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第一章

セイラの湖(4)

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「アレクシス、これ食べて。ほら、あーん。」

「ふふっ、こっちも美味しいよ。」

「も、もうお腹いっぱい、です!入りませんっ!」

あれから、お兄様とわたくしはアレクシスから今までの話を聞いた。

なんでもアレクシスには母親しか家族がおらず、親子二人で支えあって生きてきたが、二年前の冬、とうとう母親は流行病にかかり死んでしまったという。

その時、まだ9歳だったアレクシスは、孤児院の先生に拾ってもらい、それからずっと孤児院で暮らしているそうだ。

そして、たまに寂しくなった時に、母親と良く来ていた、このセイラの湖に一人で抜け出して来てたそうで、今日はたまたまそこで私たちにあったという訳だ。

しかも、母親の名前はソフィアで、わたくしの出ていった母親と同じ名前だった事から、お兄様もアレクシスが弟だと疑ってないみたいだ。

わたくしとお兄様はアレクシスの話を聞いて、辛かったねと優しく抱きしめ、今日はたくさん遊ぶことにした。

そしてその後、アレクシスを家に連れて帰ろうとお兄様と話して決めた。

ちなみにアレクシスには、まだわたくしとお兄様が家族だって事は内緒だ。

詳しい事はお父様ともお話しないといけないが、とりあえずもう、孤児院には置いておきたくない。

いや、孤児院がダメとかでは無いが、折角の家族だ。一緒に暮らしたいし、可愛がりたい。

アレクシスがどう言う性格になるか分かっている私は余計にそう思った。

ちなみにゲームでのアレクシスはヤンデレキャラである。そう、以前の私はヤンデレキャラの重すぎる愛が好きだった。いや、現実と二次元はの好みは流石に違うからね?

わたくしとお兄様がアレクシスの手つなぎエリナ達の所へ戻った時は、皆ビックリして固まっていた。まあ、そうなるよね。

そして今は、お兄様と一緒にアレクシスを餌付け・・・いや、持ってきたサンドイッチを食べさせている。

わたくしとお兄様の両方から差し出されるサンドイッチを頑張って食べているアレクシスは凄く真っ赤になっていて可愛かった。

そこには私たち兄妹三人だけの空間が出来つつあった。

ちなみに、アレクシスはわたくしの事をアンジェ様、お兄様のことをシャンス様と様付で呼んでいる。

本当はお兄様、お姉様呼びをさせたかったんだけど、初対面のしかも貴族相手には流石に無理だったらしくアレクシスが泣きそうになっていたので、仕方なく今はそれでいい事にした。

ふと、視界の端に三つ葉畑を見つけた。

「ねぇ、二人とも、一緒に四葉のクローバーを探さない?」

「四葉のクローバーって何?」

「僕、知ってる、です!」

「アレクシスは物知りね。ふふ、お兄様、四葉のクローバーはね・・・」

四葉のクローバーの意味をお兄様に教えると、お兄様は二つ返事で頷いてくれた。

それから三人で誰が一番早く見つけきれるか競争する事になった。

「うーん、それにしても本当に綺麗な場所だわ!あっ!なんかあっちにある気がしますわっ!」

アンジェリカは夢中になってどんどん奥の方へと進んでいった。

ふと、顔を上げ周りを見渡して見れば、湖の中が少しだけ光っている様な気がした。

何かしら?とアンジェリカは湖に近づきしゃがみ込んで中を覗いて見た。

すると、小さく誰かの話し声が聞こえてきた。

ビックリして周りを見渡すも誰もいない。

何だか、少し怖くなったアンジェリカは皆の元へ戻ろうと立ち上がった。

『あの子また来てるよ!』

『本当だー!』

『うわ、前より呪いが進んでる!』

「えっ!?だ、だれっ?」

突然聞こえた謎の声にわたくしはビックリしてまた周りを見渡してみる。

『あ、この子かわいい!』

『なんかあの子とにてるー!』

「え?に、日本語・・・?」

誰もいないのに、ずっと無邪気な声が聞こえてくる。もしかして、そう思いわたくしは尋ねた。

「あの、貴方達は精霊なの?」

『そうだよぉー』

『って、言っても分かんないよねー』

すると、テニスボールくらいの光の塊がアンジェリカの周りをクスクスと面白そうにまわった。

まさか、精霊が日本語で話すなんて想定外だったが、確かにこのゲームは日本製のもので主人公も日本人だ。

巫女だけが、精霊の言葉を理解出来るのは母国語だったからなのか。

(じゃあ、今までの巫女は全員日本人だったのかな。それなら、黒髪黒目ってのも・・・)

なんにしろ、これ程嬉しいことは無かった。

この時、本当に異世界何だなと強く感じた。

アンジェリカは精霊に向かって話しかける。

『あのっ!わたくしの名はアンジェリカよ。貴方達の言葉も分かるわ。』

もしかしたら精霊ならお兄様の呪いを解くことが出来るんじゃないかと期待を込めて。



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「」はこの世界の言葉です。
『』は日本語です。

もしよろしければ、私は女神じゃありません!!もよろしくお願いします!
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