄してもらわナイト

待鳥園子
恋愛
気がつけば私、悪役令嬢に転生してしまったらしい。 不幸なことに記憶を取り戻したのが、なんと断罪不可避の婚約破棄される予定の、その日の朝だった! けど、後日談に書かれていた悪役令嬢の末路は珍しくぬるい。都会好きで派手好きな彼女はヒロインをいじめた罰として、都会を離れて静かな田舎で暮らすことになるだけ。 前世から筋金入りの陰キャな私は、華やかな社交界なんか興味ないし、のんびり田舎暮らしも悪くない。罰でもなく、単なるご褒美。文句など一言も言わずに、潔く婚約破棄されましょう。 ……えっ! ヒロインも探しているし、私の婚約者会場に不在なんだけど……私と婚約破棄する予定の王子様、どこに行ったのか、誰か知りませんか?! ♡コミカライズされることになりました。詳細は追って発表いたします。

働かなくていいなんて最高!貴族夫人の自由気ままな生活

ゆる
恋愛
前世では、仕事に追われる日々を送り、恋愛とは無縁のまま亡くなった私。 「今度こそ、のんびり優雅に暮らしたい!」 そう願って転生した先は、なんと貴族令嬢! そして迎えた結婚式――そこで前世の記憶が蘇る。 「ちょっと待って、前世で恋人もできなかった私が結婚!?!??」 しかも相手は名門貴族の旦那様。 「君は何もしなくていい。すべて自由に過ごせばいい」と言われ、夢の“働かなくていい貴族夫人ライフ”を満喫するつもりだったのに――。 ◆メイドの待遇改善を提案したら、旦那様が即採用! ◆夫の仕事を手伝ったら、持ち前の簿記と珠算スキルで屋敷の経理が超効率化! ◆商人たちに簿記を教えていたら、商業界で話題になりギルドの顧問に!? 「あれ? なんで私、働いてるの!?!??」 そんな中、旦那様から突然の告白―― 「実は、君を妻にしたのは政略結婚のためではない。ずっと、君を想い続けていた」 えっ、旦那様、まさかの溺愛系でした!? 「自由を与えることでそばにいてもらう」つもりだった旦那様と、 「働かない貴族夫人」になりたかったはずの私。 お互いの本当の気持ちに気づいたとき、 気づけば 最強夫婦 になっていました――! のんびり暮らすつもりが、商業界のキーパーソンになってしまった貴族夫人の、成長と溺愛の物語!

処理中です...