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第二章 紗栄子・高1 

33 蓮からのストレッチ

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 今日も大志の部活終わりを待ちながら、紗栄子は蓮にマッサージやストレッチを施している。
 今日は股関節のストレッチなどを行っていた。
「蓮、どんどん柔らかくなってきてるね。家でもやってる?」
「風呂上がりに少しね。」
 蓮は仰向けになって寝ていて、膝を曲げた右脚を外側に大きく開き、紗栄子がそれをゆっくり押している。
「紗栄子は自分でやんねーの?」
「あー…。多少はやるけどここまでは…。」
「たまには選手の気持ちも味わえよ。俺がやってやる。」
「え、ええっ!?」



 大志は部活を終えると、すぐにプールサイドに向かった。紗栄子と約束がある日の着替えは特に速い。
「失礼しまーす…。」
 今日も練習でかなり疲れて、それでも礼儀正しくプールサイドに入った。
「や、いたぁい…!」
 予想外の、紗栄子のもだえるような声が聞こえた。続いて、笑いを含んだ男の声がする。
「もっと足開くだろ。…力抜いて。」
「それは無理ぃ…。」
「力抜けって。」
 男の声が蓮なので、大志は不安と怒りがないまぜになった感情で声のする方へ急ぐ。
「あ、大志。」
「ん?ああ、工藤、お疲れさま。」
 蓮が仰向けに寝た紗栄子の脚を押さえて、股関節のストレッチをしている。部活のため、ストレッチの勉強のためとはいえ、蓮の下になって紗栄子が脚を大きく開いているのは、大志にとって愉快ではなかった。紗栄子が快楽によって喘ぐときは、もっと恥じらってかすれた声になると知ってはいても。
「2人ともお疲れさま。…ストレッチの勉強中?」
「うん。蓮にしてたのが一通り終わって、ついでにやってただけだから、もう帰れるよ。」
 紗栄子は“他の男に体を触らせた”などという意識もなく、ニコニコ笑っている。そんな風にされたら、大志は嫉妬めいた気持ちを抱いていることをオープンにすることも恥ずかしく、何も言えない。
 “他の男に触らせるな”とか。“紗栄子の体を気安く触るな”とか。
「マネージャーとはいえ、予想以上にかたかったな、体。」
「…すいませんでした。」
 素直に頭を下げる紗栄子の様子に、蓮が小さく笑う。その様子がますます大志の中のくすぶりをあおる。
「俺が消灯と施錠やっとくよ。ふたりともお疲れさま。」
「ありがとう、蓮。よろしくお願いします。お疲れさま。」
「お疲れさま…。」
 急いで着替えを終えた紗栄子がにこにこしながら更衣室から出てくると、大志がぐっと手を握った。紗栄子の耳に顔を寄せて低い声で囁く。
「今日、寄り道したい。」
 “寄り道”は、“どこかで隠れてキスしたい”の暗号のようなものだ。
 紗栄子は恥じらいつつも、小さく頷いた。
 ―――どんなに青山が水泳部で親しくしていても、紗栄子に触れたり、困ったように照れさせたりできるのは俺の方だ。
 寄り道に使ういつもの遊歩道。ベンチに紗栄子を座らせて、軽くキスをする。次はもう少し深くキスをしながら、スカート越しに紗栄子の脚の付け根に触った。さすがに紗栄子がびっくりした顔をする。
「どうしたの?」
「さっき、青山にここ伸ばされて痛いとか言ってたから。」
「うん、ちょっとね。ううん…だいぶ、かも。運動不足だよねえ。」
「俺と“する”時より大変だった?」
 紗栄子の顔が赤くなっているのが、表情から読み取れる。夜の暗さの中でも。
「そんなわけないでしょ。大志と…“する”、時の方が大変だよ。…そんな恥ずかしいこと言わせないで。」
「いつもだいぶ頑張ってくれてるもんな?」
 照れ隠しのためか、紗栄子が顔を隠すように大志に抱きつく。そんな紗栄子に容赦なく、顎をおさえて上を向かせる。
「可愛い、紗栄子…。」
 ———紗栄子は俺のものだ。キスも、それ以上のことも、できるのは俺だけだ。
「大志…。」
 なんだか大志の勢いがすごいなあと思いつつも、その原因が蓮とのストレッチなどとは思いもせず、紗栄子は少しの時間、大志からの甘いキスを受け続けた。
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