この婚約破棄は運命です

朝比奈

文字の大きさ
上 下
20 / 26
二度目の人生

目が覚めたらそこは·····

しおりを挟む


──クリスティーナ

   ぷくぷくと水泡が下から上へと次から次に上がっていく。ここがどこかも分からないまま私は、ただひたすらにさ迷い続けていた。


『名前は?』『年齢は?』『趣味は?』『私は誰?』通り過ぎていくのは、私の知らない過去。浄化された前世。幸せな記憶と悲しい記憶。


   それが私のものであるのは分かるのに·····。私は私自身が分からなかった。


『これは呪い。私が、私を得るための呪い』

   どこからがそんな言葉が聞こえた。
   私は答える。

「ええ、そうね·····。そうだったわね·····。すっかり忘れていたわ·····。これは、私が、私自身が仕組んだことだったのに·····」

『私が人になる為の·····』

「··········、残念だけれど失敗だったみたいね·····。だから·····もう·····終わらせないと·····」


   いつ出られるか分からないまま、私はさ迷い続ける。  私を探しながら。  “ただ会いたい”という感情が私の足を動かした。


   誰に会いたかったんだっけ·····?
   ここから出られたら思い出せるかな·····。



────────────────



「んーと、ここは??」

   重たい体を起こして周りを見渡すと、そこは知らない部屋だった。まるでどこかのお貴族さんのようにキラキラした部屋には、私一人しかいなかった。

   とりあえず、ベットから出ようと体を動かそうとするも、全然力が入らなかった。

「えぇーー、どういう事?」

   頭に大量のはてなマークを浮かべながら私は、一人でウンウンと考える。

   えっ·····、私、昨日何してたっけ?
   んんん?  思い出せない·····。

   結果、私が出した答えは·····

「あー、夢だね!  うん、きっとそう!  よし、もう一回寝よう!  おやすみなさい!」


   と。私が再びベットの中に入ろうとした時·····


───ガチャッ


   ドアが開いたと思ったその時には、もう人が入ってきていた。

   えっ、誰?

   私がそう思う間もなくその人は持っていた花束を床へと落とす。

「クリス·····ティーナ·····」

   うわー、何この金髪のイケメンは·····。凄く綺麗な人·····。それにしてもクリスティーナって誰だろ·····??


   私がコテンと首を傾げると、金髪のイケメン君は大量の涙を流しながら優しく私の手を握った。

「ああ·····クリスティーナ·····、良かった、良かった」

「うっ·····」

   何故だか分からないが、頬に熱がたまり自分の顔が熱くなるのがわかった。

   いや、ただ単にイケメンに照れてるだけかもしれないけど·····、こうなんて言うか胸を締付けるような感情に襲われてて、私は同じ体制から動くことが出来なかった。

   金髪のイケメン君は何度も良かったとそう言いながら私に体調は大丈夫かと聞くと、直ぐに医者を呼んでくる!そう言って慌ただしく部屋から出ていった。


「···············誰だったんだろう」


   一人取り残された部屋で私は、夢にしてはリアルだなぁ·····なんてことを考えていた。



──────────────────

「クリスティーナ·····、ゆっくりで良いからね」

「うん、ありがとう·····」

   あの日から5日ほどが過ぎた·····。
   ちなみに私はまだ夢から脱出出来ていない。

   どうやら私は、ラノベでよくありがちな展開に巻き込まれているみたいだ。

   周りの話によると、私は貴族の令嬢でそれでいて婚約者もいるというのだ。あの、目覚めた時に涙を流しながら手を握っていたイケメンが婚約者らしい。

   それに、なかなかの美人·····。   どうやら、半年ほど前に事故に会いそれからずっと眠ったままだったのだとか·····。


   ちなみに今は歩く練習中だ。

   まだ一人で歩くのは難しいけれど、そのうち完治するとの事だったので、私はあまり重く受け止めてはいない。でも、周りは違う。物凄く過保護なのだ。


「──お嬢様」

「え、あ、はい!」

   ついついボーッとしていると、メイドのランに話しかけられた。

「婚約者がお越しになっておりますよ」

「えっ」

   ドキン!と心臓がはねる。まただ、何でだろう·····、やはりイケメンだからだろうか·····、婚約者、その言葉を聞く度に妙に意識してしまう。

「どうぞ、入ってもらって」


   私がそう言うと、しばらくして一人の青年が入ってくる。

「クリスティーナ、体調はどう?」

「え、あ、はい!  平気です。えと、こんにちは────── フィンセントさん」


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

私だけが家族じゃなかったのよ。だから放っておいてください。

恋愛
 男爵令嬢のレオナは王立図書館で働いている。古い本に囲まれて働くことは好きだった。  実家を出てやっと手に入れた静かな日々。  そこへ妹のリリィがやって来て、レオナに助けを求めた。 ※このお話は極端なざまぁは無いです。 ※最後まで書いてあるので直しながらの投稿になります。←ストーリー修正中です。 ※感想欄ネタバレ配慮無くてごめんなさい。 ※SSから短編になりました。

彼女が望むなら

mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。 リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

処理中です...