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二度目の人生
出会いは再び(3)
しおりを挟む─────コンコン
部屋の中に小さくノックの音が響いた。
私は慌てて布団の中に潜り込んで寝てる振りをした。
いま先程まで泣いていたのだ。
こんなひどい顔を誰かに見られるのは中身が16歳のクリスティーナにとっては恥ずかしいことだった。
「⋯⋯寝ているのか?」
(フィンセントッ!?)
なんとノックの後に入ってきたのはフィンセントだった。その事に私はベットの中に潜っていて良かったと安堵した。
ギシリとベットの軋む音がした。
その音にドキリと心臓がはねる。
フィンセントがすぐそこにいる。
クリスティーナの心臓の鼓動は速まり顔に熱が集まるのが分かった。
被っていた布団をフィンセントが掴んだ。
「顔は出さないと、寝苦しいだろ⋯⋯」
そう言ってフィンセントは布団を持ち上げる。
「⋯⋯」
「⋯⋯」
フィンセントと目が合った。
フィンセントは布団を持ち上げた状態のまま固まっており動かない。
私も頬を染めながらも目を話せなかった。
「⋯⋯起きてたのか」
「はい⋯⋯」
「泣いていたのか⋯⋯」
「は⋯っ、ち、違うわ! 泣いてなんてっ!」
フィンセントの手が私の頬に伸びて、引っ込められた。そしてポッケからハンカチを出すと私の手を取り私に持たせた。
ただでさえ赤くなっていた私の頬はもう真っ赤になっているだろう。
「⋯⋯それ。使って」
「あ、ありがとう⋯⋯」
「⋯⋯ごめん 」
「⋯⋯え?」
「無視なんかしてごめん。 泣かせるつもりは無かったんだ⋯⋯」
「ち、違うッ! フィンセントが何かしたとかじゃないのッ!あれは、ただッ」
「あれは⋯⋯?」
「⋯⋯とにかくフィンセントのせいじゃないから⋯⋯」
「⋯⋯そっか。 なら。良かった。 ⋯⋯フォリス男爵⋯⋯君の父親を呼んでくるよ。ここで待ってて⋯⋯」
「ええ。分かったわ⋯⋯」
そう言ってフィンセントは扉の向こうへ消えていった。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
1人きりになった部屋の中でふと。前世のことを思い出していた。
前世では私がフィンセントに虫を見せて気絶させて、その後謝るためにフィンセントの傍にいたらいつの間にか私も一緒に眠ってて⋯⋯目が覚めたフィンセントに拒絶されて⋯⋯それから、それから⋯⋯
考えれば考えるほど、もう戻れない、あの日の思い出に胸が切なく締め付けられる。
────フィンはいないのだと。
もう。あの、たくさんの時を共に過ごした。私の大好きなフィンはいないんだ。
フィンセントとの出会いは決していいものでは無かった。言うなれば最悪だったと思う。お互いに嫌がらせをやり合った感じになってしまったものだった。
でもあの出会いが私たちの始まりで。
私たちの関係を作った出来事だった。
その出会いを私は壊してしまった。
きっとこの事がきっかけで少しずつ歯車は狂い。そして。未来が変わっていくのだろう⋯⋯。
その先の未来で私がフィンセントの隣にいる確率はどれくらいのものかしら。
⋯⋯今だけは夢を見ていたい。
何も考えず。何も知らない振りをして。
ただこの人生を、私が幸せになるためのやり直しだと。そう思い込ませて欲しい⋯⋯。
あるはずだったフィンセントとの未来を夢見させて欲しい。
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