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しおりを挟む「ん~!おいひ~!!」
口いっぱいにパンケーキを頬張り、幸せに浸る。
もう、フォークが止まらないっ!
「ラーティル様も、食べますか?」
少しだけ調子に乗った私はライル様にパンケーキを差し出す。
が、案の定ライル様には断られた。
そして、断られたショックで我に返った。
あれ、今、私、貴族令嬢として、ありえない食べ方をしてしまったような⋯⋯
コホン。とわざとらしく言い、すまし顔をつくり、ゆっくり優雅にパンケーキを食べる。
もちろん、口に広がるパンケーキの甘さに徐々に頬が緩むわけで⋯⋯
その時、フッと微かにライル様の笑い声が聞こえた。その声に私が視線を向ければ、直ぐになんでもなかったような顔をする。
え、うそ⋯⋯いま、ライル様が笑って⋯⋯
気のせいかもしれない。だけど、気のせいでもいい。ライル様といるだけで私は幸せなのだ。
私は嬉しくなって頬を緩ませた。
その後パンケーキを食べ終わった私は、とっくにコーヒーを飲み終わっていたライル様と店を出た。
あ、もちろん。自分の分は自分で払ったわよ?
元々、そのつもりだったし⋯⋯
ただ何故か、ライル様は驚いていたけれど。
もしかして、私にパンケーキ代をたかられるとか思っていたのかな⋯⋯
だから、ライル様は食べなかったとか?
あ、ありえるわね。
「あの、リズベット嬢⋯⋯」
「⋯⋯?」
寮に向かって歩いていると、ラーティル様は突然立ち止まりこちらを向いた。
私は突然の事に首をかしげた。
「それが貴女の素なんですか?」
あぁ。その事ね。と、私はどこか納得した。
そう言えばなんで今の今まで何も言われなかったんだろう⋯⋯
「さぁね」
私はそれだけ言って、先に歩き出す。
「ライル様って呼ばせてくれたら考えるわ」
振り向きもせず、呟いた。
ラーティル様から返事はなかった。
聞こえなかったのかな?とは思わなかった。多分、これが彼の答え。
うん、前途多難ね。
前を向いてて良かったわ⋯⋯
少しだけ苦笑い漏れた。
▽
私がライル様と学園の敷地内へ戻ると、向こう側から王子がやって来た。
「なんで二人が一緒にいるんだ?」
「さっきぃ~、たまたま会ったんですよォ~」
先程歩きながら簡単にツインテールに戻して良かった。シンプルなワンピースを着ては居るが、私は構わずぶりっ子を演じた。
突然の私の豹変ぶりにライル様は驚きを隠せないでいたが、直ぐに私の言ったことに便乗した。
不思議なことに、私が言っても、不振な目を向けるだけだった王子が、ライル様の言葉は信じているみたいで、すぐに納得して「そうか」と呟いた。
私は王子とライル様にお花摘みに行ってきます!とぶりっ子全開で言い、その場を離れた。
流石にいきなりのぶりっ子は私だってきつい。
せめて心の準備をさせてくれ⋯⋯
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