忌み子王子とワガママ姫

朝比奈

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忌み子王子の後悔

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   突然の突風にシリウスは自身の前髪が浮き上がるのを感じながらも目を細め、手を止めた。

   その一瞬。

   太陽の光に当てられて輝く美しい少女と目が合う。

   幻のように感じられた時間は、次にシリウスが目を開けた時には失われていた。

   あれは──

「アナベル姫・・・?」

  誰もいない空間を見つめ静かに呟いた。

   暫くほおけた顔をしていたシリウスの顔が絶望に染まるのは、そのすぐ後の事だった。


─────────────────

   昨夜、よく眠れなかったからだろうか。
   シリウスはその日、珍しく寝坊してしまい、いつもより遅い時間に鍛練を始めた。

   しかし、昨日はいつも見ていた嫌な夢を見なかったため、シリウスの表情はいつもよりどこか軽かった。


   剣の鍛錬中、シリウスの頭の中を占めていたのは、昨日できた婚約者だった。

   自分には勿体ない程美しい婚約者。
   このまま結婚出来たら、どれだけ幸せだろうかと、シリウスは幸せな妄想に頬を緩ませる。

   普段、卑屈なシリウスにしては珍しく、楽しい事ばかりが頭に浮かんだ。


   と、その時だった。

「アナベル姫・・・?」

   一瞬だったが、確かにそこに、アナベル姫が見えた。

   偶然の出会い。

   最初は驚きだったが、朝からアナベル姫に会えた事に嬉しさが沸き起こる。

   しかし、今は見えないその姿にどうして隠れてしまったのかと、不安が押し寄せた。

   もしかしたら、見間違いだったのかもしれない・・・。


「きゃあっ!!」

「ひっ・・・シリウス殿下!!」

   若い少女が遠目に目が合ったシリウスを見て青ざめる。

   決して大きな声でもなく、距離はあったが、その声はハッキリとシリウスに聞こえた。

「・・・・・・」

    その瞬間、シリウスは何故アナベル姫が逃げ去ったのかを、自身の顔に手を当ててようやく思い至った。

   やってしまった・・・。

   決して見られてはいけなかったのに・・・。

   シリウスは青ざめた顔でその場にしゃがみこむ。その表情は、絶望に近い。

   つい、普段の癖で仮面をつけずに外へ出た事、そして、いつもと違う時間に外で鍛錬を行った事。

   自分の不用心さが憎らしい。

   しかし、どれだけ後悔してももう遅い。

   シリウスは悲鳴をあげた少女など気にもとめず、急いで自室へと駆け出した。



───────────────
少し短いですが、今日から本編再開です!
よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)
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感想 5

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みんなの感想(5件)

miya
2024.04.21 miya

また続きを読める日を楽しみに待っています!(⌒∇⌒)ノ"

解除
もふもふママ

一気読みしました!
とってもイイところで更新ストップされていて残念です!
ぜひ続きお願いします!

解除
しろたん
2021.02.12 しろたん

まってました!更新ありがとうございます(๑♡ᴗ♡๑)

朝比奈
2021.02.13 朝比奈

しろたん様

お待たせしてしまいすみませんでした!
後、楽しみにしていて下さる方がいると言うのが凄く励みになりました。ありがとうございます(*' ')*, ,)✨ペコリ
今週から、ちょくちょく上げていくので、お手隙の際にでも楽しんで頂けたら嬉しいです(●︎´▽︎`●︎)
よろしくお願いいたします!

解除

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