この婚約破棄は運命です

朝比奈

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一度目の人生

君が初恋でした(3)

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   フィンセントは腕の中で嬉しそうになく幼なじみ⋯⋯いや、世界で一番愛おしい女性の額にキスを落とした。

   先程、いきなり腕を掴まれたと思ったら走り出し、やっと止まったと思ったら顔を真っ赤にしながら告白してくれたティーナ。

   本当ならティーナの17歳の誕生日に星空の下でバラの花束を手に告白するつもりだったのに。相変わらずティーナは俺の予想の上をいく。

   思えば初めてあった時もそうだった。
   まさか、無視を素手で触れる令嬢がいるなんて思わなかったな。

   懐かしい出会いを思い出し俺は少しだけ笑った。すると未だ俺の腕の中にいるティーナが不思議そうにこちらを見上げてきたので、もう一度、額にキスを落とした。

「ティーナ。必ず幸せにするから⋯⋯学園を卒業したら結婚してくれないか?」

   クリスティーナは顔を真っ赤にして頷いた。フィンセントもたクリスティーナの可愛さに顔が真っ赤になっていた。

   二人は互いに見つめ合いまたいつかの日のように笑った。

「フィン⋯⋯。私こんなに幸せでいいのかな?」

「はは、俺も今すごく幸せだよ。⋯⋯夢でも見ているみたいだ」

   二人は互いに惹き付けられるように口付けを交わしていた。


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


   それからフィンセントはまず自分の両親に幸せにしたい人が出来たと話をした。

   もちろんフィンセントの話など両親にはバレバレだったので特に反対されることなく、むしろやっとか、と随分待った、と話を聞かされた。

   そしてその後フィンセントはクリスティーナと共にクリスティーナの両親に挨拶しに行った。

   反対されたらどうしようか、と内心不安だったフィンセントに投げかけられたのは、娘をよろしく頼む、と随分あっさりしたものだった。

   理由を聞くと、いつから君達のことを見てたと思うんだ。と真面目な顔で言われたので、フォリス男爵にも自分の気持ちがバレバレだったのかとフィンセントは少し恥ずかしくなった。


   何はともあれこれでフィンセントとクリスティーナは互いの両親の許可が貰え、婚約者となった。

   そして、晴れて婚約者と慣れたことを祝って皆で遠出しましょう!とのフォリス男爵夫人の言葉で馬車で3時間ほどかかる泉にみなで行くことになった。

   しかし当日、フィンセントの母親の体調が悪く、フィンセントの両親は来れなくなってしまった。

   仕方が無いのでフィンセントとクリスティーナ。そしてクリスティーナの両親と数名の護衛と共に行くことになった。

   まさかこの帰り道、賊に襲われるなんてちっとも思わずに⋯⋯。


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


   彼女だけは⋯⋯ティーナだけは⋯⋯絶対に死なせはしないっ!絶対⋯⋯この命に変えてでも守ってみせるッ!

   俺は剣を握った。

   いきなりの奇襲で護衛が一気に三人殺された。人数差も厳しい⋯⋯。だけどッ!

   ここで俺が諦めたら⋯⋯

   俺は力の限り剣を振るった。一人、二人、と倒していくと何人かはビビって逃げてった。

   だけど結局、生き残ったのは俺とティーナだけ⋯⋯。でも、それでも、ティーナを守れた。その事に俺は酷く安心していた。だから、気づかなかった⋯⋯。

   まだ一人残っていたことに⋯⋯

───ティーナ。約束、守れそうにないや。どうか君だけでも⋯⋯

「ごめんな⋯⋯」



✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


   目の前で血飛沫があがった。

   私の手に着いたのは愛おしい人の血で。

   目の前で動かなくなった、人だったものに手を伸ばす。

────ああ。どう、して⋯⋯?

「フィン⋯⋯?⋯⋯フィンセント⋯⋯」

────なんで、どうして何も言ってくれないの⋯?

   あの時、賊に襲われた時、護衛や両親が亡くなっていく中フィンは私を守ってくれた。やっと、倒せた⋯⋯そう思ってお互い少し油断したんだ思う。まさか、まだ息があるものがいたなんて⋯⋯。

   目の前で私を庇うように抱きしめてくれた手を、冷たくなったいく愛おしい人の手を握って、私は思った。

────これは夢よ。そう、全部悪い夢⋯⋯。

「悪い夢は忘れてしまうのが一番だわ⋯⋯」

   いつの日か、悪夢に苛まれて寝れなかった私にフィンがそう言って、私が眠りにつくまで手を握っていてくれたことを思い出した。

「目がさめたらきっと、いつも通りの朝が来るわよね⋯⋯?」

   私は冷たくなったフィンの口に自分の口を重ねた。この前まではあんなに、甘く幸せな気持ちになれていたのに、どうしてキスがこんなに、冷たく辛いものになっているのかしら⋯⋯。

   ガラガラと何かが壊れていく。

   そんな音がした。

   私はただ目と耳を塞ぎ、少しずつ壊れて行った。


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