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第一章

病の原因(3)

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「少しそこで待ってなさい」

そう言ってお父様は一度席を外し、戻ってきた時には細かい細工が施されている木箱を持ってきた。一体、何が入っているのだろうとアンジェリカは首を傾げる。

「開けてみなさい」

「え?いいのですか?」

アンジェリカがそう問えば、コクリとお父様が頷いた。

(もしかして、うちのお父様は人見知りだったりするのだろうか?)

わたくしは、お父様が木箱を取りに行っている間に考えていた疑問が頭に浮かんだが気の所為だと思うことにした。

お父様に手渡された木箱を見てみる。お花・・・なのだろうか、まぁ、とにかくお花っぽい何かが掘られていて、他にも細かい細工がたくさん施されておりとても高そうな木箱だなと思った。

中に入っていたのは一冊の絵本だった。

絵本と言っても、紙の束を数枚重ねて紐で閉じている様な簡単なもので、一体、何百年前の物なのかは考えるのはやめた。

「あの、お父様これって・・・」

「あぁ、先程話に出てきた絵本だ。その中に出てくる呪われた子供の絵を見てみなさい。」

わたくしは言われるがままにパラパラとページをめくった。

すると、黒一色だった前のページとは違い、目の部分だけ赤く色付けされている少年が苦しそうに顔を歪ましている絵があった。また、気になったのはそれだけではない。その少年の左胸の部分に奇妙な模様が描かれていた。

「その少年の左胸の所、変なあざみたいなのが描かれているだろう?シャンスが昔から倒れて熱を出す度それと全く同じ模様が浮かび上がってくるんだ。」

「本当、ですの?」

「あぁ、本当だ。」

「え?そ、それって・・・」

「あぁ、呪いだろうな」

「なんでお兄様が・・・、お父様っ、お兄様の呪いは解くことは出来ませんの?」

「・・・難しいだろうな」

「むず、かしい?そんなっ、公爵であるお父様でさえも手が出せないんですか?」

「っ、!あぁ。」

お父様がそう言って悔しそうに目を伏せるものだから、わたくしはもう何も言えなかった。結局、わたくしは何も出来ないただの子供でしかないと改めて思い知らされた気がした。

そこでふと、手元にある絵本に目を向ける。ページをめくって行くと、巫女が少年の呪いを解くシーンがあった。

(巫女が、少年の、呪いを解いた?・・・あれ?)

「お父様、絵本に出てくる巫女はいないんですか?」

「今、捜索中だ。」

「え?」

「探しているんだ、もぅ、何年も前から。シャンスが呪われているかも知れないと知ったあの時から。」

「もしかして、お父様が家に帰って来ないのは、仕事が忙しいからじゃなくて・・・」

「・・・」

(あぁ、だからお兄様はわたくしがお父様の事を聞いた時どこか申し訳なさそうに寂しくないか聞いて来たのね。)

「・・・手掛かりはありますの?」

「余り・・・。今、分かっているのは、黒髪黒目の女の子で、発見されたのは過去2回、巫女はセイラの湖にいきなり現れたという話だけだ。」

「え?・・・黒い髪に黒い瞳?いきなり、あらわれる。呪いをとく力を持つ、巫女??」

たどたどしく、小さく、呟く様に繰り返す。アンジェリカの瞳は戸惑いに揺れ、唇は震えていた。

(あぁ、もしかして、いや、違うかもしれないわ。っでも、黒髪黒目の巫女って・・・)

「ヒロインじゃん、それ・・・」

力なく口から漏れたその呟きは、わたくしの中でゆっくりと確信に変わっていった。

(ヒロインが来るのはわたくしが学園に入学して1ヶ月たった頃。つまり、あと、約3年後。そして、お兄様は、もう、一年持つかどうか分からない・・・)

「全然、間に合わないじゃない。」

「アンジェリカ??」

お父様に名前を呼ばれた気がするが正直それどころでは無かった。どうすればいいのかも分からない。けど、他に何か方法があるかもしれない。諦めたら本当にお兄様を無くしてしまう。そんなのは嫌だ。

何か、何でも良い他に何か方法は、無いのか。・・・だって巫女なんて待ってられないのだから。

「お父様、他に、他に何か知ってる事はありませんの?」

わたくしの必死な顔を見たお父様は一度考える様に目を伏せそして、すまない、と一言だけこぼすように言った。
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