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プロローグ
しおりを挟む────どうして。
土砂降りの雨の中ドレスが汚れることも気にせずまだ若い一人の少女が地面に座り込み小さく口を動かした。
その瞳からはハラハラと涙が溢れ、ただ呆然と同じ言葉を繰り返していた。
少女の名はクリスティーナ・フォリス。
一ヶ月前に会った事故により記憶を失い、変わりに前世の記憶を思い出した転生者だった。
そしてたった今、無くしていた記憶を思い出して、両親の死と愛しい婚約者の死を現実に叩きつけられ“絶望”していた。
「なんで⋯⋯なんでッ! どう、して⋯⋯いや。いやよ⋯⋯」
────私を一人にしないで。
少女の言葉は嘆きは誰にも届くことなく雨音の中に消えていく。
どれくらいそうしていただろうか。
冷たい雨は少女から体温を奪い、大切なものの死は少女の心に重く突き刺さり、生きることを苦しくさせた。
やがて少女は願った。
────死にたい、と。
あの人に、フィンセントに会いたい。
⋯⋯死んだら、フィンに会えるのかしら?
この時、少女はまともな思考を失っていた。
いきなり叩きつけられた悲しみを、少女はひとりで受け止めることが出来なかった。
故に少女は選んだ。
ここで、人生を終わらすことに。
愛しいもの達に会いに行くことを。
死に向かう少女を止めてくれる者は一人もいなかった。
死の間際、少女は笑った。
「今から貴方に会いに行くわ⋯⋯フィン⋯」
そう言って、崖から身を投げ出した。
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