上 下
7 / 10

第六話 慈善訪問

しおりを挟む

「お時間ってそういうこと·····」

   私は今、孤児院にいた。両手には大量のお菓子。目の前には無垢な子供たち。私が一人一人に目線を合わせてお菓子を手渡すと、皆それはそれは嬉しそうに「ありがとうございます、王女殿下!」と笑顔で受け取っていく。

   以前の私なら絶対、自分が屈むなんてことしなかっただろう。

   そう言えば、私はこの孤児院への事前訪問を月に一度くらいのペースで行っていた。といっても、城の料理人が作ったものを我が物顔で配っていただけの一時間もかからない行動だけれど。確か、お父様に媚びを売るために始めたような·····。

「···············」

   そこまで考えて私は、死んだ魚のような目になった。今世の私って、なかなかに悪女じゃないかしら?  まあ、今考えても仕方が無いわね。そう思い、王宮よりも顔の整っている人が多い子供たちを見つめた。

   何だか前は思わなかったけれど、子供たちをみているとなかなかに癒される気がするわね。美人が数人まじっているからかしら。それに、デブが一人もいないし·····。

   私は、自分がデブであることを一旦、頭の隅においやって考えた。

「王女殿下·····、あの、お菓子·····」

   と、考え事に気を取られていて手が止まっていた。私は慌ててお菓子配りを再開した。

   子供は全員で、50人ほどいた。というのも、街の子供たちも含めてだ。その中で孤児院の子供は20人ほど。

   いつもはお菓子を配り終わったらすぐ帰るのだけれど、私は、何となくもう少しだけ子供たちを見て居たいと思い、お邪魔させていただくことにした。

   どうやら以前の私のここでの猫かぶりは完璧だったらしい。特に嫌な顔もされずに、「勿論です」と喜ばれた。


   私がもう少しここに居るのがわかった子供たちはワラワラと私の前に集まり始めた。

「王女殿下!あの、あっちで一緒にお花の冠·····」
「王女殿下!読み聞かせして下さい!」
「お歌聞きたい·····」

   集まってきた数人の子供たちが「王女殿下!王女殿下!」と一斉に話しかける。私はその王女殿下と何度よ呼ばれるのが、少しだけ不快に思った。というか·····。

「一斉に話しかけられては聞こえないわ、ちゃんと聞いてあげるから1人ずつ喋りなさい。後、今この場ではわたくしのことはマリアと呼んでくれないかしら?」

   私は堂々とそう言いきった。
   私の言葉に、怒られたの勘違いした子もいたけれど、最後のマリアと呼んでくれないかしら?という言葉で皆がきょとんとした表情になった。

「マリア様·····?」

   7歳くらいの子が私の名前を呼んだ。
   それに続いて他の子もマリア様と呼ぶ。

   そこで私は久しぶりに名前を呼んでもらえた気がした。自然と笑みがこぼれる。

「ええ、マリアよ。それで、話はなにかしら?」

   私はその後、一時間ほど子供たちの遊びに付き合った。と言っても、お花の冠を作って、読み聞かせをしただけだ。

   何故このふたつにしたのかは言うまでもなく、出来そうなのがこの2つだったのと、後は、誘ってきてくれた子が将来有望そうなイケメンと可愛い子だったから。

   お花の冠なんて、貰ったことはあっても作った事なんて無かったし、読み聞かせだって、以前なにかのCMでやった時と変わらないのに、今日は凄く楽しかった。

   たまにはこういう日も良いわね!

   あとから思い出したことだけど、私はここに毎月ドレス一着分程の寄付金をおさめていた。だから、対応が丁寧だったってのもあったかもしれない。




 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける

朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。 お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン 絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。 「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」 「えっ!? ええぇぇえええ!!!」 この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。

私は女神じゃありません!!〜この世界の美的感覚はおかしい〜

朝比奈
恋愛
年齢=彼氏いない歴な平凡かつ地味顔な私はある日突然美的感覚がおかしい異世界にトリップしてしまったようでして・・・。 (この世界で私はめっちゃ美人ってどゆこと??) これは主人公が美的感覚が違う世界で醜い男(私にとってイケメン)に恋に落ちる物語。 所々、意味が違うのに使っちゃってる言葉とかあれば教えて下さると幸いです。 暇つぶしにでも呼んでくれると嬉しいです。 ※休載中 (4月5日前後から投稿再開予定です)

美醜逆転の世界に間違って召喚されてしまいました!

