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二度目の人生
出会いは再び(1)
しおりを挟む「クリスティーナ。準備は出来たかい?」
「⋯⋯準備?」
(あれ? 私、いま、何をしようとしていたのかしら?)
つい先程まで何かを考えていたはずなのに思い出せない。何か大切なことだったのだろうか。
「もう忘れたのかい? 今日はマースリー伯爵家に遊びに行くと行っただろう? 伯爵家にはクリスティーナと同い年の男の子がいるんだ」
「本当!?」
「ああ。本当だ。」
「友達になってくれるかな⋯⋯?」
「彼は本が好きで部屋から出ることが少ないから、友達も余りいないみたいなんだ。だからお父様がマースリー伯爵と話している時、フィンセント君と遊んでるといいよ」
「フィンセント君?」
その名前にどこか聞き覚えがあるような、そんな気がしたがすぐに気のせいだと頭を振る。
「ああ。フィンセント・マースリー 。伯爵家の次男だ」
先程までの疑問はどこへやら。私の頭の中はこれから会う少年⋯⋯フィンセント君のことでいっぱいになった。
フィンセント君ってどんな子なんだろう⋯⋯
お友達になってくれるかな?
そしたら一緒に木登りとかしたいな
うふふ。楽しみだな~
私は新しいお友達に思いを馳せながら急いで準備をした。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
いま私はフィンセント君の部屋の前に立っている。
なんでも、私たちが到着したと声をかけても部屋から出てこないみたいで、伯爵に話しかけに言って欲しいとお願いされたのだ。
────バタンッ!
「失礼します!!」
私は思いきり扉を開きフィンセント君を探す。
(あ。いたわっ!)
部屋を見渡してみれば隅の方でうずくまっている少年がいた。私は遠慮なしに彼に近づいて話しかけた。
「初めまして、私の名前はクリスティーナ。クリスティーナ・フォリスよ! 先日8才になったの!よろしく、ね⋯⋯フィン⋯⋯セント君⋯⋯」
自己紹介をしながら私はフィンセント君のうつむいたままの顔を覗き込んだ。
そして。
その瞬間。不思議な記憶が
見て、しまった⋯⋯。
思い、出してしまった。
(そ、んな⋯⋯)
最後の方は酷く頼りないか細い声になってしまっただろう。でも。仕方がないと思う。だって⋯⋯。
音にならない叫びが涙が溢れた。
「フィン⋯⋯? フィン、なの⋯⋯?」
流れる涙をそのままにフィンセントに手を伸ばした。そしてその両頬を掴みあげる。
私の手の中にあるのは紛れもないあの日のフィンセントの姿だった。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
フィンセントはその時、酷く混乱していた。
先程いきなり自己紹介を始めた少女がフィンセントの両頬を掴みあげたかと思うと泣いていたから。
流石に泣いている少女に無礼な行いは出来ない。先程まで少女を追い出すために無視を極めようと考えていた事など忘れてフィンセントは固まった。
ポロポロと少女の瞳から溢れ出した涙は少女の頬を辿り絨毯にシミを作った。
結局。フィンセントは目の前の訳の分からない少女の涙をただ見つめていることしか出来なかった。
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