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しおりを挟む私が教室に入ると、一瞬皆がシーンとなる。
もういつもの事なんで私は気にせず歩みを進めた。
そして、いつもは自分の席に座る所を、ある女の子の前で立ち止まり、ニコリと微笑見ながら話しかけた。
「ねぇ、席、変わってくれないかなぁ~。」
「えっ、えと、はぃ。」
私に話しかけられたその子は怯えた様子で、席を移動した。
うん。完全に脅しである。
いや、別に脅すつもりはなかったんだけど⋯⋯まぁ、いいや。と考えるのをやめて、私は王子の隣の席からライル様の後ろの席へと移動した。
これで私は、授業中ずっと、自然にライル様を見つめていられる⋯⋯。
これほど授業が始まるのを心待ちにしたことがあっただろうか⋯⋯。いや、無いな。
私は緩む頬を何とか抑えながら、ライル様が来るのを待った。
▽
「ラーティル様ぁ~、おはようございますぅ~!」
今日も私はぶりっ子でライル様に話しかける。
そして、想像通りライル様は私に「なんでこの席に?」と、訪ねてきた。
「ダメでしたかぁ~?」
私は上目遣いでライル様を見つめる。
「いや、別にダメとは言っていない。あの二人の邪魔をしなければ別に」
と、その言葉に私は閃いた。
「う~ん。どうしよっかなぁ~」
ニヤリと何かを企んでいるように見えるように口を歪めた。
「また何か企んでいるのか?」
ライル様が私を睨む。
あー。これ、本当に嫌われちゃってるなぁ。
内心すごく傷つきながらも、顔には出さない。
「ラーティル様ぁ~、取り引き、しませんかぁ~?」
私は声を潜めてそう言った。
「取り引き?」
ますます鋭くなる視線に私はニコリと笑顔を作り「はい」と応えた。
「ラーティル様がぁ~、リズベットのぉ、暇つぶしに付き合ってくれるならぁ、あの二人には今後何もしないよぉ~。どぉするぅ?」
私はわざと甘い声を作りそう言った後、首をかしげた。
「暇つぶしって、具体的に何をするんだ?」
「んーとね、リズベットとぉ、お茶したりぃ~? 危ない事はさせないからぁ~、安心してぇー。」
と、簡単に言ってるが、私の心臓は今バックバクだった。
ライル様とお茶⋯⋯。
考えただけで、嬉しすぎて死にそうだ。
もちろんバレないように、そんなこと表情には出さない。
その後、暫く何かを考えてたライル様は最後に「・・・本当か?」と聞いてきた。
その言葉に私は頷き、手を出した。
「これから、よろしくねぇ!ラーティル様!」
もちろん、最後の最後までぶりっ子は辞めなかった。
方法は汚いが、これで私はライル様と居られる!
って、私は悪役令嬢なのよ!今更、これしきの脅しで怯んでどうするよ!
私はぎゅっと拳を握った。
▽
その後、授業中にずっとライル様を見つめていた私は、先生に集中していないのがバレて呼び出しを食らったのであった。
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