婚約者は醜女だと噂で聞いたことのある令嬢でしたが、俺にとっては絶世の美女でした

朝比奈

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ルーア・キャリル伯爵令嬢

世間から醜女と噂される私が恋に落ちたのは 第四話

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「は?  何だそれ」
「あ、さてはお前、信じてないな」
「いや、別にどうでもいい」
「お前、最近冷たいぞ!!」
「あ?」

ルーカスがもう一人の青年に睨みを聞かせる。  二股の件について、まだ話は終わっていないとばかりに、ルーカスはまた説教を始めようとした。

「そ、それだけじゃない!  何でも、見たものは悪夢にうなされ、その笑みは心臓を止めるとまで言われてるんだぞ!」
「それがどうした」
「気にならないのか?」
「ああ、今はそんな事よりも、お前のした過ちについて話がしたい」

ポキポキと指の骨を鳴らしながら、ルーカスは青年に歩み寄る。  ルーアはその間に扉から出て宛もなく歩いた。


ドクドクと心臓がうるさい。

もしかしたら、と思ってはいたがどうやら貴族界だけ出なく世間にも自分の噂は広まっていた。それも、名前つきで。

(最悪、だわ)

ルーアは無性に泣きたくなった。
けれど街中で泣くわけにはいかない。

カツカツと足を前へ前へと進める。

「待って下さいっ!」
「っ、!」

先程の雑貨屋にいた青年に腕を捕まれ呼び止められた。突然の事でビックリしたが、乱れた息を整えるように呼吸を繰り返す彼の手に、髪につけていた髪飾りが握られているのを見て納得した。

「これ、あなたのですよね?」
「あの、ありがとうございます」

わざわざこうして届けに来てくれたことにルーアは素直にお礼を言った。

「いや、別に・・・」

気にしなくていい。そう言って笑った彼に、また、既視感を感じた。なんだろう。何かを忘れている気がする。

「あの!  さっきの話なんですが、・・・」
「さっき?」
「醜女の令嬢の・・・」
「ああ、その話」
何故か咄嗟に口から出た。理由は分からない。けれど、どうしても誰かに聞いてみたかった。

「醜女でも、幸せになれますでしょうか?」
「・・・・・・。は?」

たっぷり間をとって、ルーカスは首を傾げる。

意味がわからないのだろう。当然だ。ルーアにだって分からなかった。

「よく、意味は分かりませんが、本人次第、では無いでしょうか」
「本人次第・・・」
「はは、すみません。 俺、気の利いた事とか言うの苦手で・・・」

「いえ」と、ルーアは小さく呟いた。

そして最後にまた一つ尋ねた。

「結婚するなら美人の方がいいですよね?」
「・・・。ええ、まあ」
「そう、ですか、はは、そう、ですよね・・・」

もしかしたら、彼なら・・・。
私を受け入れてくれるかもしれない。
ルーアはそう思ったが、それがあまりにも利己的だと思い、乾いた笑いを浮かべる。


「変な質問をしてしまって、ごめんなさいっ!  あと、髪飾りも、ありがとうございました」

ルーアはそう言って青年に頭を下げた。


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