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二度目の人生
フィンセントの企み
しおりを挟むクリスティーナが刺されて重症だとフィンセントが知ったのは、クリスティーナの誕生日の次の日だった。
絶望を覚えたフィンセントは、すぐ様クリスティーナの元へと向かった。そして、顔を青くしたまま目を閉ざし続けるクリスティーナをみて、フィンセントは泣き崩れた。
何故、クリスティーナが、こんな目に遭わなければならないんだ! と、フィンセントは憤った。
自分だったら、傍に居たのが、もしも、自分だったなら、絶対、クリスティーナをこんな目には合わせなかったのにっ!と。
それからは、色の無い毎日だった。
ただひたすらにクリスティーナの無事を祈る毎日。もう、いつ心臓が止まってもおかしくないと医者には言われていた。
そんな中で、クリスティーナの縁談の話が無くなったと聞いたフィンセントは、なら、自分が·····と、志願した。
そんなフィンセントの願いは最初は受け入れられなかった。しかし、フィンセントの諦めは物凄く悪かった。毎日毎日頭をさげられ続けた男爵が音をあげる方が早かったのだ。
もしかしたら、一生目を覚まさないかも知れない娘の事をここまで想うフィンセントに、クリスティーナの両親は心を動かされたのだ。
そして、フィンセントとクリスティーナの婚約が、クリスティーナの知らぬところで結ばれることとなった。
そして、その翌日·····。
婚約者となったフィンセントがクリスティーナに花束を持って言ったその日。クリスティーナは目を覚ました。
──しかし。
「あの、貴方は誰ですか?」
目が覚めたクリスティーナは全ての記憶を忘れていた。これには、フィンセントも家族もショックが大きかった。
目が覚めたクリスティーナは、皆に対して他人行儀だったのだ。
「クリスティーナ、なにか覚えていることはあるかい?」
その問いに首を振るクリスティーナ。
フィンセントの心に悲しみが占めたが、目を覚ましてくれただけでも十分だと、また、記憶が無い方が、自分のことを好きになってくれるんじゃないか·····とも思った。
だから、僕は·····
「んー、じゃあ、君にとっては、初めましての方がいいのかな? 僕は君の婚約者のフィンセント・マースリー。よろしくね」
仮面を被ることにした。
できるだけ自然に、元からそうであったように、クリスティーナの傍に居るために·····。
次は僕が絶対に守るから。
ごめん。ごめんね、クリスティーナ。
でも、それでも、僕は、君の事が·····好きなんだ。
記憶を取り戻したクリスティーナに物凄く恨まれるだろうな、と思いながらも、僕は今日も君に会いに行く。
「分からないことがあったら何でも僕に聞いてね。 記憶がなくて不安だろうけど、大丈夫だよ。僕がずっと傍にいるから」
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