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第六話 慈善訪問
しおりを挟む「お時間ってそういうこと·····」
私は今、孤児院にいた。両手には大量のお菓子。目の前には無垢な子供たち。私が一人一人に目線を合わせてお菓子を手渡すと、皆それはそれは嬉しそうに「ありがとうございます、王女殿下!」と笑顔で受け取っていく。
以前の私なら絶対、自分が屈むなんてことしなかっただろう。
そう言えば、私はこの孤児院への事前訪問を月に一度くらいのペースで行っていた。といっても、城の料理人が作ったものを我が物顔で配っていただけの一時間もかからない行動だけれど。確か、お父様に媚びを売るために始めたような·····。
「···············」
そこまで考えて私は、死んだ魚のような目になった。今世の私って、なかなかに悪女じゃないかしら? まあ、今考えても仕方が無いわね。そう思い、王宮よりも顔の整っている人が多い子供たちを見つめた。
何だか前は思わなかったけれど、子供たちをみているとなかなかに癒される気がするわね。美人が数人まじっているからかしら。それに、デブが一人もいないし·····。
私は、自分がデブであることを一旦、頭の隅においやって考えた。
「王女殿下·····、あの、お菓子·····」
と、考え事に気を取られていて手が止まっていた。私は慌ててお菓子配りを再開した。
子供は全員で、50人ほどいた。というのも、街の子供たちも含めてだ。その中で孤児院の子供は20人ほど。
いつもはお菓子を配り終わったらすぐ帰るのだけれど、私は、何となくもう少しだけ子供たちを見て居たいと思い、お邪魔させていただくことにした。
どうやら以前の私のここでの猫かぶりは完璧だったらしい。特に嫌な顔もされずに、「勿論です」と喜ばれた。
私がもう少しここに居るのがわかった子供たちはワラワラと私の前に集まり始めた。
「王女殿下!あの、あっちで一緒にお花の冠·····」
「王女殿下!読み聞かせして下さい!」
「お歌聞きたい·····」
集まってきた数人の子供たちが「王女殿下!王女殿下!」と一斉に話しかける。私はその王女殿下と何度よ呼ばれるのが、少しだけ不快に思った。というか·····。
「一斉に話しかけられては聞こえないわ、ちゃんと聞いてあげるから1人ずつ喋りなさい。後、今この場ではわたくしのことはマリアと呼んでくれないかしら?」
私は堂々とそう言いきった。
私の言葉に、怒られたの勘違いした子もいたけれど、最後のマリアと呼んでくれないかしら?という言葉で皆がきょとんとした表情になった。
「マリア様·····?」
7歳くらいの子が私の名前を呼んだ。
それに続いて他の子もマリア様と呼ぶ。
そこで私は久しぶりに名前を呼んでもらえた気がした。自然と笑みがこぼれる。
「ええ、マリアよ。それで、話はなにかしら?」
私はその後、一時間ほど子供たちの遊びに付き合った。と言っても、お花の冠を作って、読み聞かせをしただけだ。
何故このふたつにしたのかは言うまでもなく、出来そうなのがこの2つだったのと、後は、誘ってきてくれた子が将来有望そうなイケメンと可愛い子だったから。
お花の冠なんて、貰ったことはあっても作った事なんて無かったし、読み聞かせだって、以前なにかのCMでやった時と変わらないのに、今日は凄く楽しかった。
たまにはこういう日も良いわね!
あとから思い出したことだけど、私はここに毎月ドレス一着分程の寄付金をおさめていた。だから、対応が丁寧だったってのもあったかもしれない。
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