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第1編 静寂
僕が彼女に出会うまで(後編)
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総合体育館。
1限目がなくなったという素晴らしい日に、何故か僕は呼び出された。港君には「ドンマイ」と言われたが、本当にそうだと思う。
中に入ると、同じような犠牲者たちがいた。大体十数人くらい。
……あれ?…ここにいる人たち、皆……
「……二桁だ……!」
もちろん危険度がである。そして、ということは……
「せったがやー!…やっぱりいた!」
「………先輩」
う……やはりいたか。彼女は江戸川真依。えーっと…僕の………先輩だ。
「ねぇ世田谷、今私を先輩って認めたく無かったんでしょ」
先輩は急にどす黒い声色で軽く睨み付けてきた。しまった……ヤバい。
「えっーと…」
「嘘はダメだよぉ嘘は、世田谷はもう高校生なんだから」
―江戸川真依 危険度 tenth 「devil」
能力名 「速読推理」
「……わかりました、先輩」
「ならよろしい」
先輩は満足そうに棒アイスを食べ始めた。いったい誰がこんな環境でおやつを食べようと思うのだろうか?
1分も経たない頃、
「暇だねぇ世田谷。何か話そうよ」
再び先輩に話し掛けられ、振り返ると、先輩は既に棒アイスを食べ終わり、こんどはあの有名なじゃがいものお菓子を食べていた。……しかも特大サイズだ。
「…さっきから何してるんですか?」
「え?……ご飯食べてる」
どう考えても、嘘ですよね?
その本音は、心の中にしまっておいた。
「ねぇ世田谷、これから何があると思う?」
「えー、何があるんでしょうね」
「私はねぇ、ここにいる人たちの情報を見るに、これから誰か来ると思うんだよねぇ。……そうだねぇ…多分、高危険度人物だろうね」
先輩の情報処理能力だけは信用できるので、まあ本当のことなんだろうなと思いながら適当に聞く。……あれ?今確か……
「……情報?…って、まさか先輩」
そう言うと、先輩は少しニヤけて言った。
「えっへっへー……ごめん、盗んじゃった」
えっへっへーじゃないよ!…と言いたいところだったけど、先輩も好きで盗んでいるのではない。
先輩の「速読推理」は、相手の脳内を読み取る能力で、自分で能力が規制できないので、その情報量はとてつもない量になるはずだ。もし僕が先輩のような能力を持っていたら……多分生きていくのでほぼ限界ギリギリだろう。
「あ!校長が来たよー」
いやいや、校長先生を呼び捨てしちゃダメだろ。先輩の心配はこれくらいにして、校長先生に目を向けた。
「おはようございます」
「「おはようございまーす」」
めんっどくさい。というか、こんだけの人数なら別に総合体育館じゃなくても良かった気がする。なんでわざわざこんなくそ遠い場所にしたんだろ……。
「じゃあ本題に入るが、本日皆を集めたのは、皆に紹介したい人がいるからである」
紹介…か。まずこのメンバーからして、高危険度人物であることは間違いないとして、
「彼女には、本校の特別留学生として、しばらく本校に滞在してもらおうと考えている。使用言語は公用語であるプラト語と彼女の母語であるロウザフィス語なので、なるべくどちらかで接するように」
『彼女』という三人称から女性、ロウザフィス語を話す事からロウザフィス帝国の人物であること、留学生として高校に来ることから、高校生かそれ前後だということは普通にわかる。
そしてこの4つの特徴が当てはまる人は……
「…ロギス=V=フォゼスタリアってことか」
先輩があやとりをしながら言った。……というか、人の話は聞けよ。
「それでは、挨拶してもらいます」
校長に手招きされて出てきたのは、小柄な美少女だった。
「ハジメマシテ。……ワタシハ、ロギス=V=フォゼスタリア、デス」
1限目がなくなったという素晴らしい日に、何故か僕は呼び出された。港君には「ドンマイ」と言われたが、本当にそうだと思う。
中に入ると、同じような犠牲者たちがいた。大体十数人くらい。
……あれ?…ここにいる人たち、皆……
「……二桁だ……!」
もちろん危険度がである。そして、ということは……
「せったがやー!…やっぱりいた!」
「………先輩」
う……やはりいたか。彼女は江戸川真依。えーっと…僕の………先輩だ。
「ねぇ世田谷、今私を先輩って認めたく無かったんでしょ」
先輩は急にどす黒い声色で軽く睨み付けてきた。しまった……ヤバい。
「えっーと…」
「嘘はダメだよぉ嘘は、世田谷はもう高校生なんだから」
―江戸川真依 危険度 tenth 「devil」
能力名 「速読推理」
「……わかりました、先輩」
「ならよろしい」
先輩は満足そうに棒アイスを食べ始めた。いったい誰がこんな環境でおやつを食べようと思うのだろうか?
1分も経たない頃、
「暇だねぇ世田谷。何か話そうよ」
再び先輩に話し掛けられ、振り返ると、先輩は既に棒アイスを食べ終わり、こんどはあの有名なじゃがいものお菓子を食べていた。……しかも特大サイズだ。
「…さっきから何してるんですか?」
「え?……ご飯食べてる」
どう考えても、嘘ですよね?
その本音は、心の中にしまっておいた。
「ねぇ世田谷、これから何があると思う?」
「えー、何があるんでしょうね」
「私はねぇ、ここにいる人たちの情報を見るに、これから誰か来ると思うんだよねぇ。……そうだねぇ…多分、高危険度人物だろうね」
先輩の情報処理能力だけは信用できるので、まあ本当のことなんだろうなと思いながら適当に聞く。……あれ?今確か……
「……情報?…って、まさか先輩」
そう言うと、先輩は少しニヤけて言った。
「えっへっへー……ごめん、盗んじゃった」
えっへっへーじゃないよ!…と言いたいところだったけど、先輩も好きで盗んでいるのではない。
先輩の「速読推理」は、相手の脳内を読み取る能力で、自分で能力が規制できないので、その情報量はとてつもない量になるはずだ。もし僕が先輩のような能力を持っていたら……多分生きていくのでほぼ限界ギリギリだろう。
「あ!校長が来たよー」
いやいや、校長先生を呼び捨てしちゃダメだろ。先輩の心配はこれくらいにして、校長先生に目を向けた。
「おはようございます」
「「おはようございまーす」」
めんっどくさい。というか、こんだけの人数なら別に総合体育館じゃなくても良かった気がする。なんでわざわざこんなくそ遠い場所にしたんだろ……。
「じゃあ本題に入るが、本日皆を集めたのは、皆に紹介したい人がいるからである」
紹介…か。まずこのメンバーからして、高危険度人物であることは間違いないとして、
「彼女には、本校の特別留学生として、しばらく本校に滞在してもらおうと考えている。使用言語は公用語であるプラト語と彼女の母語であるロウザフィス語なので、なるべくどちらかで接するように」
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そしてこの4つの特徴が当てはまる人は……
「…ロギス=V=フォゼスタリアってことか」
先輩があやとりをしながら言った。……というか、人の話は聞けよ。
「それでは、挨拶してもらいます」
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「ハジメマシテ。……ワタシハ、ロギス=V=フォゼスタリア、デス」
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