エトカ
恋愛
続きを書くことを断念した供養ネタ作品です。 間違えて召喚されてしまった倉見舞は、美醜逆転の世界で最強の醜男(イケメン)を救うことができるのか……。よろしくお願いします。

なんて最悪で最高な異世界!

sorato
恋愛
多々良 初音は、突然怪物だらけの異世界で目覚めた。 状況が理解出来ないまま逃げようとした初音は、とある男に保護されーー…。 ※テスト投稿用作品です。タグはネタバレ。

拝啓、前世の私。今世では美醜逆転世界で男装しながら王子様の護衛騎士をすることになりました

奈風 花
恋愛
双子の兄アイザックの変わりに、王子の学友·····護衛騎士をするように命じられた主人公アイーシャと、美醜逆転世界で絶世の醜男と比喩される、主人公からしたらめっちゃイケかわ王子とのドキドキワクワクな学園生活! に、する予定です。 要約しますと、 男前男装騎士×天使なイケかわ王子のすれ違いラブコメディーです。 注意:男性のみ美醜が逆転しております。 何でも許せる方。お暇なあなた! 宜しければ読んでくれると·····、ついでにお気に入りや感想などをくれると·····、めっちゃ飛び跳ねて喜びますので、どうぞよろしくお願いいたします┏○))ペコリ 作りながら投稿しているので、 投稿は不定期更新となります。 物語の変更があり次第、あらすじが変わる可能性も·····。 こんな初心者作者ですが、頑張って綴って行こうと思うので、皆様、お手柔らかによろしくお願いいたします┏○))ペコリ

美醜逆転の異世界で私は恋をする

抹茶入りココア
恋愛
気が付いたら私は森の中にいた。その森の中で頭に犬っぽい耳がある美青年と出会う。 私は美醜逆転していて女性の数が少ないという異世界に来てしまったみたいだ。 そこで出会う人達に大事にされながらその世界で私は恋をする。

何を言われようとこの方々と結婚致します!

おいも
恋愛
私は、ヴォルク帝国のハッシュベルト侯爵家の娘、フィオーレ・ハッシュベルトです。 ハッシュベルト侯爵家はヴォルク帝国でも大きな権力を持っていて、その現当主であるお父様にはとても可愛がられています。 そんな私にはある秘密があります。 それは、他人がかっこいいと言う男性がとても不細工に見え、醜いと言われる男性がとてもかっこよく見えるということです。 まあ、それもそのはず、私には日本という国で暮らしていた前世の記憶を持っています。 前世の美的感覚は、男性に限定して、現世とはまるで逆! もちろん、私には前世での美的感覚が受け継がれました……。 そんな私は、特に問題もなく16年生きてきたのですが、ある問題が発生しました。 16歳の誕生日会で、おばあさまから、「そろそろ結婚相手を見つけなさい。エアリアル様なんてどう?今度、お茶会を開催するときエアリアル様をお呼びするから、あなたも参加しなさい。」 え?おばあさま?エアリアル様ってこの帝国の第二王子ですよね。 そして、帝国一美しいと言われている男性ですよね? ……うん!お断りします! でもこのまんまじゃ、エアリアル様と結婚させられてしまいそうだし……よし! 自分で結婚相手を見つけることにしましょう!

転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!

ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
 異世界転生をするものの、物語の様に分かりやすい活躍もなく、のんびりとスローライフを楽しんでいた主人公・マレーゼ。しかしある日、転移魔法を失敗してしまい、見知らぬ土地へと飛ばされてしまう。  全く知らない土地に慌てる彼女だったが、そこはかつて転生後に生きていた時代から1000年も後の世界であり、さらには自身が生きていた頃の文明は既に滅んでいるということを知る。  そして、実は転移魔法だけではなく、1000年後の世界で『嫁』として召喚された事実が判明し、召喚した相手たちと婚姻関係を結ぶこととなる。  人懐っこく明るい蛇獣人に、かつての文明に入れ込む兎獣人、なかなか心を開いてくれない狐獣人、そして本物の狼のような狼獣人。この時代では『モテない』と言われているらしい四人組は、マレーゼからしたらとてつもない美形たちだった。  1000年前に戻れないことを諦めつつも、1000年後のこの時代で新たに生きることを決めるマレーゼ。  異世界転生&転移に巻き込まれたマレーゼが、1000年後の世界でスローライフを送ります! 【この作品は逆ハーレムものとなっております。最終的に一人に絞られるのではなく、四人同時に結ばれますのでご注意ください】 【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』『Pixiv』にも掲載しています】

処理中です...